Prey


プレデター: ザ・プレイ  (2022年8月)

こないだスーパーマーケットでズッキーニと桃を買って、レジで支払いをしようとすると、キャッシャーの女の子が、得も言われぬヘンな顔をしてレジのスクリーンを見ている。いったいなんなんだと思っていたら、私の方を見て、どういう理由かわからないが、あんたのチャージは6ドル66セントだと言った。    

 

$6.66というと、クリスチャンならもちろん連想するのは聖書に出てくる666、つまり「オーメン (The Omen)」でも描かれた、いわゆる「獣の数字」だ。凶兆だ。ホラー映画のファンももちろん知っている。    

 

それでキャッシャーは不吉に思ったのだろう。それで私も、今日はツイているかいないか、どっちかに違いないと話を合わせて支払いを済ませたのだが、もちろん、そんなこと本気で考えていたわけではない。買い物をしてれば、そりゃいつかは金額が$6.66になることもあろう。その買い物をしたのが6月6日の6時6分だったとかいうことにまでなれば、さすがに不吉に感じないこともないだろうが、普通はそんなの、いちいち気にしてなんかいられない。   

  

一方、私の女房が、こちらはそういうのを気にするタイプで、怖い夢を見ると窓際に塩を置いてたりする。なんでも霊感の強い友人に教えられたそうで、本人曰く、効果があるという。私が今日、こんなことがあったと$6.66の話をすると、実は最近塩を替えてなくて、ちょうど昨晩寝ていて金縛りにあったと、さも合点がいったようだ。そういうこともあるか。   

  

私自身は霊感もなく、超常体験とも無縁の人間なのだが、現代以前の人類は、ある程度呪術や宗教、アニミズムの影響を受けてないわけがないだろう。特に自然と共存する生活をしていたネイティヴ・アメリカンの場合、超常現象は生活の一部だったと思われる。 

 

ところで「プレイ」は、18世紀のネイティヴ・アメリカンが暮らすそういう世界に、プレデターがやって来るという設定のSFアクションだ。アメリカではタイトルには「プレデター」と入らない、単に「プレイ」なので、最初から知らなければこれが「プレデター」フランチャイズの一作とはまず気づかない。「プレデター」ファンなら特に宣伝しなくとも知っていて見るだろうし、逆に「プレデター」を知らない者を取り込もうとする逆マーケティングみたいなマーケティング戦略なのだと思うが、効果あるのだろうか。 

 

いずれにしても、18世紀アメリカにプレデターが舞い降りてネイティヴ・アメリカンと戦うという設定は、意外過ぎて少なくとも私にとっては興味を喚起するのに充分だった。武器という点では現代より明らかに弱いはずの18世紀に住むネイティヴ・アメリカンが、果たしてどうやってプレデターに立ち向かうのか。結構気になるのだった。 

 

とはいえ数多ある「プレデター」フランチャイズで、私が見ているのはオリジナルのアーノルド・シュワルツェネッガー主演の第1作だけだ。そこそこ楽しんでは見たが、第2作、3作と続けて見ようとまでは思わなかった。「エイリアン vs プレデター (Alien vs Predetor)」まで出た時は、これは本気でコメディかと思った。個人的には「プレデター」にも「エイリアン」にも益するものはないのではと思ったが、続編まで製作されたところを見ると、そこそこ人気はあったようだ。 

 

その「プレデター」フランチャイズ最新作「プレイ」をまた見てみようと思ったのは、やっぱり設定の妙のせいだ。18世紀アメリカのコマンチ族女性 vs プレデターという構図は、近年のMeTooムーヴメントや人種間の対立を意識したものと思われ、時宜に合っていると思わせた。それに、プレデターに相対するには最もロウテクの弓や斧しか武器がない世界で、果たしてどうやって戦うのか。たぶん銃やライフルは持ってないんじゃないかと思う。まさか呪術で対抗するようなことはあるまいなと、痛く想像力を刺激されたのだった。 

 

主人公のコマンチ族のナルに扮するのは「アイス・ロード (The Ice Road)」のアンバー・ミッドサンダー。雷の中、みたいな名字は、本名かどうかは知らないが、いかにもネイティヴ・アメリカンの血を引いていると思わせる。昨年のFXの「リザヴェイション・ドッグス (Reservation Dogs)」に続き、ネイティヴにも光が当たる。 

 

火器や飛び道具のない時代に、武器を持った全盛期のシュワルツェネッガーすら手こずった相手に、成人になるかならないかくらいの、弓すら満足に射てない女の子がプレデター相手に互角以上の勝負を挑めるかという難題に果たしてどのくらい成功しているか。正直言って無理筋もないではないが、そこそこ楽しめる作品にはなっていると思う。フランチャイズは場所も時代も関係ないようだから、たぶんまだ続くと思われる次作で、どの時代に誰と戦うかの設定が成功の肝だな。  

  


 









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18世紀前半北アメリカ。コマンチ族のナル (アンバー・ミッドサンダー) はティーンエイジャーの女の子で、ヒーラーになるよう育てられたが、実は狩りの達人で兄のタアベ (ダコタ・ビーヴァーズ) のようになりたくて仕方がなく、隠れて狩りの技術を磨いていた。ある時ナルは、プレデターが乗ってきた宇宙船を目撃する。村では人々がマウンテン・ライオンを仕留めるために男たちを狩りに送り出す。ナルも無理を言って付いていくが‥‥  


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