No Time to Die


007/ノー・タイム・トゥ・ダイ  (2022年11月)

7年前に「スペクター (Spector)」を見た時には、と書いていて、前作7年前! もうそんなになるのか、と驚きを禁じ得なかった。 

 

むろんこれは必ずしも正しくはない。なんとなれば「ノー・タイム・トゥ・ダイ」は、本当なら2020年春に公開予定だったからだ。それがコロナウイルスのパンデミックによって秋に公開が順延され、さらに翌2021年秋まで延期された。 

 

2020年春公開予定時には、007に扮するダニエル・クレイグがNBCの「サタデイ・ナイト・ライヴ (Saturday Night Live)」にゲスト・ホストとして出演、007として、ここまでしていいのか、ステュディオから訴えられなくていいのか、それともこれもいい宣伝と思われてるのかと、外野が心配になるくらい007をおちゃらかしたギャグを噛ましていた。 

 

その宣伝効果もむなしく映画は秋まで公開延期、それなのに今度は、クレイグがゲストとして出演するはずのNBCの深夜トーク「トゥナイト (Tonight)」で、再度のコロナウイルス拡大で出演はヴァーチャルになった上に、映画自体もまたまた公開延期を発表せざるを得なかった。結局やっと公開されたのは、その1年後の2021年秋だ。 

 

その頃には私は、今さらコロナ感染絶対嫌と思っていたので劇場にも足を運ばず、結局、今になってやっとストリーミングで見た。最初の公開予定から既に2年半が経っている。旬を逃したのも甚だしいが、公開された時点で既に旬を過ぎた感濃厚だったので、今さら旬も何もないだろうと自分を納得させる。 

 

クレイグによるボンドがこれが最後と決まっていたので、それまでにクレイグは次のステップへ模索を始めていた。それが「ナイブズ・アウト (Knives Out)」フランチャイズに代表される、コメディ路線だ。 

 

クレイグによる007は、それまでの余裕たっぷりで窮地にジョークの一つや二つを必ずかまさないと気が済まないタイプではなく、シリアスに徹することで新しい007像を造型した。それが「ナイブズ・アウト」ではコミカルな私立探偵だ。 

 

一方、「ナイブズ・アウト」で共演したアナ・デ・アルマスが、「ノー・タイム・トゥ・ダイ」にも出ている。面白いことにアルマスは「ナイブズ・アウト」ではシリアスな色が強めで、「ノー・タイム・トゥ・ダイ」ではコミカルな味付けになっている。クレイグと逆だ。 
 

と、かなりデ・アルマスに印象を受けるが、今回の主要キャラクターは、悪役のサフィンに扮するラミ・マレク、それに「スペクター」に続いての出演となる、ラヴ・インテレストのマドレーヌに扮するレア・セドゥだ。ブロフェルド役のクリストファー・ヴァルツも顔を出す。 

 

「スペクター」では、シリアスで弱さも併せ持つボンドが、また無敵になるのかという方向の転換を予想させた。今回は冒頭、ヴェスパの墓の前で爆破に遭い一時気を失う。その後よれよれのスーツに怪我をしながら、それでもカー・アクションでスペクターの残党を蹴散らす。また、どちらかというと余裕のアクションはパロマ (デ・アルマス) に譲るなど、無敵の強さと脆さを両方持つバランスに気を配ったように見受けられる。後半はマレク、セドゥと、シリアス味の強い俳優が前面に出てきての大団円、クレイグの007に幕を引くのだった。次の007はさて、いったい誰か。英国人白人以外の可能性はあるか。思い切って女性というのはあるだろうか。 


 











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マドレーヌ (レア・セドゥ) と共に訪れたイタリアの古い町で、かつての最愛の人ヴェスパの墓に詣でたボンド/007 (ダニエル・クレイグ) は、そこでスペクターの手下の者たちから襲われる。危機一髪で難を逃れたボンドは、マデリーンが手引きしたに違いないと思い、別れる決心をする。5年後、引退してジャマイカで悠々自適の生活をしていたボンドに、CIAのライター (ジェフリー・ラッシュ) とアッシュが接触してくる。MI6でM (レイフ・ファインズ) が秘密裏に研究させていたDNA兵器を盗んで逃げたオブルチェフ奪回に力を貸してくれというのだ。ボンドは新米エージェントのパロマ (アナ・デ・アルマス) の協力もあってオブルチェフ奪回に成功するが、ダブル・エージェントだったアッシュの裏切りによりライターは死亡、ボンドもあわやというところを間一髪で逃れる‥‥ 


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