ザ・ブッチャー (The Butcher) 

放送局: ヒストリー

プレミア放送日: 5/22/2019 (Wed) 22:00-23:00  

製作: レイルスプリッター・ピクチャーズ 

製作総指揮: マット・ギンズバーグ、ティム・ヒーリー 

ホスト: コルビー・ドナルドソン

ジャッジ: デイヴィッド・バドワース、ロクサーヌ・スプルアンス、マイケル・サリヴァン 

 

内容: 動物の解体技術を競う勝ち抜きリアリティ。


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The Butcher


ザ・ブッチャー  ★★★

ヒストリー・チャンネルで人気があるのは今でも「アメリカン・ピッカーズ (American Pickers)」と「ポーン・スターズ (Pawn Stars)」がその筆頭だが、鍛冶職人の勝ち抜きリアリティ「フォージド・イン・ファイア (Forged in Fire)」も、かなり人気がある。これにあやかろうとして製作されたであろうと思われるのが、今度は肉屋、ブッチャーの技術を競う勝ち抜きリアリティの、「ザ・ブッチャー」だ。


肉屋は、人が生きていくためには必要な職業だが、その仕事が人々に与える印象は、洋の東西でかなり違うようだ。肉食文化圏の西洋では、ブッチャーは技術を持った職人として、わりと尊敬される対象に見える。一方、魚食文化圏の日本では、屠殺業、ブッチャーは、命を殺す穢れを扱う存在として、どちらかというと疎まれる存在だったという印象が強い。


いずれにしても、まだ生きている時の形を留めているウシやブタ、ヒツジを捌くという行為は、なかなか視覚的に強烈だ。スーパーで売っている切り身のビーフやポークを買ってきて調理する分には何も感じないが、生きて動いている時の姿を連想すると、今さらヴェジタリアンになる気はさらさらないが、やはり肉を食うという行為になにがしかの感懐を覚えずにはいられない。


さて「ブッチャー」は、そのブッチャーの肉を捌く技術を競う。毎回4人の参加者が登場し、一人ずつ脱落していき、エピソード毎に勝者を決めるという大枠の体裁だけを見ると、進行は「フォージド・イン・ファイア」と同じだ。


プレミア・エピソードでは、最初の試技でまず吊るされた丸々一頭のブタを捌く。両足を縛られて吊るされたブタの股の間にスプリッターと呼ばれる大型の斧のような刃物を振り下ろし、半身にする。吊るされたブタやウシだけを見ると特になんとも思わないが、それに刃物を振り下ろして内側の肉が見えてくると、途端にそれは生き物だったんだという事実が見えてきて、はっとする。「ロッキー (Rocky)」で、シルヴェスタ・スタローンが吊り下げられたウシをサンドバッグ代わりにしてパンチを繰り出していたのをむしろ格好いい絵として覚えていたものが、印象の修正を求められる。


このラウンドは力が必要で、紅一点の女性がやはり最も手間どっていた。一刀両断に斧を振り下ろせないので、時間がかかるだけでなく、切り口が綺麗にならず、見た目にもあまり美味しそうでない。


制限時間は60分で、半身になったブタを、そこからさらにショルダー、ベリー、ロイン、レッグ/ハムの4つの部位毎に切り分ける。切り落とした後、糸巻きにしなければならない部位もある。商品として流通させるレヴェルに達していることが条件で、あまり切り口が綺麗でなかったり、同じ部位なのに厚過ぎたり薄過ぎたりすると、却下される。最終的に商品になる切り分けた部位の数が最も少なかった者が、ここで一人落とされる。


最初に落ちたのは、キャリア30年という、最もヴェテランという印象のあった丸顔のいかにもという感じのおっさんで、言うことはでかかったが、腕が伴わなかった。厚みが一定でない部位を却下されまくり、大差の最下位でまず一人脱落。


次のラウンドは重さ6オンス (約170 g) のビーフの切り身を目分量で切り分けるというもの。ここでのポイントは、切り身が重過ぎた場合、そこから少しずつ肉を削ぎ落としていけばいいが、軽過ぎた場合、そこでアウトで、また一からやり直さなければならない。最も時間がかかった者が落とされる。


ここで落ちたのは、まだ若く、キャリアもそんなに長くない、自分でブッチャー技術を勉強したという男性。特に彼は第1ラウンドの糸巻き肉がとても綺麗にできていたので最後まで残ると思っていたのだが、完璧志向の彼は最初から完全な6オンスの肉を切り分けようとして、軽過ぎてやり直さざるを得なかったりして時間を食い、結局落ちた。


最後まで残ったのは、意外にもまだ若い女性と、元軍の施設で働いていたという中年男性の二人。そして最後の課題は、なんとアリゲイターを一匹捌くというもの。アメリカ南部では珍味としてアリゲイターを供する場所もあるが、食べたことのある者はそんなにはいないだろう。私もない。捌いたことのある者というと、さらに絞られるだろう。コンテスタントの二人は、さすがに二人とも初めての経験と言いながらも、結構手際よく捌いているように見えた。その捌いた肉を売るものと仮定して値段をつけ、最終的に高い値段がついた者の勝ちだ。そして勝ったのは男性のブッチャーで、結構エモーショナルになっていた。


番組第2回では、ウシを捌き、ベーコンを目分量で量り、そして最終ラウンドではパイソン、ヌートリア、イグアナの3種の外来動物種を捌く。この3種はどれも中南米に棲息していたのが、毛皮目的やペットとして飼っていたものが放されて繁殖した害獣なのだそうだ。いずれにしても3mはありそうなパイソンの皮を剥ぐのを見るのは、あまり気持ちのいいものではない。


なんつーか、肉を食うっていうのは、やはり生き物を殺すことに他ならないのだなと思わせられる。番組の最後には、撮影に使用された肉はどこそこに寄付され、いたずらに肉を捨ててはいないという趣旨のテロップが入るのが、少しは救いか。











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