プラネット・グリーン・チャンネル

6/4/2008 (Wed)

内容: 環境問題を考える番組を揃える新ケーブル・チャンネル。


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プラネット・グリーンはこの6月から放送を開始した新ケーブル・チャンネルだ。読んで字の如く、環境問題を視野に入れ、「グリーン」な視点から製作された番組だけを一日24時間放送する。とはいえ何から何まで新規に立ち上がったチャンネルではなく、その大元はディスカバリー・チャンネルの数多ある姉妹チャンネルの一つだった、ディスカバリー・ホームだ。


ディスカバリー・ホームはこれまた呼んで字の如く、「家」、「家庭」関係の番組を揃えるチャンネルで、流行りの「食」関係番組から家屋のリノヴェイション/メイクオーヴァーまで、広い間口で様々な番組を扱っていた。ただし、間口が広すぎて焦点を絞り切れなかった嫌いがあったのも事実だ。例えば食関係の番組を見たいと思ったら、人がてっとり早く合わせるチャンネルはそれこそフード・ネットワークだろうし、家のリニューアル関係の情報が欲しいなら、HGTV (Home & Garden TV) やDIY (Do It Yourself) という専門チャンネルがある。もし、今、食関係番組を見たいという時に、TVを点けて庭の手入れの仕方なんて番組をやっていたりしたら、視聴者はチャンネルを換えるだけだろう。逆もまた然りだ。というわけでディスカバリー・ホームは今一つ視聴者にアピールしなかった。


一方、ディスカバリーの姉妹チャンネルでは特にディスカバリー・ヘルスにおいて、エコ思想も視野に入れた番組がいくつか散見された。「ゲット・フレッシュ・ウィズ・サラ・スノウ (Get Fresh with Sara Snow)」や「ザ・ダン・ホー・ショウ (The Dan Ho Show)」なんて番組は共に環境にも目配せしており、特に「ゲット・フレッシュ」はグリーンでオーガニックな生活が番組テーマと、はっきりとプラネット・グリーン向きの番組だった。


「ゲット・フレッシュ」も「ダン・ホー」も、今こそ番組が露出度を高め視聴者にアピールするチャンスであるような気がするが、当然ディスカバリー・ヘルスからプラネット・グリーンに場所を代えて放送されるべきと思われた両番組は、しかしプラネット・グリーンの放送番組ラインナップに入っていない。調べてみたら、両番組共フィットネス関連番組を揃えたフィット (Fit) チャンネルに場所を移して放送されていた。しかし、実際に番組中にフィットネス関連コーナーもあった「ダン・ホー」はともかく、「ゲット・フレッシュ」がフィットの番組か。「ゲット・フレッシュ」は放送が今であれば、プラネット・グリーンで基幹番組の一本になれたような気がするが、時期的に早く放送されすぎた。


さて、その模様替えして新しく発足したグリーン・プラネットの主要番組には、下記のようなものがある。


「ハリウッド・グリーン・ウィズ・マリア・メノウノス (Hollywood Green with Maria Menounos)」ハリウッドでグリーンな活動をしているセレブリティの紹介

「サパー・クラブ・ウィズ・トム・バージェロン (Supper Club with Tom Bergeron)」グリーン・テーマの気楽なおしゃべり/お食事会

「Gワード (G Word)」グリーン関係情報番組

「スタッフ・ハップンス (Stuff Happens)」日常用品の製造から廃棄まで

「ウエスティド (Wasted)」どれだけ家庭からムダが出るかを測定

「リノヴェイション・ネイション (Renovation Nation)」グリーンなホーム・リニューアル

「オールター・エコ (Alter Eco)」エコ・ライフタイル/メイクオーヴァー・シリーズ

「ワールズ・グリーニスト・ホームズ (World’s Greenest Homes)」グリーンな家の紹介

「グリーンズバーグ (Greensburg)」竜巻で損壊した町をグリーンな町に生まれ変わらせる


さらには今後放送が予定されている番組には、


「エメリル・グリーン (Emeril Green)」元フード・ネットワークの人気シェフがオーガニックな料理を伝授

「トータル・レックラメイション (Total Wrecklamation)」一軒家をできるだけムダを出さずに解体する

「バトルグラウンド・アース (Battleground Earth)」ルダクリスとトミー・リーが様々なグリーン・テーマで競い合う


なんてのがある。もちろん全部が全部新番組というわけではなく、中には


「リヴィング・ウィズ・エド (Living with Ed)」グリーン生活を実践する


なんて従来番組もある。これなんかは元はディスカバリー・ホームやディスカバリー・ヘルス番組ですらなく、ライヴァル・チャンネルの一つと言っていいだろうHGTVが昨年放送していた番組だ。エド・ベグリーというエコロジー運動にはまっている脇役専門の俳優の生活に密着するもので、真面目にエコ思想にのっとって生活することの大変さや難しさをとらえる。というか、正確にはベグリーの変人さ加減を見て楽しむ番組だ。


