放送局: FOX
プレミア放送日: 1/10/2001 (Wed) 21:00-22:00 (1hr x 6)
製作: ロケット・サイエンス・ラボラトリーズ
製作総指揮: ジョーン・ミシェル・ミシュノー、クリス・コーワン
撮影: グレン・テイラー
編集: ジョナサン・シーガル
音楽: デイヴィッド・ヴァナコア
ホスト: マーク・L・ウォールバーグ
内容: カリブ海に浮かぶベリーズのリゾートに、同棲はしているが結婚はしていない4組のカップルが送り込まれる。彼らは到着早々男性のみ、女性のみのグループに分けられ、それぞれ別のリゾートに滞在する。男性のみのリゾートには、シングルの女性13人がはべり、男たちを誘惑する。カップルの女性のみが滞在するリゾートには、逆にシングルの男性13人が待ち受けており、やはり女性たちを誘惑する任務を負う。2週間の滞在の後、カップルは再び相まみえ、これからも自分のパートナーと共に暮らしていくか決断する。
参加者:
イトーシー: エグゼクティヴ・アドミニストレイター。34歳。
タヒード: プロダクション・アシスタント。29歳。
マンディ: シンガー。22歳。
ビリィ: スポーツ・センターのマネージャー。26歳。
ヴァレリー: 不動産エージェント。29歳。
カヤ: モデル。28歳。
シャノン: 弁護士。26歳。
アンディ: カヤック製造会社オーナー。26歳。
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リアリティ・ショウが相次いで編成された1月のアメリカTV界、ABCの「ザ・モール」の翌日に編成されたのが、この、FOXが放送する「誘惑の島」である。リアリティ・ショウといっても様々な種類があり、放送する局によって独特のカラーがある。その特色がいつも色濃く出てくるのがFOXで、ここがリアリティ・ショウを製作すると、昨年の「フー・ウォンツ・トゥ・メアリ・ア・マルチミリオネア」のような、どうしても扇情的な、下世話な番組となる。まあ、品がないと言われながらもいまだに続いている警察リアリティ・ショウの「コップス」がいまだに編成の中核となっているようなチャンネルだから、それもわからないではない。
「誘惑の島」は、同棲している4組の未婚のカップルを男女別に別々の場所に滞在させ、男性は自分のパートナーではない女性から、女性はパートナーではない男性から誘惑を受ける。美男美女から誘われたカップルのそれぞれが、どれだけ自分の本当のパートナーに操を立て、浮気しないでいられるかを見物するという、まったく下世話な番組である。実はこの番組、昨年、CBSが「ビッグ・ブラザー」を放送している時に参加者を募っていた。その時は新手の勝ち抜きゲームかと思っていたが、どうやらそうではないようだ。
番組に登場する4組のカップルは、それぞれが一緒に暮らし始めてそれなりの年月が経ったカップルである。もちろん、ただ面白そうだからと参加しているカップルもいるが、そろそろお互いに自分のパートナーともっと深い関係 (つまり結婚) に進むか、あるいは関係を清算して次の相手を見つけた方がいいのかを悩み始めている時期である。つまり、この番組に参加して、自分のパートナーが浮気もせず、自分に対して操を立てるようなら、相手は真面目に自分のことを、引いては将来のことも考えていると判断できる。南方の島でただで2週間のヴァカンスもとれ、その上相手の本心も確認できるなら、願ったり叶ったりではないか。まあ、番組に参加したカップルの心情を代弁すると、このようになるわけだ。
そういう番組の発想はともかく、ゲーム?のルールが今一つ込み入っててわかりにくいのは、大きなマイナス材料だ。大まかな内容は上記に書いた通りなのだが、それ以外にも小さな取り決め事がやたらと多い。例えば、島に着いた4組のカップルの前に彼らを誘惑するシングルの男女26人が紹介される場面では、既にその時点で、一番魅力的な人物を男女一人ずつ排除できる。登場した次の瞬間にはもう画面から去らなければならない人物を用意してどうするの、と思ってしまう。
さらに、カップルはそれぞれ同じ色のビーズのネックレスをしているのだが、カップルのそれぞれが、自分のパートナーに近寄って欲しくないシングル、つまり、パートナーが一番惹かれそうな異性を、シングルス軍団の中から選出する。ふうん、で、そいつもやっぱり排除、と思ったら、そういうことはなく、選ばれた奴はただ、その特定のパートナーとはデートできないという仕組みで、それも夜になったら解除され、後はどうするかは本人の自由ということであるらしい。だったらそんなルール無用なんじゃない?と、これまたなんでこんなルールを作ってしまったのか理解に苦しむ。
