Skywire Live With Nik Wallenda   スカイワイヤ・ライヴ・ウィズ・ニック・ワレンダ 

放送局: ディスカバリー 

プレミア放送日: 6/23/2013 (Sun) 20:00-22:20 

製作: ピーコック・プロダクションズ 

製作総指揮: ニック・ワレンダ 

実況: ナタリー・モラレス、ウィリー・ガイスト 

出演: ニック・ワレンダ 

  

内容: 綱渡りアーティストのニック・ワレンダが、グランド・キャニオンの峡谷を命綱なしで渡る。


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Skywire Live With Nik Wallenda


スカイワイヤ・ライヴ・ウィズ・ニック・ワレンダ   ★★★

ハイワイヤ・アーティストのニック・ワレンダによる昨年のナイアガラの滝の綱渡りを中継した「メガスタンツ (Megastunts)」は、無事渡り切ったかどうかはともかく、正直言ってイヴェントとして失敗だったのは、ワレンダ自身が誰よりもよく理解しているだろう。当局がどうしても首を縦に振らなかったために、命綱着用を条件として挑戦せざるを得なかった ナイアガラの滝のハイワイヤは、結局そのエキサイトメントの多くは減殺され、ワレンダ自身、詐欺という誹りを甘んじて受けざるを得なかった。 

  

この種のイヴェントが命をかけることにそのエキサイトメントとイヴェント性を負っている以上、やはり命綱着用は、イヴェントとしてはご法度だ。芸としての技 術を楽しむ空中ブランコとハイワイヤでは、目的も手段も違うと言わざるを得ない。空中ブランコをネットなしでやられたら、やる方も見る方も委縮してとても じゃないが芸として成立しないと思うが、ハイワイヤを命綱着用でやられても、正直言って見る方は退屈なだけだ。30分とか1時間とか、ただ綱の上をするすると歩いているのを見るだけなのだ。そこに落ちたら死という緊張感がなければ、見る方の集中力は持続しまい。 

  

先頃からBBCアメリカで「デインジャーマン: ジ・インクレディブル・ミスター・グッドウィン (Dangerman: The Incredible Mr. Goodwin)」なる番組が始まっていて、番組主人公のジョナサン・グッドウィンもまた様々な耐久スタントや荒技、マジック、力技に挑戦している。高層ビルから片手の指2本ずつだけでぶら下がったりなんてことをやるのだが、そこに命綱があったら、興味が半減してしまうことは言うまでもない。 

  

この手の耐久スタントもので第一人者と言えるデイヴィッド・ブレインが逆さ吊り記録「ダイヴ・オブ・デス (Dive of Death)」に挑戦した時、1時間に何分という割り合いで頭を持ち上げてもらっており、それを詐欺紛い呼ばわりされていたことを、ワレンダが知らないわけはないだろう。連続逆さ吊り記録を唱えるならば本当に連続で逆さに吊られて欲しいし、ハイワイヤをやるならば、命綱は着用しないで欲しい。人に見せる芸として提出する以上、それこそが根本、要なのだ。 

  

ワレンダがナイアガラの滝での命綱着用に、内心忸怩たるものを感じていたことは明らかだ。その汚名挽回の新しいイヴェントとして選んだのが、グランド・キャニオンのハイワイヤだ。もちろん今回は命綱なしだ。 

 

私はナイアガラの滝は未経験だが、 グランド・キャニオンなら旅行したことがある。グランド・キャニオンとエンパイア・ステイト・ビルは、私がアメリカに旅行に来た人に薦める二大景勝地だ。 エンパイアから眺めるマンハッタンのビル群、およびグランド・キャニオンの雄大な自然の眺めはまさに圧巻で、人工と自然の極北の偉大さが実感できる。 

 

その峡谷の上をハイワイヤで渡るのだ。絵にならないわけがない。地表までの高さは1,500ftと、ほぼエンパイア・ステイト・ビルの高さに匹敵し、向こう側までの距離は1,400ftとほぼ同じ距離がある。無事に行けばだいたい30分くらいで渡り終えられるだろうか。落ちればむろん助かる見込みは万に一つもない。 

