放送局: FOX

プレミア放送日: 3/3/2003 (Mon) 20:00-22:00

製作: ケイオス・セオリー、ロケット・サイエンス・ラボラトリーズ

製作総指揮: テッド・ハイムズ、クリス・コーワン、ジャン-ミシェル・ミシュノー

共同製作総指揮: キャシー・ウェセレル

製作: ダグラス・フォーブス

監督: ボブ・レヴィ

ホスト: ショーン・ヴァレンタイン


内容: 5人のシングルの男女 (男2人女3人) に何人かの結婚希望の男女がアプローチし、視聴者の投票によって誰と誰が最もお似合いのカップルかを決める。決定した5組のカップルはそれぞれ婚約指輪を交わし、一定期間同じ屋根の下で暮らさなければならない。彼らの一部始終はカメラに収められ、それを見た3人の専門家の意見により、毎週一組ずつ最も不適格と思われるカップルが婚約を解消され、追放される。最後まで残ったカップルは晴れて結婚式を挙げる。


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私はつい数年前までは、FOXの数々のくだらない、いたずらに視聴者を扇情するリアリティ・ショウに愛想を尽かしていたのだが、ここ1、2年、ついに最後の恥もプライドもかなぐり捨て、愚劣の極致を極めたような番組を編成するようになってから、逆にFOXのリアリティ・ショウは、他のネットワークが編成するリアリティ・ショウよりも俄然面白くなった。FOXの視聴率記録を塗り替える大ヒット番組となった「ジョー・ミリオネア」は、そういったなりふりかまわない番組作りの姿勢が、視聴者のニーズ、あるいは覗き見嗜好と見事に噛み合った例と言える。


そのFOXが編成する最新のリアリティ・ショウ「メアリード・バイ・アメリカ」は、FOX得意の恋愛/結婚系のリレイションシップ・ショウだ。FOXのこの系統のリアリティ・ショウは、ABCの「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア」を真似た2000年の「フー・ウォンツ・トゥ・メアリ・ア・マルチミリオネア」で口火を切り、2001年の「誘惑の島 (Temptation Island)」で盛り上がり、今年の「ジョー・ミリオネア」で頂点を極めたもので、今ではFOXの十八番とも言えるジャンルになっている。特に、わざわざ恋人がいる男性 (女性) に異性を絡ませたり、素性を偽ってカップルを成立させ、あとで本当のことを知らせてその反応を楽しんだりという出歯亀根性丸出しの扇情系番組を製作させたら、FOXの右に出るものはない。


これはひとえにFOXでこの手の番組の製作を司っているマイク・ダーネルの貢献の賜物で、はっきり言って、今のようにFOXが2流のネットワークと言われてしまうのもダーネルのせいなら、「ジョー・ミリオネア」を編成して視聴者獲得でついに3大ネットワークを抜き去り、FOXをアメリカで最も人気のあるネットワークに押し上げたのも、これまたダーネルのおかげである。いわばダーネルはFOXの鬼子なのだ。今のように人気番組を次々製作していられるうちはいいが、アイディアが枯れて視聴率をとれなくなったら、多分真っ先に飛ばされてしまうだろう。彼を憎んでいる者は、きっとFOX社内にも大勢いるだろうと思われる。


さて、「メアリード・バイ・アメリカ」であるが、要するにこの番組、お見合い番組である。別に見知らぬ他人同士を結婚させてしまうというのは、お見合い先進国の日本から来た私にしてみれば、大して面白いアイディアであるとも思えない。お見合いどころか、親同士の決めた相手と結婚するまで相手のことをほとんど知らなかったというのは、それほど遠い昔のことじゃない。それなのにこの番組にそそられるのは、誰と誰が最も相性がよさそうかと考えてカップリングを行うのが、我々視聴者であるという、今流行りの視聴者投票というシステムを取り入れていることと、そうやって成立したカップルに密着して、その後どうなるのか、それこそが興味津々であるはずのところを実際に追っかけて撮影しているところにある。


