ウィル&グレイス   Will & Grace  

放送局: NBC 

オリジナル・プレミア放送日: 9/21/1998 (Mon)  

最終回: 5/18/2006 (Thu) 

新ヴァージョン・プレミア放送日: 9/28/2017 (Thu) 21:00-21:30 

製作: コーマット・エンタテインメント、3プリンセスズ・アンド・ア・P 

製作総指揮: マックス・マチニック、デイヴィッド・コーハン 

出演: エリック・マコーマック (ウィル・トゥルーマン)、デブラ・メッシング (グレイス・アドラー)、ショーン・ヘイズ (ジャック・マクファーランド)、ミーガン・ムラリー (カレン・ウォーカー) 

 

物語: 共に離婚を経験してまたシングルに戻ったウィルとグレイス、それにカレンとジャックを加えた4人の生活がまた始まった。民主党でドナルド・トランプを毛嫌いしているインテリア・デザイナーのグレイスに、ホワイトハウスの大統領執務室をリノヴェイトしてくれという話がメラニア大統領夫人から舞い込み、カレンはそれを受けてしまう‥‥ 


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Will & Grace


ウィル&グレイス  ★★1/2

オリジナルの「ウィル&グレイス」が放送されていた2000年前後は、NBCが絶大なる人気を博していた木曜夜の番組群「マスト・シー・TV (Must See TV)」の後期に当たる。1990年代末のNBCの木曜夜のラインナップは、8時「フレンズ (Friends)」、9時「サインフェルド (Seinfeld)」、10時「E.R.」と続く、年間視聴率1位、2位、3位を占める不動のラインナップだった。 

 

「ウィル&グレイス」は、1998年に当初月曜枠で始まり、木曜に移行してきたのは、マスト・シー・TVの一角を占めた「サインフェルド」が、人気がありながら潔く最終回を迎えた後のことだ。「ウィル&グレイス」は「サインフェルド」がいなくなった9時枠で結構頑張っていたという印象があるが、いかんせんその頃は既にマスト・シー・TVも斜陽で、結局「ウィル&グレイス」も2006年には最終回を迎える。 

 

「ウィル&グレイス」が画期的だったのは、当時まだほとんど例のなかった、ゲイのキャラクターが主人公の一人だったことにある。エレン・デジェネレスが自分の名を冠したシットコム「エレン (Ellen)」の番組内においてカミングアウトして大きな注目を集めたのは、「ウィル&グレイス」が編成される前年の1997年のことで、要するにアメリカといえども、まだまだゲイはメインストリームの存在ではなかった。「ウィル&グレイス」はその印象をひっくり返すことで、後世に名を残した。 

 

その、ゲイの弁護士であるウィル (エリック・マコーマック) は、インテリア・デザイナーである女性の友人グレイス (デブラ・メッシング) と同居している。ゲイのウィルは女性に興味はないから、ルームメイトとして問題ない。この二人に、元々金持ちの旦那がいて社交界に顔の利くグレイスのアシスタントのカレン (ミーガン・ムラリー) と、やはりゲイのジャック (ショーン・ヘイズ) の4人を中心に毎回話が展開する。 

 

さて、新ヴァージョンは11年後、いざ幕が上がると、やはり4人は今も同じようにウィルの部屋に集まってなにかと騒いでいる。うたた寝していたカレンが目覚め、ヘンな夢を見た、ウィルもグレイスも別の人と結婚していたと言うと、ウィルもグレイスも、お互い実際結婚していたが二人とも離婚していた、それでグレイスは離婚の痛手を癒やすためにまたウィルのところに転がり込んでいる最中だったという、空白の11年間を30秒でまとめてしまった。どうやら舞台設定自体には変更はないらしい。 

 

新第1回は、グレイスがファースト・レイディのメラニア夫人からホワイトハウスのオーヴァル・オフィスをリノヴェイトしてくれという依頼を受ける。グレイスのアシスタントのカレンは元々は金持ちの社交界夫人だから、そういう依頼が来てもなんの不思議もない。トランプなんか大嫌いのグレイスだが、オーヴァル・オフィスには興味がある。ということで、いやいやの振りをしながら実際は喜んでホワイトハウスを訪れる。 

 

するとそこにはたまたま議員への嘆願に来ていたウィルもいて、二人でオーヴァル・オフィスで枕の叩き合いで白い羽根を部屋中にばらまいて散らかしてしまう。当然オファーはチャラだが、グレイスはちゃんと部屋の椅子の上に「Make America Gay Again」という赤いキャップを置いてきていたというのがオチだった。もちろんトランプのキャッチ・フレイズである「Make America Great Again」のパロディだ。それにしてもオーヴァル・オフィスの机の上には米露辞典があったというのが、皮肉でいい。トランプは絶対ロシアと繋がっている。 

 

大統領を守るシークレット・エージェントはほとんどがゲイだとか、本当かと思えるゲイ・ジョークは今回も健在だ。ただし、マコーマック演じるウィルもヘイズ演じるジャックも、今では歳を重ねているのがありありで、単純にゲイ・ギャグで笑うというより、この歳でいまだに相手探しかと、ちょっと痛いという印象を拭えない。これは特にジャックに言える。昔のようには笑えないのだ。やっぱ11年という歳月を感じてしまう。 

 

また、今ではゲイ・ネタのギャグやパロディはどこにでも転がっており、なんら目新しいものではない。それをまた今さら十年一日の如くやられても、自分で自分のパロディをやっているようにしか見えない。この11年で人々は変化しているのに、番組自体は前に進んでいないという印象は否めない。かつて時代を切り開いたという印象のある番組が、今ではノスタルジー的な肌触りを視聴者に提供している。意図的にそれを目指しているのかもしれない。 











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