ロザンヌ (Roseanne) 

放送局: ABC 

プレミア放送日: 10/18/1988 (Tue)  

第10シーズン・プレミア放送日: 3/27/2018 (Tue) 20:00-20:30  

製作: カーシー・ワーナー・カンパニー、ウィンド・ダンサー・プロダクションズ 

製作総指揮: ロザンヌ・バー、マット・ウィリアムズ 

出演: ロザンヌ・バー (ロザンヌ・コナー)、ジョン・グッドマン (ダン・コナー)、ローリー・メトカーフ (ジャッキー・ハリス)、サラ・ギルバート (ダーリーン・コナー-ヒーリー)、マイケル・フィッシュマン (D. J. コナー)、アリシア・ゴランソン (ベッキー・コナー)、サラ・チョーキ (アンドレア/ベッキー・コナー)、エマ・キニー (ハリス・コナー-ヒーリー)、エイムズ・マクナマラ (マーク・コナー-ヒーリー)、ジョニー・ガレッキ (デイヴィッド・ヒーリー) 

 

物語: 夫のデイヴィッドと別居中のダーリーンが、娘のハリス、息子のマークを連れてコナー家に出戻ってくる。ダーリーンは実は失業中で、ハリスは思春期で扱いにくく、マークはトランスの気があった。夫を失ったベッキーはレストランでウエイトとして働いており、代理母として収入を得ようとしていた。軍人のD.J.は海外生活中で、黒人の血が入った娘のメアリもまたコナー家に預けられていた。ジャッキーは相も変わらずコナー家に顔を出し、そんなこんなで今では楽な引退生活のはずのロザンヌとダンの家は、やはり以前同様毎日が騒がしい‥‥ 


_______________________________________________________________

Roseanne


ロザンヌ  ★★1/2

20年振りに復活した「ロザンヌ」の記録的な視聴率は、近年これといったヒット番組のない米ネットワークにおいて、一つの事件だった。近年、かつての人気番組のリメイク花盛りだが、特にシットコムの場合、昨年のNBCの「ウィル&グレイス (Will & Grace)」のように、オリジナル・キャストをそのまま再起用した、リメイクというよりも長い間を置いた新シーズンであったりする。そうやって「ウィル&グレイス」が編成され、そこそこの視聴者を獲得したことは記憶に新しいが、同様にオリジナル・キャストで製作された「ロザンヌ」は、それを軽々と上回る成績を獲得した。 

 

「ロザンヌ」は、1988年から1997年までABCで放送されたシットコムで、アメリカ中部イリノイ州の典型的な保守ワーキング・クラスであるコナー家を描く。番組クリエイター兼主演のロザンヌ・バーもがちがちの共和党支持者で、リベラルが多いマスコミ関連において、珍しい部類に入る。だからこそ、そういうノリが逆に大きな支持を受けているとも言える。 

 

番組として面白いのが、コナー家の長女ベッキーを二人の女優が演じていることがある。オリジナル・キャストのアリシア・ゴランソンは、途中で進学のために番組を降板、製作者はベッキーをいなくなったことにするのではなく、第6シーズンからサラ・チョーキがベッキーとして登場した。さらに事態を複雑にしたのは、ゴランソンが学業の途中に再度ベッキーとして復活登場したことで、第8シーズンは一シーズン内でゴランソンとチョーキが共に異なるエピソードでベッキーを演じている。しかしやっぱり兼業は無理だったということでゴランソンはまたまたリタイア、第9シーズンはチョーキ一人がベッキーとなった。長く続いた番組で途中から同一キャラクターを別人が演じているという例は他にもあるが、これだけこんぐらがっているのは珍しい。二人の顔や印象が似ていることも、混乱に拍車をかけた。 

 

今回のベッキーはゴランソンが演じているが、実はチョーキも出ている。とはいえチョーキは別キャラクターで、金策に困って代理母として金を得ようとしているベッキーのコンサルタント的人物として登場する。チョーキに対する感謝の気持ちを表したというところだろうか。 

