私事ではあるがうちの女房は中学高校と合唱部で、このほど伝手でニューヨークの由緒あるリヴァーサイド教会でベートーヴェンの第九を歌うというプロジェクトに参加した。伊藤玲阿奈というニューヨークを拠点としている新進気鋭の指揮者のプロジェクトだそうで、自身が主宰するオーケストラと合唱のためのコンサート・シリーズだそうだ。なんか、「のだめカンタービレ」みたいな話だ。


うちの女房はいくら昔歌っていたとはいえ、それはもうかなり昔の話で、今回はまずドイツ語の発音から覚えなければならず、さらにモーツァルトの「戴冠式ミサ」まであり、練習は楽しいながらも大変だったようだ。しかも12月に入って急に寒くなり、乾燥して声が出にくい上に、なんとクリスマスに体調を崩し、大丈夫かと懸念しながら当日を迎えた。


私は私で、その日は昼は車を使ってマンハッタンで買い物を済ませてからアッパーウエストの教会に行こうと考えていたら、それが甘かった。当然混んでいるだろうとは思ったが、予想を超える混雑振りで、まずホボケンのNJトランジットでバスの定期を買おうとしたら、その前に通った、「ケーキ・ボス (Cake Boss)」の店の前が長蛇の列で、そのせいか、その辺で車が渋滞で動かない。むろん先週末の大雪の後遺症のせいもある。


しかもリンカーン・トンネルを使えばよかったものを、ホランド・トンネルを使ってニュー・ジャージーからマンハッタン入りしたために、出たらそこは普段から鬼混みのチャイナ・タウン、本当に一歩も動かない。そこから脱出するだけで30分近くかかり、久しぶりにミッド・マンハッタンのブック・オフで本でも買おうかと思ったら、考えたら平日なために車を停める場所がない。


安くで本を手に入れるためにブック・オフに行こうとしているのに、そのために高い駐車場に車を入れる気になぞ到底ならない。そのため車をかなり遠いところに停めざるを得ず、しかも道は観光客でごった返していて、これまた車だけでなく徒歩でも思うように歩けない。ええい、家に帰れこの田舎者どもめと、心の中で罵倒しながらタイムズ・スクエアを迂回し、ブック・オフに本を売ってついでに本数冊とCD何枚かを買い、車に戻る時また観光客の波の中に巻き込まれ、さすがにもういいや、みんなニューヨークを楽しんで帰ってくれと諦めの境地だった。2時過ぎには家を出たのに、最後には8時のコンサートに間に合うかどうかぎりぎりという時間になってしまっていた。なんとか間に合ったのは奇跡的だった。


そのコンサート、教会は石造りのため、やたらと音が反響し、実はコンサート向きという感じは必ずしもしない。しかし第九のクライマックスはとにかく音量と迫力で圧倒するという趣きがあるので、それはそれで悪い感じはしなかった。それにこの舞台装置を上回る場所というのは、それほどあるまい。指揮者はとにかく速いスピードで演奏したかったようで、時々ばらついたが、それでも、そういう部分も含めてなかなかよかったと思う。ま、自分の女房も加わっていたという贔屓目もあるが。観客も5、600人くらいは入っていたのではないか。


一方、戴冠式ミサでは、完全に外してしまった箇所が何か所かあり、指揮者が途中で演奏を止めて後ろを振り返り、もう一度やるからといってその部分をやり直すという一幕もあった。素人も歌っているし、歌とオケを合わせたのもたった3回だけだったそうで、それで完璧を期すのはやはりどう考えても無理だろう。それでもうちの女房はまたやりたいと言っていたし、私も肩肘張らずに楽しめた。NYASOといい、ニューヨークのクラシック畑の人間も頑張っている。








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New York Reona Ito Choral Concert Series Project (RICCS)

伊藤玲阿奈 ニューヨーク合唱コンサート・プロジェクト

2010年12月30日 (木) ニューヨーク、リヴァーサイド教会大聖堂

 
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