ハイワイヤ・ライヴ・イン・タイムズ・スクエア・ウィズ・ニック・ワレンダ (Highwire Live in Times Square with Nik Wallenda) 

放送局: ABC 

プレミア放送日: 6/23/2019 (Sun) 20:00-22:00 

製作: ディック・クラーク・プロダクションズ 

製作総指揮: ニック・ワレンダ 

実況: マイケル・ストレイハン、エリン・アンドリュウズ 

出演: ニック・ワレンダ、リアナ・ワレンダ 

 

内容: ハイワイヤ・アーティストのニック・ワレンダが、妹のリアナと共に地上25階の高さのタイムズ・スクエア上空を綱渡りで横断する。 


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Highwire Live in Times Square with Nik Wallenda


ハイワイヤ・ライヴ・イン・タイムズ・スクエア・ウィズ・ニック・ワレンダ  ★★1/2

ハイワイヤ、いわゆる綱渡りを生業としているパフォーマンス・アーティスト一家のワレンダ家、特に当主のニック・ワレンダは、これまでにもナイアガラの滝グランド・キャニオン等をハイワイヤで渡り、それをABCやディスカバリーが生中継してきた。今回、そのニックと、妹のリアナが挑戦するのが、ミューヨークの観光名所、タイムズ・スクエアの上空をハイワイヤで横断するというものだ。 

  

ニックの祖父カールは、かつてプエルト・リコのビル街で同様にハイワイヤ横断を試み、失敗して落ちて死亡したという痛ましい事故を起こしている。ニックはこれを潔しとせず、後に自分もまったく同じハイワイヤに挑戦し、今度は無事成功させた。今回のタイムズ・スクエアのハイワイヤは、印象としてはその時の舞台装置設定にも近い。さらにグレイドップさせたハイワイヤに挑戦したいという、この種のパフォーマンス・アーティストの性みたいなものを感じる。 

  

一方、視聴者も段々ハイワイヤに慣れてきて、単に高い所や長い距離や名所を横断するというだけでは興味を持ちにくくなってきた。要するにあれでしょ、場所変えて同じことするだけでしょ、というわけだ。 

 

無論それだけじゃないことは、よく考えればわかる。場所が変われば気候、風、温度、湿度等も当然変わってくる。今回は24時間眠らないタイムズ・スクエアでもあり、パフォーマンスは夜行われるが、昼か夜かでも環境はかなり異なるだろうし、下で見守る観衆の多寡ですら、パフォーマンスのできに関係してくるものと思われる。どんなに入念に準備しても、なんらかのハプニングはつきものだろう。 

 

さらに今回ニックは、単独行ではなく、妹のリアナも同時に (実際には時間差があるが) 向こう側から渡り出し、中央で綱渡りをしながら交錯するという新機軸を持ち込んだ。 

 

リアナというと、数年前に、何人もの人間が同時に数本のワイヤ上で綱渡りをするモブ・ハイワイヤ (とでもいうのだろうか) で失敗し、彼女も落ちて大怪我を負った事件があった。ニックも同じパフォーマンスをしていたが、彼は綱にぶら下がって無事だった。リアナは、ハイワイヤに挑戦するのはその時以来だという。トラウマになっていなくていいのだろうか。 

 

実は前回、ニックがグランド・キャニオンのハイワイヤを成功させた時、次はタイムズ・スクエアに挑戦したいと既に言っていた。ただしその時言っていたのは、正確にはタイムズ・スクエアではなく、マンハッタンを代表する2大ビルであるクライスラー・ビルとエンパイア・ステイト・ビルの間をハイワイヤで挑戦したいみたいなことを言っていた。 

 

34丁目の地上100階のエンパイア・ステイト・ビルと42丁目のクライスラー・ビルとで は、直線距離で1kmくらいある。二つのビルの間には、遮るような高いビルはないから、ワイヤを渡そうとすればできない相談ではないだろうが、さすがにそれを許可する人間はいないだろう。グランド・キャニオンを渡った時、峡谷の高さがほぼエンパイア・ステイト・ビルの高さと同じ、なんて情報があったから、だったら実際にエンパイア・ステイトも渡れると考えたとしても不思議はない。 

 

いずれにしても、それで今回はタイムズ・スクエアのビルの間を渡るということにあいなったが、それでも、高さは地上25階、距離にして400mほどある。さらに今回は、命綱の着用が義務づけられた。ワレンダは、ナイアガラでも命綱をつけて渡り、これを潔しとせずグランド・キャニオンでは命綱をつけずに渡った。しかし、タイムズ・スクエアを命綱なしで渡ることには、さすがに許可が出なかった。当然だろう。もし万一失敗して落ちた場合、下はアスファルトだ。まず助からない。その時に責められるのは、失敗した本人ではなく、許可を出した市側、端的にデブラジオ市長になるのは明らかだ。どう考えたって許可しないだろう。 

 

ただし今回は一人だけではなく、妹のリアナとの同時パフォーマンスで、ワイヤの両側からスタートした二人は、中央で一瞬交錯する。その時、リアナはワイヤ上に屈み込み、ニックがその上を跨ぐ。その一瞬、ニックは頭上から吊り下がっているリアナの命綱を外す。さもなければリアナの上を越していけない。その時だけは、少なくともリアナは完全に無防備の状態になった。確かにそうなると、今ここで風が吹いたら、とか、なんかの拍子にワイヤが大きく揺れたら、とか考えて、冷やりとした。これはやはり命綱なしだと命がいくらあっても足りないだろうと思わせた。 

 

その後リアナは、そこから立ちがるのにちょっともたついたものの、その後は安定して、ニック共々向こう側まで渡りきった。確かにこんなことができるパフォーマンス・アーティストは、そんなにはいないだろう。それでも、命綱があることによるいくらかの緊張感の減殺をどのようにしてなくして演出するかが、今後の同様のパフォーマンスの課題になると思われる。 

 

ところで、このパフォーマンス、早くから喧伝されており、私も知っていた。ということは、実際にこのパフォーマンスを見に行こうと思えば行けた。そうやって耐久パフォーマンス・アーティストのデイヴィッド・ブレインの逆さ吊りを見に行ったこともある。ところが今回は、なぜだか見に行こうという発想がそもそもの最初からなかった。後でそういえば、これ、生で見ようと思えば見れたなと気づいた。 

 

これは現在、いつ行っても観光客で人がうじゃうじゃいるタイムズ・スクエアに近づきたくないとう無意識の拒否感が働いたからではないかと、今になって思う。ほとんどの人間が観光客で、立ち止まって写真撮ってばかりいて、真っ直ぐ歩くこともままならないタイムズ・スクエアは、多くのニューヨーカーは、大晦日以外は率先して避ける場所なのだ。 

 


 











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