Carter


カーター  (2022年9月)

実はこの作品、見終わっていない。家見の特権というか怠惰なところというか、自由に途中で視聴を止めることができる。私の場合、全篇1シーン1ショットの長回しアクションという惹句に乗せられて見始めたまではよかったが、美学というよりもスプラッタという血飛沫の多さや、あまりにも止まらなさ過ぎるカメラの動きに段々目がチカチカしてきた。 

 

もちろんスプラッタはスプラッタという美学でもあり、アクション見たさに見た作品でアクションが多過ぎるという苦情は何をか言わんやであるが、しかし目の奥がズキズキし始めてきて、ちょうどキリのいいところでリモートに手を伸ばし、ポーズにしてひと息つく。 

 

全篇1シーン1ショット・アクションを撮ってみようとした意気込みは買う。「1917 (1917)」「バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡) (Birdman)」も、人を惹きつける最大の理由はそれだし、実際面白い理由もそこにある。 

 

とはいえ「カーター」のカメラの動きは、「1917」や「バードマン」の比ではない。もうのべつ幕なしにカメラが縦横無尽に動き回る。これが数分、もしくは1シークエンスくらいならめっぽう楽しいと思うが、エンドレスでやられると、段々こちらの感覚が麻痺してくるというか、もしくは頭が痛くなってくる。 

 

こういうカメラの動きができるのはCGを多用しているからで、むろん「1917」も「バードマン」もCGを利用しているが、ここまでCGだらけだと、単純にヴィデオゲームと変わらない。作品を見ているというよりも、CG技術を見せられているという感触の方が強く、感情移入できない。段々見ていて辛くなる。 

 

また冒頭の方の、ヤクザの描き方も気になった。やはり日本人としての立場から言うと、ヘンにスポーティなアンダーショーツを穿いているヤクザなんてヤクザに見えないし、胸に刺青彫っているのも承認し難い。ヤクザなのだ。ここはふんどし締めて背中に紋紋背負ってなんぼの世界じゃなかろうか。まだ韓国人が撮っているからと逃げ道はあるかもしれないが、しかし胸に刺青なんて、そりゃあんたスーパーヒーローがやることであって、こんなこと本当にヤクザがやったら即刻指詰めて破門、というか、笑いの対象にしかなるまいと思う。 

 

そういう問題点があっても、それでもこれを映画館で見ているなら最後まで付き合ったと思うが、そこが家見の我儘さ、ついリモートに手を伸ばしてしまったのだった。あるいは、もしかしたら劇場のスクリーンでこれを見ていたら、逆に家見よりも早い時点で劇場を後にしていたかもしれない。 

 


 











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男 (チュウォン) がホテルの一室で目覚めると、そこは一面血の海だったが、男にはなんの記憶もなかった。そこへ何者かの集団が部屋を襲撃し、医者の居所を言うよう脅す。突然、男の耳の中で埋め込まれたレシーヴァーが作動し、女の声が、男の名はカーターで、もし生き延びたければ彼女の言うことを聞くよう告げる。ほとんど条件反射で部屋にいる者たちを倒して窓からジャンプして飛び込んだ隣りのビルはヤクザが集う浴場で、カーターは彼らを皆殺しにしてその場を逃れる‥‥ 


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