The Talk (ザ・トーク)

放送局: CBS

プレミア放送日: 10/18/2010 (Mon) 14:00-15:00

製作: CBS

製作総指揮: ジョン・レッドマン

ホスト: ジュリー・チェン、サラ・ギルバート、シャロン・オズボーン、ホリー・ロビンソン・ピート、リア・レミニ


The Early Show (ジ・アーリー・ショウ)

放送局:  CBS

プレミア放送日: 11/2/1999 (Tue)

クリス・ラギー、エリカ・ヒルのファースト・エピソード放送日: 1/3/2011 (Mon) 7:00-9:00

製作: CBS

ホスト: クリス・ラギー、エリカ・ヒル、ジェフ・グロア、マリソル・カストロ (ウェザー)


CBSの日中トーク/ヴァラエティ・ショウ2種。


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はっきり言ってCBSの朝のトーク/ヴァラエティ・ショウ「ジ・アーリー・ショウ」は、影が薄い。アメリカの朝は、NBCの「トゥデイ (Today)」とABCの「グッド・モーニング・アメリカ (Good Morning America:GMA)」が人気を二分しており、「アーリー・ショウ」は、その足元にも及ばないという感じだ。


3番組を見較べてみると、特にどれかがずば抜けてよいとも悪いとも感じないが、基本的に朝の番組はほとんどの視聴者は同じ番組を何年何十年と見続けているため、簡単にはその生活習慣は変わらない。とはいえ、半世紀以上の歴史を持つ「トゥデイ」、4半世紀以上の「GMA」に較べて「アーリー・ショウ」の歴史が特に浅いかというと、そうでもない。


「アーリー・ショウ」という番組名で始まった時こそ1999年であるが、ほぼ同様の朝のトーク/ヴァラエティ前身番組「ザ・モーニング・ショウ (The Morning Show)」は、「トゥデイ」同様1950年代に始まっている。それから「ザ・モーニング・ニューズ (The Morning News)」、「ザ・モーニング・プログラム (The Morning Program)」、「ディス・モーニング (This Morning)」等のいわゆる「モーニング」時代を変遷して、今の「アーリー・ショウ」になったのが1999年というに過ぎない。


それがなぜCBSがNBCとABCにこうも大きく差をつけられているのか、よくわからない。たぶんCBS幹部も、NBCもABCですらよくわからないんじゃないかと思う。かつての「トゥデイ」のケイティ・コーリック、「GMA」のダイアン・ソウヤー/チャーリー・ギブソンみたいな、名物ホストを擁し損ねたというのはあるかもしれないが、そのソウヤーや、現「トゥデイ」ホストのメレディス・ヴィエイラが「モーニング」にいた時代もあったのだ。一概にホストのせいばかりでもないだろう。


かといって質が他の番組に劣るかというと、その質もなかなか定評がある。なんせCBSこそウォルター・クロンカイトやダン・ラザーという名物アンカーを世に送り出したネットワークなのだ。報道の質が悪いわけがない。それなのになぜだか朝は視聴者がつかない。「モーニング」-「アーリー・ショウ」と続くCBSの朝は、半世紀もの間ずっとライヴァル局の後塵を拝し続けてきた、呪われた時間帯なのだ。


そういう負の連鎖を断ち切るために、CBSは過去と訣別して1999年に番組を「アーリー・ショウ」と改名し、元「トゥデイ」のブライアント・ガンベルをホストに招き、心機一転して大々的に新フォーマットで再出発を図った。そしてこれも不発に終わった。


私見ではガンベルが去った後、ジュリー・チェン、ハナ・ストーム、ルネ・スタイラーという女性上位で明らかに女性視聴者層をターゲットにしていた2000年代中盤が、最も番組の色が出てわかりやすかったと思うが、それも特に視聴者をつかまえるには至らなかった。どうしても、何をやってもうまくいかないCBSの真空地帯がこの時間帯なのだ。高齢者ご用達チャンネルと陰口を叩かれようともプライムタイムでは視聴率1位の座を譲らないCBSが、朝はからきし他のネットワークに歯が立たない。番組のできが特に悪いとも思えないのに。ネットワーク七不思議の一つである。


