Riders of Justice


ライダーズ・オブ・ジャスティス  (2022年1月)

マッツ・ミケルセンを前回見たのは、昨年の「アナザー・ラウンド (Another Round)」での教師役で、今回は妻を殺された復讐に走る軍人だ。インテリもマッチョも違和感なくこなす。しかしどちらのキャラクターもアルコールに溺れるというのがなんだかだ。 

 

要するに内面に弱いところを抱えるみたいな複雑なキャラクターを演じるのが上手なわけだが、それだけでなく、NBCの「ハンニバル (Hannibal)」における血も涙もない冷血なハンニバル像なんてのもあったと思い出す。「ハンニバル」は放送が終わって久しいが、後日談を描く新シリーズの企画があるとかないとかミケルセンは乗り気だとかいう話をちらほらと聞いたりもしたのだが、あれはいったいどうなったんだろう。 

 

さて「ライダーズ・オブ・ジャスティス」は、2021年の隠れた佳作アクションみたいな評され方をしているのをいくつかの媒体で見かけたので、気になっていた。元々北欧アクションは嫌いじゃないし。 

 

マークス (ミケルセン) は根っからの軍人で、列車事故で妻を失った後、うまく娘とも向き合えず、生活はぎこちなかった。そこへ数学者のオットーが現れ、列車事故が実はギャングの起こしたテロであることを告げる。彼が計算した数値もそのことを補強する。実は内面は脆いものを抱えるマークスは、最終的にその事実にすがり、復讐を決心する‥‥というのが粗筋だが、実はこれ、話の根幹だけを見ると、「アナザー・ラウンド」とあまり変わらない。 

 

「アナザー・ラウンド」は、生徒を教えることに自信をなくした中年教師がアルコールに溺れていく。「ライダーズ・オブ・ジャスティス」では、妻をなくして娘とまともに話し合えない中年軍人が、逃げ道を求めるように復讐に走る。どちらも、内心これは逃避だとうすうす気づいており、結局、共に現実に直面できないしっぺ返しを食らい、ついでに言うと、最後の捻ったカタルシスまで似ている。方ややるせない中年教師、方や鬱屈を抱えた中年軍人、結局その芯は一緒なのだった。 

 

さらに言うと、主人公の周りを固めているのが、やはり両作品とも現実から置いてきぼりを食いそうな中年男の面々だ。「アナザー・ラウンド」における生徒に人気のない教師たち、「ライダーズ・オブ・ジャスティス」における社会生活不適合の中年男の面々が、それぞれの理屈と鬱屈を抱えて非社会的な行動に走る。 

 

情けないと言えば情けないが、彼らの妻や子供や教え子たちは、そんな彼らの苦悩は斟酌せず、ただ文句を言ってダメ出しするだけだ。ミケルセンもツラい。たまにはハンニバルと化してただただ猟奇的に人を殺めたくもなるだろうと、多少の同情を喚起させもする。 

 

そう言えばミケルセン主演の極限サヴァイヴァル・ドラマ「残された者 (Arctic)」やガン・ヴァイオレンス・アクション「ポーラー (Polar)」なんてのも、そこそこ話題になったので視聴候補リストに長い間載せたままだった。予告編だけでも間違いなく面白いと思わせる。確か「残された者はhuluで、「ポーラー」はNetflixで見れたはず。こちらも早いとこ見てみるか。 













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デンマークの軍人マークス (マッツ・ミケルセン) は駐留先のアフガニスタンで、妻と娘のマチルデ (アンドレア・ヘイク・ゲーゼベウ) が列車事故に巻き込まれたという知らせを受ける。妻は命を落とし、マチルデは一命をとり留めるも、母が死んだのは自分のせいという意識から逃れられなかった。帰郷したマークスも、自分の喪失感ややり場のない怒りだけでなく、どうやってマチルデに対応すればいいかわからず、生活が荒れていく。そこへ数学者のオットー (アンドレア・ヘイク・ゲーゼベウ) が訪ねてくる。彼は偶然マチルデらと同じ車内に乗り合わせていて、あれは事故ではなく、テロだったとマークスに進言する。最初は取り合わなかったマークスだが、オットーの言うことに信憑性があることを認めざるを得ず、最終的にオットーの言うことを信じて、テロを起こしたギャング組織に復讐を決意する‥‥ 


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