放送局: ショウタイム

プレミア放送日: 6/1/2003 (Sun) 22:00-23:30

製作: ショウタイム・ネットワークス

製作総指揮/脚本: ドナ・パワーズ、ウェイン・パワーズ

製作: ピーター・マッキントッシュ

監督: ウェイン・パワーズ

撮影: ジョー・ランサム

編集: アニタ・ブラント-バーゴイン

音楽: スティーヴン・グラジアノ

出演: エリック・ストルツ (マーク・コーム)、フェリシティ・ホフマン (ローナ・コーム)、キム・ディケンズ (デニ)、ジャスティン・ベイトマン (アニー)、ディラン・クリストファー (ウォルター・コーム)、ウィリアム・H・メイシー (スティーヴン)、ピーター・ボグダノヴィッチ (ザック)


物語: 中年の域にさしかかったマークとローナは、二人でハリウッドで脚本を書いて生計を立てている。マークは9歳になる息子のウォルターを愛し、一応豪邸と言える部類の家に住み、なに不自由ない生活を送っているかのように見えたが、実はローナは鬱の気があり、アルコールに逃げる毎日が続いていた。どんなにサポートしようとしても前進が見られないローナにマークも業を煮やし、ある日、ついに好意を抱いていた女性友達のデニと関係を持ってしまう‥‥


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「アウト・オブ・オーダー」は、最近流行りの崩壊家族、あるいはそれに類した、崩壊の危機に瀕している家庭を描くドラマだ。見かけは平和で幸せ一杯の家族だが、一皮剥くと、いつ爆発するかわからない鬱屈や、不平不満という時限爆弾が内部でかちかち秒を刻んでいる。そういう一家を淡々と、時に劇的に描く。


「アウト・オブ・オーダー」が、「アメリカン・ビューティ」やHBOの「シックス・フィート・アンダー」の成功に多くを負っているのは間違いない。一見幸せ、実は崩壊寸前という大まかな番組プロットのみならず、番組から受ける肌触りや印象がすごく似通っており、それらの番組の成功なくしては、「アウト・オブ・オーダー」が製作されることはなかったと思われる。


そのため、わりと面白い番組なんだが、番組に対する第一印象は、この手のやつ、既にどこかで見たことがあるなあというものだ。主演のマークに扮するエリック・ストルツはなかなか好演しているし、妻のローナに扮するフェリシティ・ホフマンなんて、小さい頃に性的に虐待を受け、家では厳しかった父の間違った教育のせいで今では軽い鬱病でアル中寸前という役を熱演しており、ストルツのやや引いた受け身の演技と合わせ、見応えがある。


とはいえ何度も言うように、そのストーリー展開が既に見覚えがあるようなものばかりで、「アメリカン・ビューティ」と同じような家庭崩壊を描いていようとも、「アメリカン・ビューティ」が現れた時に受けたのと同じような衝撃は既にもうない。さらに「シックス・フィート・アンダー」がその枠を押し広げて新たなスタンダードを設定してしまった今、やはり「アウト・オブ・オーダー」から受ける印象は、はっきり言ってしまうと、「二番煎じ」だ。


例えば、幼い頃に性的虐待を受けたローナ。同情はするが、ストーリとして見るとそういう設定は今ではありきたりで、だからといって特に何らかの感懐はもたらさない。その相手に復讐することを妄想するマーク。これまたなんか見たことあるような展開。最初、実際にライフルを持って仕返しをしに行っているように見えて、実は頭の中だけで考えていたというオチも、最初から読めてしまう。あるいは家族揃っての楽しいはずのディナーの席上で、父親に対して感情が爆発してしまうローナ。その二人が争う様子を見て、二人がリング上でボクシング・マッチをしているところを想像するマーク。なんか、すべてどこかで見たことがあるようなシーンばっかりだ。


番組の製作総指揮と脚本、監督を受け持っているウェイン・パワーズは、番組の主人公マークと同じく、夫婦でハリウッドの脚本書きをしている。要するにこの番組は、パワーズの自画像の投影であり、パワーズ自身が「マークは完全ではないにせよ私自身」と、実際に言い切っているところを見ると、かなり実生活が反映されているのだろう。そうか、ハリウッドの脚本書きって、あんな豪邸に住めるのか。ハリウッドのプール付きの家だぞ。買えば何百万ドルもするのは間違いあるまい。


とはいえパワーズが書いた脚本で、まがりなりにもハリウッドで成功した作品は、こないだ公開されたばかりの「ミニミニ大作戦 (The Italian Job)」ぐらいである。まあ「ミニミニ大作戦」は面白かったが、多分その次に知られている「ディープ・ブルー (Deep Blue Sea)」ははっきり言って興行的にはぽしゃったし、成功作が一つしかなくてもあんな豪邸に住めるのか。LAでは3人に一人はハリウッドに就職希望と言われているわけがわかる。いつも遊んで暮らしてパーティばっかりしているようにしか見えないのにああいう生活ができるのなら、そりゃあ誰だってハリウッドに就職したいと思うだろう。


「アウト・オブ・オーダー」は、最近まったく食指をそそらないドラマ・シリーズばっかり製作していたショウタイムにおいては、久し振りに見てみようかなという気を起こさせるドラマである。しかし、ショウタイムが編成するドラマは、SFか、さもなければ「クイア・アズ・フォーク」のように、ゲイやマイノリティを主人公とするドラマが多い。来年予定されているドラマの第1弾は、今度はLAのレズビアンの生態を描く群像ドラマだそうで、要するに「クイアー・アズ・フォーク」の女性版だ。まあ、それはそれで面白そうではあるが、いつもHBOの後塵ばかりを拝んでいるショウタイムがHBOと肩を並べるためには、そういうニッチ指向ではなくて、HBOの「ザ・ソプラノズ」や「Sex and the City」のような、一般受けするドラマで、しかも二番煎じの印象を受けないオリジナルの番組を確立することが課題だろう。







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Out of Order

トゥゲザー   ★★

 
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