そして昨夏、長らく「アーリー・ショウ」ホストを担当してきたチェンが降板し、秋から始まる日中のトーク・ショウ「ザ・トーク」ホストに就くという発表があった。そしてたぶん、ついでに「アーリー・ショウ」も梃入れしようということになったんだろう、年末にいきなり、「アーリー・ショウ」は新年度からクリス・ラギー、エリカ・ヒルのホストで始めるという発表があった。


視聴者にとっては寝耳に水だったが、実は関係者にとってもそうだったようで、その時の「アーリー・ショウ」はハリー・スミスとマギー・・ロドリゲス、エリカ・ヒルに天気がデイヴ・プライスというのがレギュラーだったのだが、彼らもいきなり進退を問われたらしい。ほとんどなんの声明も発表もなく、いきなり最後の回を迎え、その後でプライスがツイッターで事後報告したと聞いた。ロドリゲスは直前に出産しており、産休明けでそろそろ復帰かと思われた頃、そのまま消えた。


スミスはかつてのGMAにいた頃のギブソンを思わせる、安定した男性ホストだったが、彼もいなくなった。CBSは、こちらも視聴率で苦しんでいる「イヴニング・ニューズ (Evening News)」アンカーのコーリックが契約更改の時期を迎えており、もしコーリックが降板を表明した場合、スミスの身体を空けておく必要があったために「アーリー・ショウ」からいなくなったという説もある。


結局コーリックはCBSに残留、浮いた形のスミスはこないだ、危険でほとんどの外人ジャーナリストが去ったエジプトに残って、ムバラク政権崩壊後の現地の模様を中継していた。これまた実はギブソン同様、外見は柔らかそうだが中身は硬派の筋金入りジャーナリストのようで、「アーリー・ショウ」が崩壊してもCBSはスミスを手放したくはないようだ。


さて、その新生「アーリー・ショウ」、新ホストのラギーとヒルはそれまでも何度も番組を担当しており、初顔見世というわけではない。がしかし、それでもラギーというのはわりと意外だった。ラギーはCBSのニューヨークのローカルのニューズ・アンカーでもあり、彼とクリスティン・ジョンソンがアンカーを務める夕-夜のニューズは、ニューヨークの4大ネットワークで最も若いアンカーだ。ラギーはいつもオール・バック気味になでつけた柔らかそうな髪に隙のないスーツ姿で、一見して見るからにしゃれ者。ジョンソンはたぶん全米のニューズ・アンカーでも1、2を争うと言っても過言ではない美形だ。


CBSのニューズは若い視聴者を取り込むために積極的に若い人材を起用しており、ネットワークで今、アンカーが最も若い。ラギーはその中核を占めると言ってもいい位置にいたはずだが、その彼をわざわざ外して朝に持ってくる。本人の希望かCBSの意向かはわからないが、かなり思い切った起用と言える。果たして今度こそCBSの起死回生の改革となるか。それともCBSの朝の呪いはまだ続くのか。


一方の番組を去ったチェンが共同ホストを担当する日中トーク「ザ・トーク」は、もう、完全にABCの「ザ・ヴュウ (The View)」のパクリだ。複数の女性ホストによる、女性による女性のための番組 (むろん少数だが男性も当然見ている) で、意外とこれが需要があったようで、既に放送が始まって10年以上経つ中堅どころの番組に成長している。「トーク」はこれを真似たものだ。


「ヴュウ」は基本的に常に4-5人いるホストが半円形のデスクの周りに座り、ああでもこうでもないと喧々囂々の意見、というか姦しいおしゃべりをかますというのが基本スタイルで、その時、バックにスクリーンが出て話題にしている映像も見せる。カウチに移動もするが、しかし基本的に全員だいたいいつも座っている。


