Star Wars: The Force Awakens


スター・ウォーズ/フォースの覚醒  (2016年1月)

「スター・ウォーズ」シリーズは、一時、三部作 x 3の都合全9作から成るサーガとされていたが、クリエイターのジョージ・ルーカスが第二次三部作の最終第3話 (時間軸上では9部作の第3話) 発表後、シリーズはこれで終わりとしたため、結局6部作で終わりとなるかと思われた。


しかしこんな金のなる木をアメリカのステュディオがほっておくわけもなく、ディズニーがルーカスの所有するルーカス・フィルムを吸収し、たぶん、これで本当に最後の最後? の三部作が製作されることになった。その最初の第1話が、今回の「フォースの覚醒」だ。


今回はルーカスはほとんど前面に出ず、というか後ろにすら控えず、ほぼ全部をJ. J. エイブラムスに任せてしまっている。元々「スター・ウォーズ」は第一次三部作の時から、全部ルーカスが演出していたわけではない。第一次でルーカスが自分で演出したのは第1話 (9部作の第4話) のみで、第2話の「帝国の逆襲 (Empire Strikes Bac)」はアーヴィン・カーシュナーが、第3話「ジェダイの復讐 (Return of the Jedi)」はリチャード・マーカンドが監督している。


それが第二次三部作は、なぜだか全部自分自身で演出した。たぶん、これで終わらせるつもりがあったんじゃないかと思う。あるいは単に契約上の問題か。事実、話が一つの大きな連環となって終わる最後の「シスの復讐 (Revenge of the Sith)」は、これですべては繫がり、物語は終結を迎えたという印象が濃厚だった。ルーカスはこれで力を出し尽くしたんじゃないかと思う。もう思い残すことはない。


ルーカス自身としてはそうだったかもしれないが、結局ディズニーが後を引き取って続きを製作することになった。既に最初の三部作でルーカス以外の者が演出を担当していることなどもあり、ルーカスは自分以外の者によって「スター・ウォーズ」が展開していくことにあまり抵抗はなかったようだ。しかも今回はルーカスのクレジットは、単にクリエイティヴ・コンサルタントというほとんど名目上のものに過ぎなさそうなものだ。本当に、「スター・ウォーズ」から手を引いたんだろう。潔いというかなんというか。世界最大のシリーズなのに。


「スター・ウォーズ」が規模として世界最大のシリーズであることに疑義を挟む者はいないと思うが、私自身は特に思い入れがあるわけではない。SFとしての「スター・ウォーズ」は確かに面白いと思うが、しかしアクション・シーン以外の「スター・ウォーズ」は、正直言って超できがいいとは思わない。事実「ファントム・メナス (The Phantom Menace)」の時は寝ちゃったくらいだし、おかげで「クローンの攻撃 (Attack of the Clones)」もパスして後でTVで見た。思い入れたっぷりの「シスの復讐」は、なるほど、これがやりたかったんだなと納得も感心もしたが、やはりファンというほどではない。


というわけで、ここでルーカスからバトンをエイブラムスに完全譲渡したのは、ビジネス的にはかなりよかったんじゃないだろうか。なんといっても新しい息吹きを持ち込めるし、私のような、次ができてもたぶんもう見ないだろうなと思っていた人間を再度劇場に呼び戻せる。


そして正直に言ってしまうと、「フォースの覚醒」は、ルーカス版「スター・ウォーズ」より面白かったんじゃないか。さすがエイブラムス、勘どころを心得ているという感じで、緩急自在で飽きさせない。オリジナルの轍を踏んで、今時トランジションにワイプを使うなんてのをわざわざやっているなど、ファンとして敬意を払うのも忘れない。筋金入りのファンは認めないという者も結構いるようだが、「アバター (Avatar)」の記録を抜いて世界歴代1位の座を奪うのも目前という興行成績が、人の心をつかんだことを証明している。


「スター・ウォーズ」は、実際、話としては第一次三部作の最後、スカイウォーカーがダース・ヴェイダーを倒した時点で完結している。そこにルーカス自身がそもそもの発端を付け加えることにより、大団円を迎え、そこで話は閉じてしまったという印象が強い。そこから話をまたどう持っていくかは頭を悩ませるところで、思い入れのあり過ぎるルーカスの方が、逆に固まって身動きがとれなくなってしまいそうだ。


それをエイブラムスは、ちゃんとそこからストーリーを繋げた上で、さらに新しい展開を持ち込み、できのいいエンタテインメントを再創出して見せた。ハン・ソロもレイア姫もチューバッカもC-3POもR2D2もちゃんとストーリーの破綻なく顔を見せ、幕を引き、新しいキャラクターが登場し、次へと続いていく。スカイウォーカーもちゃんといる。ダース・ヴェイダーの代わりとなるカイロ・レンは、なるほどこういう出自でこういう内面を抱えていたのか、と、細部まで目配せ行き届いていて感心することしきりなのだった。


たぶん、もう「スター・ウォーズ」は、ルーカス一人のものではなく、アメリカ人、あるいは全人類のものになっているんだと思う。こうなると、やっぱり次も見ないとなという気にさせる。











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ダース・ヴェイダーがルーク・スカイウォーカー (マーク・ハミル) に倒され、30年が経過した。父を倒したスカイウォーカーはその後消息を絶ち、ジェダイたちもいなくなる。その後カイロ・レン (アダム・ドライヴァー) はダース・ヴェイダーの後を継いでファースト・オーダーの指揮官となり、力を強めていた。ストームトゥルーパーの一人、フィン (ジョン・ボイエガ) はしかしそんなファースト・オーダーのやり方についていけないものを感じており、ある時、捕虜になっていた反乱軍のポー (オスカー・アイザック) を連れて脱走する。一方、レイ (レイジー・リドリー) は廃棄された宇宙船や廃墟から利用できそうなものを回収して売り捌いて生計を立てていたが、ポーとはぐれたフィンと遭遇、一緒にファースト・オーダーから逃げる羽目になる。二人は捨てられて過去の遺物化した宇宙船で脱出を図るが、その宇宙船こそ、かつての宇宙海賊ハン・ソロ (ハリソン・フォード) の船だった‥‥


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