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オールド  (2022年6月)

昨年、M.・ナイト・シャマランの「オールド」公開の予告編を目にした時、そろそろこれを映画館通い再開の復帰第1作にするか、と考えたことを思い出す。なかなか悪くないかも、なんて考えているうちに、わらわらとコロナウイルスの第2波だか3波だか4波だかが猛威を奮い始め、結局またもや映画館通い再開は断念した。あれからもう早くも1年、パンデミックが始まってから2年以上経つ。結局、こうやってTVの前に座ってストリーミングで「オールド」を見ている。 

 

実は「オールド」の筋を書こうとして、どこまで書いていいのか迷った。とある南の避暑施設にヴァケイションに来た一家が遭遇する恐怖の体験、くらいならいいだろうが、映画が始まって4分の1くらいで、その一家が体験する恐怖が姿を現し始める。これがキモなのだが、その内容を言ってしまうと、最初に見た時の驚愕を減殺してしまうのは必至だ。 

 

いかにもシャマランらしい、ヴィジュアルでわからせる演出で、これを事前に知ってて見るのと知らないで見るのとでは、衝撃の大きさが異なる。だいたいシャマラン作品はどれもそうなのだが、できれば何も知らずに見た方が楽しめるのは言うまでもない。 

 

既に公開されて1年経つ作品であるからして、たぶん見ようと思った者はほとんどがすべて見ているものと思うが、そうでない者が私が書いてばらしたプロットのために衝撃を減じることになるのは避けたいと思う。とはいえ、話は、その後どう展開するか、どう見せるかが見せ所であるからして、その部分に言及できないのはつらい。 

 

他の媒体はなんと言っているかと思って、allcinemaを見てみたら、「xxxxxxxxxxxxxx不思議なビーチに足を踏み入れてしまった数組の家族を待ち受ける数々の謎と戦慄の恐怖を描く。」と記されており、xxxの部分はグレイ・ゾーンだなと思ったが、やはりこの点を書かずして内容およびその面白さを伝えるのはほぼ不可能だ。というわけで、ひと言お断りして、私も書き継ぐことにする。 

 

 

(注) 以下、内容に触れています。 

 

主人公一家が訪れたビーチの秘密は、そこでは時間が早く流れている、というものだった。つまり、そこでは人は早く歳をとる。ビーチで一夜を明かしたら、翌朝、10歳になるかならないくらいの娘と息子が成長期を迎えていた、というのは、親からしたら悪夢だろう。一方、既に歳とっている者は、死期が近いことを嫌でも知ることになる。確かにこれは新手のホラーだ。 

 

一方、これはどちらかと言うと作り手の方を萌えさせる設定だと思わないこともない。急速に歳をとる人間をどう撮るか、そリアクションをどう撮るか、考えただけで演出は楽しそうだし、メイキャップは腕の見せ所だ。実際、歳とって髪に白いものが混じり、皮膚にしわがよってくるという微妙な差をすごく上手に撮っている。たぶん、こういう変身は「スプリット (Split)」で人を変身させてみて楽しかったから色んな別のアイディアが生まれてきて、そのうちの一つが「オールド」になったのだと思う。 

 

しかし、そういう、当然歳とると目に見えるようになる変化の部分は非常にうまいのだが、しかし、だったら、なんでその髪自体は伸びないのか、なんで爪は伸びてる節はないのか。あるいは、子供の身長がいきなり一晩で何十センチも伸びて、人は平気でいられるのか、なんて思ってしまう。成長期を経験した者ならわかるだろうが、背が伸びる時って、結構わかる。急に背が伸びる奴って、夜中、骨がぴきぴき言って痛いって言ってた。それなのに一晩で10センチ背が伸びたら、たぶんそれだけで人は耐え切れずに死ぬと思う。と、後から突っ込みを入れたくなるくらい、見ている時は楽しんだから思い返してアラを見つけてしまうのだが。 

 

ところで、主人公一家の名字はCappa、つまりカッパ家だ。カッパが時間が異様に早く進むビーチに閉じ込められる。なんか話ができ過ぎのような気がする。カッパだから水辺にいることは苦になるまい。もしかしたらカッパは、人とは違う時間軸の中に最初から棲んでいたのかもしれず、だから本当は本卦還りというか、元の世界に帰っただけなのかもしれない。人間の世界にあまりに長く住み過ぎて、自分たちの本性を忘れていたという可能性も捨てきれない。自分が死んでいることすら理解していなかったりする者もいるシャマラン作品の登場人物なのだ。あながち穿ち過ぎの意見とも言えないような気がする。 

 

カッパ家に扮するガエル・ガルシア・ベルナルとヴィッキー・クリープスの夫婦は、意外というか微妙にポイントがずれた人選という感じで、それがなかなかいい。さらに、成長期を迎えた長女マドックスと長男トレントに扮するのが、「足跡はかき消して (Leave No Place)」のトマシン・マッケンジーと「ヘレディタリー (Hereditary)」のアレックス・ウルフというのが、またいい。方や現代アメリカの山の中で父親と共に人と会わずにひっそりと生きている女の子、方やカルトの新救世主だ。それが姉弟だ。マッケンジーは、「ラストナイト・イン・ソーホー (Last Night in SoHo)」で、これまたシャマラン組の一人と言えるアーニャ・テイラー-ジョイと共演している。これも見る必要がありそうだ。 

 


 










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ガイ (ガエル・ガルシア・ベルナル) とプリスカ (ヴィッキー・クリープス)、長女マドックスと長男トレントのカッパ家は、人里離れた避暑地にヴァケイションで訪れる。実はガイとプリスカは最近うまく行ってなくて、その関係修復も兼ねた旅行だった。歓待されたホテルで支配人から秘境的ビーチ行きを打診されたガイとプリスカは話に乗る。他の何組かの家族やカップルと共にビーチに着いた一行は三々五々くつろぎ始めるが、それが恐怖の始まりだとは誰も知らなかった‥‥ 


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