さらに、そうやってできた5組のカップルを、心理学者等の専門家がつぶさに分析し、あまりうまく行ってないと思われるカップルを追放していくという、勝ち抜きゲームの要素も取り入れた。そして最後に残るカップルを決めるのも我々視聴者の投票で、優勝 (と言うのか?) したカップルには、FOXが支度金10万ドルと新車、さらに新築の一軒家をプレゼントすることになっている。そのためカップルは、愛情も大切ではあるが、賞金目当てになんとしても最後まで残ろうと苦心する。結局のところ、優勝してもうまく行かなければ、別れちゃえばいいのだ。その後で家を売るなりしちゃえば一財産できる。というわけで、登場するカップルたちは、新しい伴侶とうまくやっていこうと四苦八苦すると共に、多少の不満には我慢もして仲のいいところを見せようともする。なんとなく、普通の結婚生活と何も変わるものはないというような気もする。番組製作総指揮は、誰あろう「誘惑の島」のクリス・コーワンとジャン-ミシェル・ミシュノーだ。


番組は、まず最初に、登場する5人のシングルの男女 - ジェニファー、マット、ジル、スティーヴン、ビリー・ジーン - のそれぞれに対し、5人の異性が立候補する。候補者は、求婚される側の家族のスクリーニングによって二人に絞られる。ここまでが最初の2回で、番組第3回では、残った二人のうちのどちらが最終的に婚約者となるかを視聴者投票で決め、その候補者が相手にカーテン越しに正式に求婚 (それまで二人は顔を合わせていない)、相手がそれを承諾し、婚約指輪をはめた時点で、初めてごたいめーんとなる。


そして番組としては、これからが本番だ。これまでは会ったこともない人間とうまく共同生活をやっていけるのか、カメラはその様子を追いかける。5組のカップルの中で最初から最もうまくやっている、というか、いきなり新居に移動してきたその日の晩にすぐに多分セックスするところまで行ってしまって仲睦まじいところを見せていたのが、ビリー・ジーンとトニー。ビリー・ジーンは、いかにもアメリカ人という感じで、開けっ広げで感情の起伏が激しいタイプ。カメラなんか気にせずベッドの上のトニーにケツ丸出しでのっかかっていったため、ケツにぼかしが入っていた。その後の二人までは写さなかったが、当然やるべきことはやっちゃったんでしょう。ビリー・ジーンは結構可愛く、うーむ、トニーってやり得だと思ったのは、私だけではあるまい。


一方、最もぎくしゃくしていたのが、マットとコルテスのカップル。マットは結構冷めているし (だったらこんな番組なんかに出るな!)、コルテスもそれほど積極的ではない。むしろ最初から引いているように見える。結局この二人は終始お互いに気詰まりな態度のまま通してしまい、やっぱりと言うか、このカップルが多分最もうまくいかないと見られ、番組の最後で追放される最初のカップルとなった。次の回で追放されたのは、ジェニファーとゼイヴィア。こちらもうまく行っているようにはまったく見えなかったから、しょうがあるまい。


さて、番組として面白くなってきたのは、この後からである。まず、スティーヴンとデニースのカップルであるが、こちらはデニースの方がわりと積極的であったが、スティーヴンの方が慎重で、一緒のベッドで寝ていながらも、どうやらスティーヴンはデニースに手を出そうとしない。デニースは、婚約もしているのに、なぜ自分を抱こうとしてくれないのかわからず涙を見せるが、スティーヴンは、本当にその時期が来るまでと、なぜだかこちらも頑な。それはいいんですがね、そういう態度でいると、うまく行かないと見られてあんたたちも追放されちゃうかもよ。それよりも何よりも、据え膳食わないスティーヴンの態度が、潔いというかバカだというか、本当に結婚を考えているんだったら、とっととセックスしないとわかりあえないでしょうが。この男、何考えているのか、本当によくわからない。


結局、この二人はしばらくしてやっとセックスまで行ったようで、そうなると男女の仲というのは不思議なもので、それまではわりとよそよそしかった二人が、いきなりすごく仲睦まじくなるのだ。やっぱり男女間においては、セックスというものはとても重要なんだなあ。二人はそれまで完全にしっくり行っているとは見えなかっただけに、今度はその反動で非常に仲のいいカップルに見え、いきなりポイント高い。しかし、ビリー・ジーンとトニーは最初から熱々だし、ジルとケヴィンのカップルも、なかなかうまくやっている。最も相性がしっくりしているように見えるのは、むしろジルとケヴィンの方かもしれない。