しかし「トーク」は、基本こそ「ヴュウ」の物真似だが、番組進行はもっと動きがあって動的だ。 皆落ち着きがなく躁状態なだけというのが正解かもしれないが、わりとホストたちがセットの中を動き回っているという印象がある。 デスクがないわけではないが、ゲストを迎えると、背の低いコーヒー・テーブルを取り囲んだカウチに移動して、雑談という感じで話が進む。TVを前にした別のセッティングもある。


そのホストはチェンを筆頭に、サラ・ギルバート、シャロン・オズボーン、ホリー・ロビンソン・ピート、リア・レミニの5人がレギュラーのホストを務める。ギルバートはかつてのABCの人気シットコム「ローザンヌ (Roseanne)」出身。オズボーンはもちろん「ジ・オズボーンズ (The Osbournes)」のオジーの妻だ。ピートは私は知らなかったがやはり女優で、自閉の子を育てた経験を綴った著書もある。レミニはCBSのシットコム「ザ・キング・オブ・クイーンズ (The King of Queens)」で、今を時めくコメディ俳優ケヴィン・ジェイムズの妻キャリーを演じた。インタヴュアー的存在のマリッサ・ジャレット・ウィノカーもレギュラーだ。


番組第1回のゲストはモデルのクリスティ・ブリンクリーで、それはいいとして、力が抜けたのが第1回のテーマ、「子供にセックスの話をするのはいくつの時がいいか」だ。それでほぼ1時間持たせる。なんというか、そんなの、家庭環境や子供のものの考え方、あるいは親の教育の仕方によるだろう。つまり人それぞれと言うしかない。もし私が問われたならば、それは子供がセックスについて質問してきた時、と答える。だいたいどの家もそんなもんか、あるいは子供に性教育なぞしたことないというのが、アメリカでも大多数を占めると思う。


子供にとってセックスとは、友人知人、あるいはその手の雑誌、もしくは試行錯誤を通じて実地で学ぶもので、親から教えてもらうものではない。まあ時代は変わってきて、そんな悠長なこと言ってられる時代ではなくなってきているのかもしれないが、それでもやっぱり、1時間まともにこの番組につき合う気がしない。そんな話題、勝手にしてくれとしか思えない。


ただし、番組途中でホストの近親者による激励のヴィデオ・メッセージが紹介されたのだが、その中でチェンに対する旦那のレス・ムーンヴェスのコメントは受けた。周知のようにムーンヴェスは、CBSのCEOだ。つまりチェンにとってムーンヴェスは夫というだけでなく、職場でのボスに当たる。口さがないやつはチェンの今回のホストの抜擢を、コネによるものだという陰口を当然言う。それでムーンヴェスはそれらを承知の上で、もし成績が悪かったら、番組はキャンセルだと釘を刺していた。そこんところはさすがに笑った。


番組第2回はテイラー・スウィフトの話題に多くの時間を割き、ゲストはFOXの「アメリカン・アイドル (American Idol)」の新ホストに決まったジェニファー・ロペス。番組第3回ゲストは、「バチェラー (Bachelor)」コンテスタントから人気が出て「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ (Dancing with the Stars)」出演というABCのセレブリティ養成軌道に乗ったメリッサ・ライクロフト。さすがに可愛くて愛嬌があって、人気があるのも頷ける。


「トーク」放送は午後2時だ。この2時台というのは、3大ネットワークはこれまではソープを編成していた。CBSもそれまでは50年以上に渡って続いた長寿ソープ「アズ・ザ・ワールド・ターンズ (As the World Turns)」を編成していた。それをキャンセルして新しく投入されたのが、「トーク」だ。


しかもこれまでのところを見る限り、CBSの目論みは当たって、「トーク」は「アズ・ザ・ワールド・ターンズ」を上回る視聴率を収めている。午前11時放送の「ヴュウ」との住み分けもちゃんとうまく行ったようだ。どうやら「トーク」はすぐキャンセルされるという結果にはならなくて済みそうだ。








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The Talk          

ザ・トーク   ★★

The Early Show          

ジ・アーリー・ショウ   ★★1/2

 
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