Snakes on a Plane   スネーク・フライト   (2006年8月)

ハワイで地元のギャングが検察官を殺したのを目撃したショーン (ネイサン・フィリップス) は、LAの裁判に目撃者として証人台に立つために、FBIのエージェント、フリン (サミュエル・L・ジャクソン) に護衛されてLAに発つ。しかしショーンを亡き者にするためには何事をも辞さないギャングは、機内に運び込まれたレイの箱の中に大量の毒蛇を忍び込ませ、ショーンだけでなく、乗客を皆殺しにしようとしていたのだ‥‥


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オリヴァー・ストーンの「ワールド・トレード・センター (WTC)」は既に始まっているんだが、自分でも見たいのか見たくないのかよくわからず、やはりどうも重い腰が上がらない。一方、新タイプのホラーとしてわりと注目されている「ディセント」も気になってしょうがなかったんだが、洞窟閉じ込められものという内容は、やはり「WTC」同様怖そうで、わざわざ自分から進んで閉所恐怖症とパニック・アタックを併発することもなかろうと思う。


で、他にオプションはないかと思って探して、面白そうかもと思ったのが、この「スネーク・フライト」だ。なんだ、結局、どれにしても今回は閉じ込められて怖い思いをする映画ばっかりだ。今回はそういう巡り合わせになっているならと、それならそれでこちらも腹をくくる。しかし、それでも、だったら、サミュエル・L・ジャクソンが出ていて、どこからどう見てもB級くさく、実はかなり笑えそうな「スネーク・フライト」に決める。


実際、飛行中の機内に蛇がうじゃうじゃ登場するというアイディアはB級としか言いようがなく、昔よく作られた、昆虫や動物が巨大化したお化け映画からほとんど遠くない位置にいるという感じだ。最も重要なプロットの一つのはずの蛇の機内持ち込みに関しても、レイの束用の箱の中に蛇を入れて持ち込むという手段はほとんどいい加減という印象しか受けず、ほとんど説得力はない。まるっきりインスペクションは入ってないようだし、あれだけの箱にしては蛇の方が多すぎるという気もする。第一、大型のパイソンはあの箱には収まるまい。これじゃ小学生だって納得しまい。わざわざレイの束をLAに運ぶという理由もよくわからない。売り物か?


こういうB級くささは、本編に入って最初の犠牲者が出るあたりから本気で炸裂する。トイレの中に入ってHを始めようとするカップルの頭上から毒蛇が垂れてきて、期待通りに女の子のおっぱいのぽっくんに噛みつく。その後、別の男が用をたそうとすると、便器の中でにょろにょろと機会を窺っている別の毒蛇がいる。当然そいつはパンツから引き出された男の一物めがけて飛びかかっていくわけだが、この辺は期待通りで存分に笑わせてくれる。


その後もいかにもB級という感じで話は進み、結構満足させてくれるが、ちょっと気になる点を挙げると、だいたい蛇がアタックする時は明らかにCGになって電光石火の早業で人間様に牙を立てる。もちろんアクションをよりエキサイティングにするためだろうが、物理的にありえないほど動きが速すぎると、今度はちょっと嘘くさくて興ざめになってしまう。また、毒蛇に咬まれた犠牲者があっという間に鬱血して死ぬのも気になった。そりゃショックやなんかで結構簡単に死ぬ時もあるだろうが、いくら猛毒を持っていたりしても、咬まれてすぐに死ぬ奴が多すぎる。そういう死体が機内に死屍累々という感じで横たわっている様はまるでゾンビ映画だ。いっそ彼らを生き返らせて、逃げ場のない場所でゾンビと生者が戦うという構図でもまるでかまわないのだがと思ったりもする。


私の田舎では毎年ハブに噛まれて死ぬやつが何人もいるが、だいたいは咬まれて即死というわけではなく、病院が近くになくて手当てが間に合わなかったり、頭に来てハブを殺してやろうと動き回って追いかけた挙げ句、毒が全身に回って死んでしまうという話がほとんどだった。つまり、毒蛇といえども咬まれれば即それは死を意味するわけではない。一方、それなのに作品の後半になると、今度は咬まれた奴を助けるために、地上で血清を探し求める奴が出てくる。最初は咬まれるとすぐ死ぬのに、後の方では長持ちすることに納得できる説明があるわけではない。ま、いわば作劇上の要請というやつか。


主演のサミュエル・L・ジャクソンはいかにもという感じではまっており、何も言うことはない。本人も楽しんでやったに違いない。意外な配役がフライト・アテンダントに扮するジュリアナ・マーギュリースで、たぶん、あんたが「ER」を辞めたのはこういう作品に出るためじゃなかったろうにと思ってしまう。こないだは「ザ・ソプラノズ」の最新シーズンで主演のジェイムズ・ガンドルフィーニと絡みの役をやっており、それなりに頑張ってはいるようだと思ってたが、こいつは意外だった。監督は「ファイナル・デスティネーション2」のデイヴィッド・エリスで、どうやらホラー演出家として定着しそうだ。


まるっきり話は変わるが、この映画のクレジットを調べようと思ってIMDBにアクセスしたら、この作品 (Snakes on a Plane) とほとんど同じタイトルを持つ「Snakes on a Train」という映画があった。ヴィデオ・スルーの今年販売の作品で、どう見てもわざと同時期に持ってきたとしか思えない。こちらは南米を走る列車の中で毒蛇が暴れ回るという内容らしい。列車止めればいいんじゃないのと思ったが、それが不可能な深い山の中の断崖絶壁に囲まれた場所だったりするのかもしれない。なんとなく気になってしまった。金出してまで見ようという気にはならないが、Sci-Fiチャンネルあたりが放送権買い取って放送してくれないかなあ。






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