さてどうなるかと思われた番組の第6回は、結局、どのカップルを追放するかを決める3人の専門家も迷った末、スティーヴンとデニースのペアが追放された。彼らは大穴的要素を持っていたんだが、せめてもうちょっとスティーヴンが積極的な姿勢を見せていたらと悔やまれる。結局最後まで残ったのは、ビリー・ジーン/トニーと、ジル/ケヴィンのカップル。いったいどちらのカップルが選ばれて、晴れて結婚式を挙げることができるのか。


これまでにこの二組のカップルのところには、友人やら親族やらが遊びに来たり、あるいは彼らは両親の家を訪ねたりしている。その中で最も印象的だったのは、ビリー・ジーンのルームメイトの男性で、男性ではあるが、彼がゲイであるのはどこから見てもありあり。だから異性のルームメイトでも平気でやっていけるんだろう。この男、性格がさばさばしているビリー・ジーンと相性がよいようで、別れたくないと思っているのに、結婚したいしたいと思っているビリー・ジーンが自分の元から去っていくのだと思うと、いてもたってもいられず、感情を抑えられず、泣き出してしまう。いや、笑わせてくれます。


一方、ジルのところでは、こちらの父親がまた変わった親父で、家族を伴ってジルの実家を訪れたケヴィンが、ジルをスウィーティ (カワイコちゃん) なんて呼んだもんだから、いきなり激して怒り出してしまった。俺の娘をスウィーティなんて呼ぶな、なんて一人で怒っているのだが、とはいえ、たかだかそれっぽっちの理由で大の大人が怒り出すなんて誰も夢にも思わないだけに、ケヴィンの家族はただ呆気にとられるだけだ。非常に気まずいのだが、慣れているジルの家族はわりと平気だったりする。結局最終的には、ケヴィンと二人だけで話し合ったジルの父も折れるのだが、さて、このカップル、当人同士の相性はともあれ、周囲はわりと問題ありそうだ。その上ケヴィンは現在、無職だそうで、ジルが結構稼いでケヴィンが家で主夫業に専念するということで話し合いがついているならまだしも、普通、無職の男に娘を嫁がせようなんて考える親はいないよなあ。


番組の第7回では、この二組のカップルが、独身時代最後の羽目を外すバチェラー・パーティ/ブライダル・シャワーのために、それぞれ久し振りに別行動でラスヴェガスを訪れる。ビリー・ジーンとジルは一緒に行動するのだが、のらなきゃ損とばかりにストリップの男性モデル相手に羽目を外すビリー・ジーンを横目に、ジルは案外しらふのままだ。これがビリー・ジーンの反感を買い、二人は一瞬即発の状態になる。そりゃま、自分の行動を白けた目で見られて、一人だけ意味なく騒いでいる自分がバカみたいと考えて面白くないビリー・ジーンの気持ちもわからないではないが、あんた、確かにはしゃぎすぎだよ。あんたがそうやってたががはずれている模様は、カメラに収められ、やがて全米に中継されるんだよ。


実はビリー・ジーンとトニーのカップルは、実はビリー・ジーンの方がトニーに首ったけで、そうやってバカ騒ぎした翌日、しらふに返ったビリー・ジーンは早くトニーの元に戻りたいと寂しげに呟くのだが、実はそのトニーは、ビリー・ジーンよりもっと派手に女性ダンサー相手にヴェガスの夜を満喫していたのであった。二人の女性によって服を脱がされたトニーは、そのままいい感じになってしまい、画面には映らなかったが、私の見たところ、どうやらやることやってしまったように見える。あんた、こんなんでいいの? ビリー・ジーンが悲しむよ。ビリー・ジーンはあんなにあんたのことを思っているというのに。この男、実は最初から遊び半分で番組に応募した気配が濃厚で、どうもビリー・ジーンとHする時以外、彼女に対して積極さが足りないように見える。