昨冬、IFCチャンネルでインディペンデント映画の表彰セレモニーであるスピリット・アウォーズ中継を見ていたら、ホストのレイン・ウィルソンが、今回のセレモニーは環境問題を鑑みてグリーンなパワーを使用しています、とのたまって後ろのカーテンを引くと、そこには自転車をこいで発電しているベグリーその人がいた。特に笑いをとっていたわけではないところを見ると、ベグリーの知名度というのがだいたいわかるが、しかし、知る人ぞ知る存在であるのは確かなようだ。


これらの番組を見わたして、事前に最も注目されていた番組を挙げるとするならば、「オールター・エコ」と「グリーンズバーグ」ということになるかと思う。前者は現在HBOの「アントラージュ (Entourage)」に出演しているエイドリアン・グレニアがホストとなって、グリーンな家屋のリニューアルを試みるという番組だ。やや濃い目のグレニアは、昔、頭角を現してきた頃のテニスのピート・サンプラスをもっと可愛くたような顔立ちで、「アントラージュ」では周りにグルーピーが群れる映画スターという役どころだ。


このグレニア、しかし実生活ではこういう派手な生活からはほとんどかけ離れた、地に足のついた地味な暮らしを送っているらしい。かつてグレニアが自分自身でプロデュース/出演したドキュメンタリー「ショット・イン・ザ・ダーク」は、「アントラージュ」で人気が出る前に製作した作品だとはいえ、その中ではグレニアは既に結構むさい青年だった。「アントラージュ」というよりは、「プラダを着た悪魔」の芽の出ないシェフというのが本人の地に近いようだ。


今回の「オールター・エコ」では、ほとんど髪に櫛を入れているようにも見えず髭も当たらず、カメラの前に立つグレニアを見て連想するのは、既に死後の「ヒッピー」という単語だ。なんか、フラワー・チルドレンというかウッドストックをまだ引きずっているという感じだ。どうやら本人はスターダムにはほとんど興味がないようで、そういう人間が「アントラージュ」で派手派手のスターを演じているというのが演出の妙というものか。


彼以外に番組に登場する面々にも、そういう雰囲気を発散させる者が多い。考えたらヒッピーとかのムーヴメントのメッセージは、自然に帰れ、みたいなものだったわけだし、近いものがあると言える。ただし、これまでのところ番組中にグレニア本人が出てきたのは、毎回同じ冒頭のオープニングと番組第1回のみで、基本的に彼以外の家屋リニューアル・チームがおり、実際には彼らの仕事振りを追うというのが番組の基本だ。


一方、「グリーンズバーグ」の方は、レオナルド・ディカプリオの製作ということで注目された。昨年5月、カンサス州グリーンズバーグという小さな町は、竜巻の直撃によってほぼ全壊という打撃を被った。町の建て直しに当たり、住民たちはグリーンな家を再構築することにした。番組は、その町を再建する様を追う。


こちらも非常に著名なスターがホストとはいえ、ディカプリオ自身はプレミア・エピソードのオープニングに出てきて前口上を述べるだけで、番組そのものには登場しない。基本的に彼の場合、番組を製作するというよりも、自分の名前を貸しただけというのが実状に近いだろう。番組内に彼が出てきて町の再建に実際に手を貸して汗水流して働くとなったらもっと注目されたと思うが、さすがにそこまでするわけにはいかなかったようだ。しかしブラッド・ピットやアンジェリーナ・ジョリーがこういう企画に手を出したなら、現地に足を運んで実地に町を検分するくらいのことはやったと思う。


実はプラネット・グリーンの番組をざっと見て私が最も興味深く思ったのは、これらの事前に注目されていた番組ではなく、グリーンな家を紹介する「ワールズ・グリーニスト・ホームズ」と、日用品がどうやってできてどうやって廃棄/リサイクルされるかを追う「スタッフ・ハップンス」だ。これらは単純に、自分の知らなかったものを現前に見せてくれるので、見ていて楽しい。


プラネット・グリーンは、意外というかあるいは当然というか、GEのような大企業が番組スポンサーになっている。これらの大企業は、だいたいどこも視聴者のニーズや感性に敏感で、人々がエコ志向になってきているのを察知してそれに反応している。だからプラネット・グリーンみたいな反企業的みたいなチャンネルがちゃんとスポンサーを獲得することを可能にしている。それで世界が円滑に機能するなら、それに越したことはないと私も思う。







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