The Equalizer 2


イコライザー2  (2018年7月)

実は2014年公開の、デンゼル・ワシントン主演の前作の「イコライザー (The Equalizer)」を見ていない。ワシントンがロシアン・マフィアとのトラブルに巻き込まれたクロイ・グレイス・モレッツを助けるために奔走する「イコライザー」は、予告編を見た時に、これはワシントン版の「レオン (The Professional)」だな、アクション面白そーと思ったのは覚えているのに、なんで見てないのか。 

 

そう思って当時のその辺の鑑賞記を見てみたところ、公開した2014年9月は、月に3本しか映画を見ていない。それで思い出した。この時、私たち夫婦は何年振りかで日本に帰省していたのだった。それでもアメリカに戻ってきた直後ならまだ公開していたと思うが、その時はとにかく「クライム・ヒート(The Drop)」を何が何でも見たかったので、結果「イコライザー」は後回しになって見そびれた。  

 

それで今回、いきなり話がトルコを走る列車の中から始まるので、ちょっと意外に思う。「イコライザー」って、実は007かジェイソン・ボーン的な、世界を股にかけるスパイ・アクションだったのか。しかもイスラムの服に身を包むワシントン、実はムスリムの戦士だったとか。さらに住んでいるアメリカのボストンに帰ってきても、話は今度はベルギーのブリュッセルの殺人事件に飛ぶ。やっぱりワシントンってイコライザーと呼ばれるスーパーエージェントだったのか。 

 

という思い込みもやがて覆えされる。やはりワシントン=ロバート・マッコールはアメリカ、ボストン在住の、普段はリフトでタクシー業務をこなす一見一般市民だった。しかし元軍人であり、世の中に捨て置けない非道があると、立ち上がり正義の鉄槌を下す。はっきり言ってやってることは007やジェイソン・ボーンとあまり変わらないのだが、それでも立ち位置としては、スーパーヒーローやスーパーエージェントよりは、(やや) 平民寄りの男という設定だ。なんてったって普段生活しているアパートをちゃんと持っており、近所の知り合いと話も交わす。007やジェイソン・ボーンは、お隣りさんと天気や庭の手入れや壁の落書きの話なんかはしまい。 

 

とはいえ今回は、トルコでのオープニングに始まり、ブリュッセルでの殺人事件と、話が何やら大がかりだ。前回の敵はロシアン・マフィアだったが、今回の敵はCIA内部の裏切り者だ。ロシアン・マフィアも敵としては大きい方だと思うが、国家権力を後ろ盾にしているCIAエージェントの方が、やはり敵としてはより強力だろう。 

 

それで、いくらなんでも個人として活動し、ほぼ唯一の味方だったCIAのスーザンを失い、そのCIA内部の裏切り者を敵に回すマッコール、分が悪いと言うよりもほとんど勝ち目のない戦いだ。だいたい、どうやって武器を調達する? 相手は最新の武器使い放題だろうに。それでマッコールのとった作戦は、ハリケーンが近づいて住民が避難して人っ子一人いなくなったかつての自分が生まれ過ごした町に敵を呼び寄せ、一人一人倒していくというものだった。 

 

要するにかつての西部劇、あるいは時代劇のお約束のクライマックスと同じ展開だ。一対多で圧倒的不利な戦いである場合、こちらが勝てるほぼ唯一の策は、少なくとも地の利がある場所に相手を誘導することにある。 

 

近年、温暖化のおかげで地上のあらゆるところで天候不順になり、地域限定的にゲリラ豪雨や突発的強風が吹き荒れ、台風ハリケーンの上陸が頻発するようになった現在、いわゆる嵐の孤島的な、特に本格ミステリの常套的舞台設定が、現実に違和感なく受け入れられるようになってきた。作りごとではなく、雨風が吹き荒れる展開が、嘘臭くなくいかにも有り得そうに見える。その点だけは温暖化の恩恵かと思えるのだった。 

 

スーパーエージェントでもスーパーヒーローでもなく、地に足の着いた、地域に根ざした? 新しいタイプの「スーパー」ではないヒーロー、マッコール=イコライザー、次の活躍は果たしていかなるものか。 











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現在はリフトのドライヴァーとしてタクシー業務で生計を立てているロバート・マッコール (デンゼル・ワシントン) だったが、時に正義のために立ち上がって悪漢どもを叩きのめしていた。D.C.在住の旧知のブライアン (ビル・プルマン) とCIAエージェントのスーザン (メリッサ・レオ) のプラマー夫妻とはいまだに連絡を取り合っていたが、スーザンがブリュッセルでの殺人事件を調査中に殺害される。マッコールはCIAの元同僚のデイヴ・ヨーク (ペドロ・パスカル) と連絡をとり、CIA内部に裏切り者がいることを確信する‥‥ 


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