ザ・マスクト・シンガー (The Masked Singer) 

放送局: FOX 

プレミア放送日: 1/2/2019 (Wed) 21:00-22:00 

製作: スマート・ドッグ・メディア、エンデモル・シャイン・ノース・アメリカ 

製作総指揮: クレイグ・プレスティス、イズィ・ピック・イバラ 

パネリスト: ロビン・シック、ジェニー・マッカーシー、ケン・ジョング、ニコール・シャージンジャー 

ホスト: ニック・キャノン 

 

内容: 12人のセレブリティがそれぞれマスクを被り、着ぐるみを着て完全に素性を隠して登場しての勝ち抜きシンギング・コンペティション。パネリストは誰が歌っているのかを予想する。毎回最後には観客投票で追放者を決め、マスクを脱いで誰だったかを明らかにする。 


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The Masked Singer


ザ・マスクト・シンガー  ★★1/2

元々歌系、それも勝ち抜き系コンペティションのリアリティ・ショウには目のない方だが、今回の「ザ・マスクト・シンガー」のギミックには唖然とした。なんとなれば番組に登場するコンテスタントは、一応セレブリティらしいのだが、それが全員着ぐるみを着てマスクを被り、素性を隠して歌うのだ。 

 

最初は、またFOXがトンデモ系のリアリティ・ショウを編成したな、ま、それこそFOXらしいといえばFOXらしいが、と思っていた。どう見てもこれ、キワモノ・リアリティだろ。セレブリティとはいっても2線級の、自称セレブだろう。どう考えても本物のセレブがわざわざ被りものして素性隠して人前で歌う必要なんかない。素顔で客を呼べるシンガーが、被りものなんかするわけがない。 

 

元々は韓国製のリアリティ・ショウのリメイクで、アメリカ版ではウサギ、モンスター、エイリアン、ライオン、クジャク、ハチ・オオガラス、ユニコーン、プードル、シカ・パイナップル、カバの12人が登場し、咽喉を披露する。 

 

とまあ最初はほとんど期待せず、どちらかというとシンギング・コンペティションというよりは怖いもの見たさで番組を見始めたのだが、そしたら、ところがどっこい、実はこれが結構レヴェル高い。もちろん客寄せ用としか思えない下手くそもいるが、皆そこそこ聞かせる。どうもそれぞれの素性のヒントを与える紹介によると、実際にキャリアのあるプロのシンガー、それもかなりの大物もいるようだ。そんな奴らが実際に出ているのか。 

 

どんなに被りものをしようとも、歌い出して、もしそれがキャリアのある大物ならばわからないわけがないと思いそうだが、ところが、これが結構わからない。喋る地声と歌声はかなり異なるし、番組内でシンガーに質問すると、ヴォイス・チェンジャーでいじった声で返答するので、参考にならない。聞き覚えのあるような歌声という気もするが、やっぱりわからないのだ。 

 

これは番組内のパネリストも同じなようで、最初は彼らも気軽な仕事のつもりでオファーを受けたのだろうが、実際に番組に出て歌を聞いてみると、誰が誰だかわからず、かなり混乱しているという印象を受けた。生まれてこの方ずっとアメリカに住んでいるアメリカ人でもわからないくらいだから、外国人である私がわかるわけがない。 

 

特にこれは番組の最初の方のエピソードに顕著で、例えば第1回で落ちたカバに扮したNFLプレイヤーのアントニー・ブラウンや、第2回で落ちたパイナップルのコメディアンのトミー・チョン等は、元々本人を知らないから、これはもう当て切れる可能性は皆無だ。 

 

一方でわかりやすいヒントや特徴のあるボディ・ラングウェッジから、当てやすいという場合もある。第3回で追放されたシカに扮したテリー・ブラッドショウは、歌声よりも挙措動作で何人ものパネリストに正体を当てられていた。因みにブラッドショウは、NBCのご老体乱心リアリティの「ベター・レイト・ザン・ネヴァー (Better Late Than Never)」に出ており、私も知ってはいたが、わからなかった。 

 

要するに、やはりただでさえプロのシンガーが出ていても誰だかわからないものを、素人に歌われてもまずほとんどわからない。番組が本当に面白くなるのは、当然うまいプロのシンガーが残って歌っているシーズンも後半以降になってからで、微妙に聞き覚えがあるような声なんだがいったい誰だったかと、こちらもマジで考えるようになってからだ。 

 

まさかラトーヤ・ジャクソンやドニー・オズモンド、グラディス・ナイトなんて大御所が本当に出ているとは思わなかったが、だからこそ追放が決まっていざマスクを脱いで、その下から見知った顔が現れた時の驚きは大きいものがある。 

 

ウサギの扮装で歌った元イン・シンクのジョーイ・ファトンなんて、元ボーイズ・バンドなんてヒントがあるものだから、もしかしたらとパネリストの一人であるジェニー・マッカーシーは、自分の夫の元ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックのドニー・ウォールバーグじゃないかと、電話してみて、出なかったから本気で怪しがっていた。 

 

そんなこんなで最後まで残って勝ったのは、モンスターに扮していたラッパーのT-ペイン。実は私はラッパーとしてのT-ペインはほとんど知らず、音楽中心のケーブル・チャンネルFuseで、様々な新規ビジネスをとらえるリアリティ・ショウの「T-ペインズ・スクール・オブ・ビジネス (T-Pain’s School of Business)」のホストとして何度か見たことがあるくらいだったのだが、さすがに歌もうまい。


その時T-ペインは、栄養豊富なインスタント・ラーメンを開発するというビジネスに取り組むエイジアンを訪れていた。こちらはインスタント・ラーメンというと反射的にお腹を満たすためだけのもので、食べ過ぎると栄養失調で鳥目になると思い込んでいるものだから、栄養満点のインスタント・ラーメンか、わりと目の付けどころいいかもと感心したので覚えている。いずれにしても、ラーメンはもうアメリカでも日常食だ。T-ペインはその後CWが放送した「アイハート・レディオ・ミュージック・アウォーズ (iHeartRadio Music Awards)」でもホストを担当していて、一時時の人という印象を受けた。 

 

マスクを被って歌うセレブは、基本、皆観客が自分のことを知らないで聴いているという、いわば初心の時の状況を今一度体験しているわけで、それぞれがわりとエモーショナルになっていた。彼らにとっても意外に得るものがある体験になったようだ。 

 


 








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