しかしこの番組で最大の失敗は、4組のカップルにあまり魅力がないことだろうか。まあ水準はクリアしてるんだろうが、それ以上には見えない。やはり「サヴァイヴァー」の方がうまい人選をしてると思う。本心を言うと、彼らが番組のせいで別れようと逆に結びつきを強くしようと、はたまた番組に登場したシングルの誘惑者とできちゃおうと、私にとってはそんなことどうでもいい。しかし主人公とでも言うべきカップルに感情移入できなければ、番組自体が成功しないのは、火を見るより明らかだ。
と考えながら見ていたら、段々カップル同士の間で虚々実々の駆け引きが始まっているのが見てとれる。特に見物はイトーシーとタヒードのカップルで、このカップル、実はイトーシーはここら辺で落ち着きたいと思っているのだが、タヒードは浮気の前歴もあり、まだシングル時代を楽しみたいと思っている。つまり、イトーシーはタヒードに心を決めてもらいたいと思っているのだが、タヒードは純粋に楽しみにやって来たのがありあり。色気あるシングルの女性陣ににやけるタヒードに、イトーシーの顔は既に引きつり気味。
結局プレミアの最後は、明日からの自分のパートナー以外とのデートをどうしようかと、 各自がそれぞれの思惑を胸に部屋に戻っていくところで終わる。タヒードの心が他の女性とのアヴァンチュールに傾いているのを見てとったイトーシーの心は既に平衡を欠いており、一人波打ち際でぼろぼろと泣き始める。彼は彼を最も愛しているのが私ということを知らないのよ、と泣きじゃくるイトーシーに対し、他の女性陣は慰める術を知らない。彼らはこれからどうなるのか。なんとなく面白くなってきた。
ところが、こちらが、へえ、この番組もしかしたら面白くなるかも、と思った矢先の翌日、この、番組を最も面白くしていると思われるイトーシーとタヒードのカップルに既に子供がいることが番組撮影中にわかり、虚偽の申告をしたかどで、二人は撮影途中で番組から降ろされ、帰されちゃったという話が報道された。なんだ、これ。このタイミング。プレミアが放送された直後。どう見ても話題作りのために見計らったとしか思えない。しかもこの二人は最も興味を引くペアだった。その二人が途中からいなくなっちゃうわけ? 発表によると、番組の何回目かの放送に二人が追放されるシーンも収められているらしい。とにかく、ありとあらゆるアクシデントを番組のために利用することを忘れないこのハイエナ魂。さすがFOXである。あるいはもしかして最初から全部仕組まれた大ヤラセか?
しかしここでFOXが多分予想もしなかっただろうことには、この話が報道された直後、「誘惑の島」の放送を見合わせるというFOXの系列局が現れたのだ。この理由がまったくまたアメリカらしいのだが、一般的なアメリカの指標から言うと、家庭というものは生活の核となるものであり、何にもまして重要なものである。それなのにイトーシーとタヒードに子供がいるということになると、番組は親を別れさせ、引いては家庭を崩壊させ、子供を不幸にするものとなりうる。そういうものを放送するわけにはいかないというのだ。
‥‥‥‥
まあ、アメリカだけじゃなく日本だってそうだろうとは思うが、時々こういう似非ヒューマニズムまがいの発言を堂々とする輩がいて困る。本気で言っているのかと思うのだが、冗談でもないらしい。しかし本気で言っているとしたら、そのことこそ問題だと思うのだが、そういう奴等を相手にしてもしょうがないから、まあ、ほっておく。さらに問題はそれだけに留まらず、アメリカの放送業務一般を統率する政府組織FCC (連邦通信委員会) の委員が、FOXの他の子供も見る番組でこの番組の宣伝をすることについて懸念を表明、FOXはこれを受けて、「シンプソンズ」や「マルコム・イン・ザ・ミドル」等の家庭向け番組内では「誘惑の島」の宣伝は行わないことを約束した。まったく不毛な展開である。
しかしこういったスキャンダラスな展開こそFOXのリアリティ・ショウの十八番であり、この番組は私にまさしく昨年の「フー・ウォンツ・トゥ・メアリ・ア・マルチミリオネア」を思い出させてくれた。この不毛さ、この下劣さ、愚劣さ、下世話さ、 えげつなさこそFOXリアリティ・ショウの真骨頂というものであり、その点では「誘惑の島」は見事に期待に応えていると言える。まったく、たまらんよな、昨年、「マルチミリオネア」のスキャンダル騒ぎの後、もうこの手のリアリティ・ショウは製作しないと発表した舌の根も乾かないうちに発言を撤回し、昨秋「ボストン・パブリック」、「ダーク・エンジェル」と久し振りに見応えのあるドラマを編成したというのに、新年早々編成する番組がこれか。結局三つ子の魂百までというか、そう簡単に本質は変わらないものと見える。さて‥‥と、「誘惑の島」、それじゃあ来週もまた見てみようかな。あ、そうそう、言い忘れたが、 ホストのマーク・L・ウォールバーグは、俳優のマーク・ウォールバーグとはまったくの別人である。
