今春、近年のネットワーク番組としては最大のヒットになった「ロザンヌ (Roseanne)」が、主演のロザンヌ・バーの舌禍事件のせいで敢えなく瓦解した経緯については、既に書いた。残念な結果になったわけだが、本人の身から出た錆びであり、周りのキャストには可哀想だが、しょうがないだろうと思った。それを、ABCが、まさかクリエイター/主演なしで番組を続行させようとは、思ってもいなかった。
番組が長らく続く中で、キャストが替わるということはわりとある。他ならぬ「ロザンヌ」でも、コナー家の長女ベッキーを、アリシア・ゴランソンとサラ・チョーキという二人の女優が演じていたりする。最近ではFOXの「リーサル・ウェポン (Lethal Weapon)」で、主人公コンビの片割れだったクレイン・クロウフォードが所行不届きで番組をクビになり、物語の上では死んだことになって代わりにショーン・ウィリアム・スコットが抜擢されている。
とはいえ、「ロザンヌ」の場合、バーは番組クリエイターで主演だ。番組名はそもそも彼女の名を冠している。その彼女なくして新たに続編を作るって話を聞いた時は、さすがに本当かと思った。しかしそこは天下のネットワーク、金のなる木はむざむざ枯れさせないのだった。これが子供に夢を売るディズニー傘下のABCの判断ということに、一種納得する。それだけビジネスにシヴィアであってこそのコンテンツ・ビジネスなんだろう。
いざ、そのロザンヌなき後のコナー家を描く「コナーズ」が始まると、バーがいなくなったということだけではなく、死んだことになっていて驚く。無論バーがいないことは初めからこちらも承知しているわけだが、さすがに死んだことになっているとは思わなかった。どこかに雲隠れしたとか出奔したしたとかあるいは出家したとかもしかしたらさらわれていないとか、いない理由はいくらでも考えられ、ほとぼりが冷めた頃に現場に復帰する道は残しておくものだと思っていた。
そしたら、番組が始まると、出演者が皆沈んでいる。コメディの「コナーズ」がこんな始まり方でいいのかと思ったら、ロザンヌが死んだことが明らかになる。しかも交通事故とか病気とかではなく、よりにもよってドラッグのオーヴァードースによって死んだという。あのロザンヌが、実はドラッグ・アディクトだった。
「ロザンヌ」はこれまでにも社会問題を話に取り入れ、それをうまく料理して笑いに持っていくという展開が多くあった。番組が特に中南部のブルー・カラー層に人気があったのは、そういう身近な話題に視聴者が感情移入しやすかったからだ。しかし、さすがにロザンヌ本人がドラッグ・アディクトだったという設定は意外だった。それで死んだことにすることによって、ロザンヌが将来番組に復帰する可能性を完全になくしたことになる。ABCは本気なようだ。
いずれにしてもそのため「コナーズ」第1回は、ロザンヌ死去の痛手から立ち直ろうと必死なコナーズ家の面々を描き、シットコムのくせにほとんど笑えず、シリアスな展開になった。番組がコメディとして機能するのは第2回以降になるが、個人的な印象を言うと、やはりロザンヌがいるといないのとでは番組の肌触りが大きく違う、というか、端的に以前ほど笑えない。やはりロザンヌあっての番組だったのだなと思う。「コナーズ」が今後も続いていくかどうかは微妙なところで、1シーズンか、もしかしたら2シーズン行けるかもしれないが、それ以上は難しいんじゃないかと思う。
