ケーブル・チャンネルのブラヴォーは基本的にリアリティ・ショウ主体の編成をしている。しかも素人集団に密着する扇情型の番組が多い。そういう番組が一つ二つくらいならたまに暇潰し的に見てみようかなと思わないこともないと思うが、編成されているすべての番組がこのようなものだと、飽きる。というか嫌悪感が先に立って、チャンネルを合わせようという気すらなくなる。
現在放送されているこの種のリアリティ・ショウで最も人気のあるのが「ザ・リアル・ハウスワイヴズ・オブ‥‥ (The Real Housewives of...)」フランチャイズで、現在「O.C. (オレンジ・カウンティ)」、「ニューヨーク・シティ」、「ニュージャージー」、「ワシントンD.C.」、「ビヴァリー・ヒルズ」、「ダラス」、「マイアミ」、「メルボルン」、「チェシャ」等、国外でも製作されている。さらにこれらの番組から派生したスピンオフ番組もあって、現在ではどのくらい関係番組があるか把握できない。正直言って勝ち抜きクッキング・コンペティションの「トップ・シェフ (Top Chef)」がなかったら、現在ではまず見ることはないだろうと思うチャンネルだ。
一方ブラヴォーは2014年、「ガールフレンズ・ガイド・トゥ・ディヴォース (Girlfriends' Guide to Divorce)」で初めてドラマにも手を出した。「ガールフレンド‥‥」は、FOXの「ハウス (House)」に出演していたリサ・エデルスタインが主演のトレンディ系のドラマで、これが結構人気になったものだから、今回「インポスターズ」が製作されたものと思われる。
インポスターとは、身分を偽り、他人のふりをする者、要するに詐欺師だ。エイヴァ、またはサフロン、またはアリス、本当の名をマディは、素性を詐称して赤の他人に成りすまし、結婚までこぎつけ、その後、相手の財産を根こそぎ持っていく。通常の結婚詐欺は結婚をちらつかせて貢がせるというものがほとんどだが、マディはそんな悠長なことはしない。父と母とタッグを組み、事前調査はおさおさ怠りなく、完全な包囲網を敷いて、ある日、銀行にある預金から家の金庫に保管してある貴重品まで、根こそぎかっさらっていく。
出会いから結婚まで仕組むわけだから、どんな電撃結婚でも少なくとも数か月から半年はかかる。しかし念入りに調査と仕込みを行っているから、失敗の確率は小さい。御曹司のエズラはともかくリチャードは特に金を持っているようにも見えなかったから、金そのものよりも成功する確率を第一に置いているようにも見える。あるいはなんか他の理由があるのかもしれない。ジュールズの結婚相手のアリスに至っては、レズビアン・カップルを演じていた。
エズラをまんまと騙した後、マディのチームは次のカモに接触する。しかしマディはそこで本気で惚れる相手に出会ってしまう。また、失うものはないとマディを追うエズラとリチャードは、自分たちにも詐欺師の素質があることに気づくという展開。テンポはスロウだが、結構緻密にできてて目が離せない。
マディの父を演じるブライアン・ベンベン以外はほとんど初めて見る。しかしマディに扮するインバー・ラヴィは確かに美形でキッチュさも併せ持っており、こういう女性に言い寄られたら、騙される男は多そうだ。角度によっては現在CBSの「スコーピオン (Scorpion)」に出演中のキャサリン・マクフィーにかなり感じが似ている。現在FOXがリメイク放送中の「プリズン・ブレイク (Prison Break)」にも準レギュラー出演中であり、ブレイク寸前だ。インバー・ラヴィというなかなか珍しい名はイスラエルの名前で、「ワンダーウーマン (Wonder Woman)」を演じるガル・ガドットも、やはりイスラエル出身のエキゾティックな響きの名前を持っており、共に耳に残る。
全エピソードに登場するわけではないが、レギュラー陣に勝るとも劣らぬ印象を残すのが、ウマ・サーマンだ。どうやらこの詐欺計画に大きく関係しているようだが、実はよくわからない。いきなりバーで大立ち回りを演じるという、「キル・ビル (Kill Bill)」を彷彿とさせるアクションというか、切れ具合を見せる。実は特に興味があるわけではなかった「インポスターズ」を見たいと思ったのも、サーマンが出ているティーザーを見たからだ。それなのにサーマンが出てくるのは、番組第3回以降からなのだった。しかし出てきた途端番組の雰囲気をコン・ゲーム・ドラマからバッド・ガール・アクションへと変えるオーラは、さすがと言える。