この番組、来週は最終回で、ビリー・ジーン/トニーのカップルと、ジル/ケヴィンのカップルのどちらかが落とされ、どちらかが無事結婚式を挙げることになる。両方共ウェディング・ドレスにタキシードで正装させ、親類縁者を教会に呼んだ上に、最後の最後でどちらかは失格になるという進行らしい。FOXもやってくれますなあ。ここまできて追放されたら、これはきついよなあ。親兄弟に合わす顔がないではないか。私の予想では、選ばれて無事結婚式を挙げるのは、ジルとケヴィンのカップルという気がする。見ていて一番面白く、私が最も好感を持っているのはビリー・ジーンなんだが。さて、いったいどういうことになりますやら。


ところで、賞金のかかるリアリティ・ショウには、素性や経歴を偽って番組に応募し、後でそれがばれてスキャンダルになるということが少なくない。最近では同じFOXの「アメリカン・アイドル」で、過去に警察の厄介になっていることを隠して参加、いいところまで行ったのに結局ばれて失格になったやつがいる。「メアリード・バイ・アメリカ」では、結婚相手を探すリアリティ・ショウだというのに、なんと実は結婚していることを隠して応募した女性がいて、しかもその女性、スティーヴンの婚約者候補として最後の二人にまで残ったのだが、結局視聴者投票でその座はデニースに奪われた。もし投票でこちらの女性の方が選ばれたとしたら、やはり失格となってデニースの繰り上げ当選になったのだろうか。


また、野性味のある美人のジルは、こちらは「プレイボーイ」でモデルとして脱いだ経歴があるのがすっぱ抜かれた。ただし、こちらの方はFOX側も事前に知っていて、何の問題もないということでそのまま番組は続いていったのだが、番組関係のファン・サイトでは、彼女のヌード写真がここぞとばかりに陳列されている。本人も、別に悪いこととは思わないし裸は美しいもの、とあっけらかんとしたもので、ま、私もこういうスキャンダルは歓迎だ。この番組が「ファミリー・ビジネス」を放送しているショウタイムの製作だったら、ビリー・ジーンとトニーがセックスしているところもちゃんと見せてくれるのになあと、それだけが残念だ。



追加 (4/14):

「メアリード・バイ・アメリカ」の最終回は、ビリー・ジーン/トニーとジル/ケヴィンの結婚式が挙げられる。私はその前に視聴者投票で最後の一組を選び、最後まで残ったカップルが式を挙げて賞金を受けとるもんだとばかり思っていたら、そうじゃないらしい。とにかく二組に式の準備をさせ、本当に誓いを述べさせた上で、投票で賞金をあげるカップルを決めるらしい。要するに実際に結婚するしないは当人の意志次第なのだ。しかし、屋外の式場には両組の親戚が既に正装して集まっている。本人たちもウェディング・ドレスを着用して、そこまでして、いざ結婚の宣誓をする時に「I don't」なんて言っちゃうってか?


と思っていたら、本当に、最初に式を挙げたジルとケヴィンのカップルは、お互いに「No」と言っちゃうんだなあ。へえ、ここまで来て、こんなのもありなの? 要するに二人ともたかがTV番組だと思ってたんだな。本当に結婚するつもりはさらさらなかったわけだ。それまではあんなにアツアツのところを見せて、私にはあなたしかいない、みたいな顔をして、全部嘘八百だったってか。しかし、じゃ、あんなに結婚に乗り気だったビリー・ジーンは? と思っていたら、トニーに首ったけのビリー・ジーンが「I do」って言ったのに、トニーは「君には他にふさわしい人間がいる」なんて言っちゃうのだ。顔面蒼白になり、表情が凍りついたまま壇上から引き下がるビリー・ジーン。怒り狂うビリー・ジーンのルームメイト。控え室で泣きじゃくるビリー・ジーン。やっぱり彼女の方が面白いドラマを演出してくれる。


結局、最終的にどのカップルも結婚までこぎ着けなかったため、賞金も新車も新居もすべて棚上げになってしまった。番組の最後の、あのカップルは今‥‥のコーナーでは、ジルとケヴィン、ビリー・ジーンとトニーはその後関係を続けていくかも‥‥みたいな匂わせ方で終わっていたが、それまで会ったこともない人間同士を結婚させるという企画は、さすがアメリカでも無理があったか。







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Married by America

メアリード・バイ・アメリカ   ★★1/2

 
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