 

今回の番組再開始に先立ってバーは、NBCの深夜トーク「ザ・トゥナイト・ショウ (The Tonight Show)」にゲストとして出て、ホストのジミー・ファロンからトランプ支持のことを突っ込まれ、「だったらペンスが大統領でいいのか、もし嫌なら黙ってろ」とやり返していた。実は副大統領のマイク・ペンスは筋金入りの保守派で、まだ政策としては柔軟なところを見せるトランプより強固な右派で、彼が大統領になったらトランプより怖ろしい事態が出来すると考える者は多い。 

 

それはともかく、そういう保守的なものの考え方はアメリカ中南部では今でもまだ一般的で、都市部では現在では市民権を得ているLGBTQやマイノリティ、妊娠中絶などに対して、ことごとく対立する。「ロザンヌ」は地方のそういう意識を提出したからこそ、今回のリメイクでも大きな共感を得た。 

 

むろん中南部では人々は保守的とはいえ、そこにだってLGBTQの人々はいるし、黒人もラテン系もいる。その点は無視するわけにはいかず、コナー家だってやはり無関係ではいられない。コナー家の長男D.J.の娘メアリは半分黒人の血が入っているし、次女ダーリーンの長男マークはプリ・ティーンにして既にトランスの気があり、どうしてもスカートを履いて化粧したくてたまらない。ロザンヌとダンは自分たちの気持ちに関係なく、事実としてそれを受け入れざるを得ない。これをどう料理して笑いに結びつけるかが作り手の腕の見せ所と言え、このさじ加減がうまくいったからこそ、今回の番組の成功があった。 

 

ところが、近年にないリメイク成功作として注目された「ロザンヌ」が、敢えなく瓦解する。なんとなればバーが、元オバマ大統領側近のヴァレリー・ジャレットに対し、「ムスリム&『猿の惑星』が生んだ子供」とツイートしてしまったのだ。さすがにこれは看過できない人種差別であり、今シーズン最大のヒットだった「ロザンヌ」は、間髪を入れずキャンセルされた。慌てたバーは、あれは睡眠薬のアンビエンを飲んでツイートしてしまったからと釈明したが、アンビエン側は、我々の薬には人種差別の副作用はないとツイートを返すなど、トランプ大統領のツイートに勝るとも劣らない泥沼失態が繰り広げられた。 

 

私も結構番組は面白いと思っていただけに、本音丸出しのバーのツイートには本気でがっかりさせられた。番組仲間からも、ダーリーンを演じているサラ・ギルバートやD. J. 役のマイケル・フィッシュマンがバーを非難する意見を表明、バーは、仲間なのにサポートしてくれないのかと逆ギレしていた。しかし、自身ゲイであることをカミングアウト済みのギルバートは、バーのツイートを見過ごすわけには行かなかったろう。共演者で最も重要な夫のダン役のジョン・グッドマンは、コメントを求められて、ツイッターは読まないから、と、お茶を濁すというか大人の対応をしていた。正直、どの共演者もバーのバカモノと思っていたに違いない。 


また、特にギルバートの場合、彼女はCBSの日中トーク・ショウ「ザ・トーク (The Talk)」のレギュラー・ホストでもある。基本的に兼業が難しいのは、既にゴランソンが証明済みだ。ついでに言うとハリス役のエマ・ケニーも、現在ショウタイムの「シェイムレス (Shameless)」にレギュラー出演中で、こちらは基本的に毎日放送のトーク・ショウほど忙しいわけではないだろうとはいえ、大変には違いない。


こういう出演者のやりくりを調整してやっと製作が実現した番組を、たった一人の心ないツイートがぶち壊す。元々「ロザンヌ」はバーが主演でクリエイターでもある最重要人物ではあるが、しかし、なんだかなあ。











< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system