ハウス・オブ・ライズ (House of Lies)

放送局: ショウタイム

プレミア放送日: 1/8/2012 (Sun) 22:00-22:30

製作: レフュジー・プロダクションズ

製作総指揮: マシュウ・カーナハン、ドン・チードル、スティーヴン・ホプキンス

クリエイター/脚本: マシュウ・カーナハン

監督: スティーヴン・ホプキンス

出演: ドン・チードル (マーティ・カーン)、クリスティン・ベル (ジーニー・ヴァン・ダー・フーヴェン)、ベン・シュワーツ (クライド・オーバーホルト)、ジョシュ・ロウソン (ダグ・グッゲンハイム)、ドーン・オリヴィエリ (モニカ・タルボット)、ドニス・レナードJr. (ロスコー・カーン)、グリン・ターマン (ジェレマイア・カーン)


物語: マーティはコーポレート・コンサルタントとして、ジーニーを筆頭とする精鋭部隊と共に手練手管を弄して企業トップに取り入り、莫大なコンサルタント・フィーをせしめていた。マーティには同業者の別れた前妻のモニカがいたが、彼女は時間があるとマーティの元にやってきてドラッグとセックスを楽しむだけで、一人息子のロスコーは放任だ。そういう両親を見ていたロスコーは幼くしてクロス・ドレッサーになってしまい、学校のミュージカル製作「グリース」では、主人公のサンディを演じたがり、周囲を困惑させる。一方、次のビジネスの対立ライヴァルはモニカだと知ったマーティだが、いかんせん今回は勝算がなかった‥‥


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House of Lies


ハウス・オブ・ライズ   ★★1/2

近年、コメディではネットワークよりも注目に値する番組を次々に送り出しているショウタイムが新しく投入するダーク・コメディが、「ハウス・オブ・ライズ」だ。アメリカの1%の富裕階級層を相手に、口八丁手八丁で取り入り、コンサルタント・フィーと称して莫大な金をせしめる、しかしてその実態は本人たちすらよくわからない企業コンサルタントたちを描く。


主演のマーティに扮するのがドン・チードルで、これまでは持ち味の暖かみのある飄々とした味を生かした役柄が多かったが、今回はこれまでとはかなり印象の異なる役に挑戦している。


そもそもの番組冒頭ではマーティと前妻モニカが素っ裸でベッドの上で寝ているというシーンで幕を開ける。モニカとは別れているのだが、アルコールとドラッグとセックスを求めていまだにマーティの元に出入りしている。完全に育児権は放棄しているが、仕事はでき、実はマーティとはライヴァル関係にある同業者だ。


マーティとその一行はLAからNYに飛んで大手銀行にピッチするが、相手もさるもので、そう簡単に言い含められるタマではない。という切羽詰まった状態なのに、それでもマーティたちは夜はストリップ・クラブで羽目を外して朝帰り、翌朝のミーティングに同じスーツで出てくる始末だ。しかもストリッパーと一緒だったマーティは、朝のコーヒー・ショップでこれからジョギングのクライアントの一人と遭遇、その晩のディナーの約束を取りつけるが、酒を聞こし召し過ぎてレストランで大乱闘になってしまう。


さらに今回、銀行相手にピッチしたライヴァル業者はよりにもよってモニカたちで、しかもかなり好評で、どう見てもマーティたちには分が悪い。ここは一発大逆転を目論むしかなく、マーティはありとあらゆる伝手を用い、策を弄して最後の本番に挑む‥‥


という内容で、要するに、今NBCが力を入れているオフィス・コメディを、放送禁止コードのないペイTVで作ってみたらこうなったという感触が濃厚だ。NBCの「ジ・オフィス (The Office)」「パークス・アンド・レクリエーション (Parks and Recreation)」は、ヴィデオ・クルーがドキュメンタリーを撮っているという設定のために、登場人物が時々カメラに向かって喋ったり目線を送ったりする。「ハウス・オブ・ライズ」はそれとはちょっと違い、一種のギミックで周りの登場人物の動きを止め、マーティだけが特権的にカメラに向かって現況を説明する。その違いはあるが、しかしやはり登場人物がカメラに向かって語りかけると、いずれにしても印象に残る。


チードルは意外にこういう悪辣ビジネスマンにも無理なくはまっている。100%ワルという感じではなく、時にちょっとお情けをぽろっとこぼす、というようなキャラクターのせいもあるだろう。とはいえ、たった30分の番組の間に前妻、ストリッパー、息子の同級生の母親とHするなど、かなり下半身はしまりがない。これ以上やると「カリフォルニケイション (Californication)」になってしまうと危惧してしまうくらいだ。


プレミア・エピソードでは特に出番があったわけではないクリスティン・ベルが、今後大いに出番を増やして活躍すると予想されるが、彼女はランジェリー姿にはなっても脱ぐことはなさそうだ。「ヴェロニカ・マーズ (Veronica Mars)」のつっぱり背伸び女の子探偵が、大人になったなという感強し。


実はキャラクターとしては、一番印象に残ったのは主人公のマーティではなく、その息子ロスコーだったりする。父は黒人、母はモデルまがいの白人なのだが、こういう二人の間にできたロスコーは、まだロウ・ティーンの小デブなのに女装趣味のクロス・ドレッサーになってしまい、次の学校製作のミュージカル「グリース (Grease)」では、トラヴォルタが演じた男性主人公のダニーではなく、オリヴィア・ニュートン-ジョンが演じたサンディをやりたがって周囲に波紋を巻き起こす。


息子がそういう性向という設定は、コメディとはいえアメリカでもかなり特殊だと思うが、マーティはごく自然に状況を受け入れており、なんとか息子が主演をやれるようにと手を尽くす‥‥のだが、息子と主演を張っている相手の女の子の母親にそそられてしまい、結局できてしまう。それで息子には、サンディではなく、映画ではストッカード・チャニングが演じた悪役のベティがいいんじゃないかと勧め、それで息子以外を丸く収めて事態の収拾を図る。それでもダニー役を勧めるわけじゃないというのがなんともおかしい。


現在、ショウタイムはこれで上記の「カリフォルニケイション」に加え、「ナース・ジャッキー (Nurse Jackie)」、「マット・ルブランの元気か~い? ハリウッド! (Episodes)」「ザ・ビッグ・C (The Big C)」、「ウィーズ (Weeds)」等のコメディがネットワークに勝るとも劣らぬ布陣を敷いている。1時間ものだが、これに「シェイムレス (Shameless)」もコメディとして加えてもいいかもしれない。また、昨年の最も突出したドラマがネットワーク番組ではなく、ショウタイムの「ホームランド (Homeland)」だったということも、衆目の一致するところだ。まだまだショウタイムの快進撃は続く。









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