追記(2001年2月):
「誘惑の島」はこのスキャンダラスな展開が受け、瞬く間に今冬のFOXの最大のヒット番組になってしまった。「X-ファイル」よりも、「シンプソンズ」よりも、「アリーmyラブ」よりも、「マルコム」よりも、「ダーク・エンジェル」よりも、「ボストン・パブリック」よりも、「誘惑の島」の方が視聴率が高いのは解せんというか、ちとまずいんじゃないのという気がしないでもないが、まあ、確かに人の不幸を見て楽しみたい、というようなゴシップ的な面白さは提供してくれた。 そしてその最終回は、期せずしてABCの「ザ・モール」最終回の直後となってしまった。8時からは「ザ・モール」の最終回を見て、9時からはチャンネルを変えて「誘惑の島」の最終回である。ああ忙しい。
さて、最終回はイトーシーとタヒードを除いてカップルが一組ずつホストのウォールバーグと対面して、今回の体験を省みて、二人が今後もつきあっていくか、それとも別れるかを決心するというものであった。我々視聴者の最大の興味は、果たして誰が浮気して、どのカップルが別れることになったかというものであったのだが、実はその点では少し肩透かしであった。というのも、カメラは深夜のプライヴェイトな時間まではとらえてないから、本当に誰かが誰かとベッドを共にしたかなんて結局わからないし、その上、残ったカップルはすべてお互いに多少の脱線はあったけれども、許し合って今後ともつきあい続けるということに落ち着いてしまったからだ。
なんだ、そんなの。面白くない。あんたらアヴァンチュールを求めてやってきたんじゃないのか。せめて一組くらい大喧嘩して、てめえなんかと別れてやると啖呵を切って、売り言葉に買い言葉、最後は乱闘になって収拾がつかなくなる、くらいの状況を期待していたのに。番組製作者も、一組くらいは別れて欲しかったというのが本音ではなかろうか。まあ、それなりにエモーションが高まった告白があったり、思わず涙がこぼれたりと、見せ場がないわけではなかったのだが。
私にとっては肩透かしに終わった「誘惑の島」であるが、とにかく視聴率は高かった。おかげでFOXは性懲りもなく、また「誘惑の島」の第2弾を製作することを発表している。ABCの「ザ・モール」も第2弾製作が発表になってるし、CBSの「サヴァイヴァーII」は、ここ数年敵なしだったNBCが誇る最強シットコム「フレンズ」を裏番組に回し、連続して撃破している。アメリカのリアリティ・ショウ・ブームはまだまだ続きそうだ。
追記 (2001年4月):
「サヴァイヴァー」に出演したステイシーが、プロデューサーのマーク・バーネットが自分を早くに追放するよう裏で手を回したということで番組を相手取って訴えたことは、今年早々の話題となった。そして3月終わり、今度はついにというかやはりというか、この「誘惑の島」で最も話題になった二人、イトーシーとタヒードが番組を訴えた。上に書いた通り、彼らは子供がいることを隠して番組に応募したということで番組収録途中に降ろされて帰されたのだが、実は番組製作者は事前にそのことを知っており、その上で番組を面白くするためにわざわざ彼らを参加させ、わざと途中で失格させたというのだ。
うーん、大いにありそうな話に見える。プロデューサーの最大の眼目はいかに番組を面白くするかというだから、少しくらいあくどいことなら平気の平左でやりそうだ。なんでもイトーシーとタヒードは面接の時に子供はいるかと訊かれ、素直にいると答えたのだが、プロデューサーにその答えは間違っていると言われ、いないということにさせられたのだそうだ。さてさてどちらの言い分が正しいのか。「サヴァイヴァー」のステイシーの場合はあまり勝ち目はなさそうに見えるが、こちらは結構もつれそうに見える。
とにかくこういった訴訟沙汰が続くのは、とかく視聴率目当てにあくどく、どんどんエスカレートしていく最近のリアリティ・ショウ関係の問題を如実に物語っていると言える。番組が参加者に対して要求するものが大きくなればなるほど、参加者の不満や鬱屈も溜まる。ちょっとした事で番組が訴えられる可能性も増大するだろう。しかし今年、さらに内容が強烈になったリアリティ・ショウが大挙して待機中である。果たして今年のリアリティ・ショウ戦線、どうなることやら‥‥