 

ナイアガラのハイワイヤはネットワークのABCが中継したが、今回はケーブルのディスカバリーが中継する。ディスカバリーはNBC傘下であり、番組実況を担当するのは、NBCの朝の人気ニューズ/トーク・ショウ「トゥデイ (Today)」のナタリー・モラレスとウィリー・ガイストだ。「ナイアガラ」は、ABCで「トゥデイ」のライヴァル番組として知られる「グッド・モーニング・アメリカ (Good Morning America: GMA)」のジョシュ・エリオット、サム・チャンピオン、ハナ・ストーム (彼女は正GMAホストではない) が実況を担当しており、なんかネットワーク間のライヴァル意識が窺われる。 

 

さて、いよいよワレンダがロープの上を渡り始める。ヘリコプタからの空撮は予想通り絵になる。ナイアガラの時は周りが滝の音で煩く、いったん渡り始めたワレンダとはそれほど交信しなかった。あまり大声で呼びかけると、気が散って集中を乱しかねない。 

 

その点今回はロープ上のワレンダと無線でかなり会話している。それはともかく、意外だったのはワレンダがほとんど休みなしに神様ありがとうとか、神よあなたは偉大だみたいなことを呟きながら歩みを進めることで、先入観ではこれらの冒険家は皆、無信心者としか思ってなかったのだが、どうやら逆のようだ。死とすれすれの冒険に挑むからこそ、神も近くに感じるのだろう。特にハイワイヤのように、一瞬で終わるのではなく、30分、一時間という比較的長時間の緊張を維持しなければならないようなスタントでは、意識に夾雑物が入る可能性が高い。そのため、常に神への感謝の気持ちを捧げることによって意識のクリアさを保つ、みたいな効用があるに違いない。 

 

とはいえ、渡り始める前に神への感謝を捧げる祈りを司ったのは、アメリカでは人気のあるTV伝導家としてつとに知られているジョエル・オスティーンだ。何が胡散くさいかって、私の意見ではこのような宗教家より胡散くさいものはない。アメリカのケーブル・チャンネルには宗教色の強い、このような伝道師の説教を一日中放送しているチャンネルがあるが、たまたまチャンネル・サーフしていてこのようなチャンネルに当たったりすると、高い確率でオスティーンが人々に説教していたりする。それを人々が涙を流しながら聞いていたりするのを見ると、私のような非信心者は怖気がして即座にチャンネルを換えるしかない。そのオスティーンが、ロープを渡り始める前のワレンダとその家族と共に神への祈りを捧げている。 

 

ロープの上は予想した以上に風が強かったようで、ワレンダが神の名を始終口にしていたのは、これはマジでヤバいと思ったからかもしれない。途中でバランスを保 つ棒を持ったままロープの上で腰を落とすシーンが何度かあった。一見その方がもっと危険にも見えたが、そのくらい風が吹いていたのだろう。 

 

このように途中ひやりとしたシーンが何か所かあったが、ワレンダはそれでも23分弱で無事峡谷を渡り切った。次はニューヨークはマンハッタンで、42丁目のクライスラー・ビルと34丁 目のエンパイア・ステイト・ビルの間に綱を渡して歩くことに挑戦するとかしないとか言っている。しかしこの二つの歴史的なビルの間には、パーク・アヴェ ニューとレキシントン・アヴェニューがあり、多くのビルの上を越えていかなければならない。しかも、できれば高低差を揃えるのではなく、やるならば屋上から屋上へと歩いて行ってもらいたい。それだとたぶん上から下に降りるのではなく、下から上に、つまりクライスラー・ビルからエンパイア・ステイト・ビルに 向かって歩く方がやりやすいと思うのだが、どうだろうか。いずれにしても、NY市長の許可が降りる可能性はまずないと思う。 











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