The Biggest Loser: Couples   ザ・ビギスト・ルーザー: カップルス

放送局: NBC

プレミア放送日: 10/19/2004 (Tue) 20:00-21:30

第7シーズン・プレミア放送日: 1/6/2009 (Tue) 20:00-22:00

製作: ルビール、25/7プロダクションズ、3ボール・プロダクションズ、NBCユニバーサルTV

製作総指揮: ベン・シルヴァーマン、デイヴィッド・ブルーム、J.D.ロス

ホスト: キャロライン・レイ (第1-第3シーズン)、アリソン・スウィーニー (第4-第7シーズン)

トレーナー: ボブ・ハーパー、ジュリアン・マイケルズ


内容: 勝ち抜き減量リアリティ・ショウの第7シーズン。第7シーズンはペア (カップル) で減量に挑戦する。


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アメリカ人の多くが肥満というのは今では既に常識で、特に田舎にその割り合いが多い。国策によってなんとか肥満をなくそうというのが真剣に国会で議題として採り上げられる時代なのだ。法律によってすべてのレストランのメニューには栄養成分やカロリーを表記すべきなんて意見が真面目に議論されていたりする。


こういう時代を反映して、アメリカのTV界も数年前から続々と減量を主題とするリアリティ・ショウが出現している。特に2007年はこの種の番組が林立した、減量TV元年とも言える盛況を呈した。そしてその中でも最も登場が古く、人気があり、現在も続いているNBCの勝ち抜き形式の「ザ・ビギスト・ルーザー」こそ、減量リアリティ・ショウを代表する番組と言える。


「ビギスト・ルーザー」は2004年から放送が始まっており、だいたい半年に1クールの割り合いで新シーズンが製作放送されている。そのため新シーズンは既に第7シーズンを数える。番組の最初の3シーズンは、「サブリナ (Sabrina: The Teenage Witch)」で知られている自分も太めのキャロライン・レイがホスト (彼女は番組プロデューサーでもある) で、第4シーズンからはNBCのソープ・オペラ「デイズ・オブ・アウア・ライヴズ (Days of Our Lives)」で知られるアリソン・スウィーニーが代わってホストを担当している。


番組の趣旨は明快で、体重過多の参加者をビギスト・ルーザー・キャンプと呼ばれるカリフォルニアの施設に集め、徹底して食餌療法とエクササイズによって減量させるというもの。参加者は2グループに分かれ、それぞれに専属トレーナーがつき、その指導によって減量に挑む。毎回番組の最後には計量によって前回から落ちた体重が最も少ない者二人を選び、その二人のうちどちらかを参加者投票によって追放する。最後まで勝ち残った者、つまり最も減量に成功した優勝者の獲得賞金は25万ドル。


正直言って、自力では痩せきれない者がTV局に痩せる手伝いをしてもらった上、痩せたら金をもらえるというのは、参加者にとっては大いにおいしい話であり、毎回参加申し込みが殺到するというのも頷ける。また、毎回応募が殺到するほどアメリカにはデブが多いという証明でもある。


番組進行はシーズンによって、参加者を親子や夫婦、友人同士のペアにしたり、一度追放した参加者が残っている参加者のがんばりによってまた復活してきたりするなど、色々なマイナー・チェンジを施して視聴者を飽きさせないようにしている。この種の勝ち抜きリアリティには必須の、その回の追放を免れるイミュニティ (免除特権) を獲得するためのエクササイズ競争も毎回あって、参加者は巨体を揺さぶって死にそうになりながら凌ぎを削る。


実はこの番組、特に私が意識して見ている番組ではない。自分自身があまり体重の増減とは関係ないごく平均的なアジア人体型であるため、体重過多の人間の気持ちがまずよくわからないし、番組に感情移入して見ることが難しい。極論ではあるが、体重を減らしたいのなら食べなければいいんじゃない、と本心ではつい思ってしまう。


むろん私も少しくらいなら太ったり痩せたりしたことはある。これまでに私が最も太ったのは、20代の頃、親の住む田舎の、そのまた田舎の祖母の家のある、周囲を海に囲まれた老人ばかりが住む小さな島に夏休みで一週間ほど滞在した時だ。なんせやることがないし一緒につるむ同年代の人間もいない。海に囲まれているといってもスポーツみたいな水泳をするわけではなく、波打ち際で水と戯れて甲羅干しくらいしかしない。祖母は昔の人間だから朝が早く、私が不精して朝ゆっくりと起きてくると、既に食事の準備ができている。私が手伝おうとすると逆に嫌がられるので、朝起きたらメシ食ってそのまま砂浜に行ってうだうだと時間を潰す。


観光ガイドに必ず載っているわりと風光明媚なスポットの島だから、のんべんだらりと観光客気分を楽しもうと思うとできたりしてしまうのがよくない。朝の軽い海水浴から帰ってくると、今度は既に昼メシの時間で、メシを食って日中からビール片手に庭の木陰で持ってきたミステリを読む。気がついたらいつの間にかまどろんでいて、3時ぐらいからまた腹ごなしに海へ。帰ってきたらビールを飲みながら晩メシと、さすがにこれだと太らないわけがない。たった一週間でものの見事に3-4キロくらい太った。


前屈した時に自分のおなかが邪魔になると感じたのは、あとにも先にもこの時だけだ。たった一週間で自分の印象では見違えるくらいデブになって日焼けして真っ黒になって東京に戻ったら、その時付き合っていた今の女房は、私の変わり具合を見て絶句していた。たった数キロで周囲にそういう印象を与えるわけだから、太っている人間が痩せて見せたいと思うのはわからないわけではない。一方、私が太ったとはいっても、東京に帰って平時の生活に戻ったら、またすぐ元の体重に戻った。だから、太った時の気持ちが少しはわかるといっても、なぜ痩せられないかは、正直に言うと私にはわからない。


つまり、私自身には体重をコントロールする必要がほとんどないため、減量リアリティ・ショウに特に興味があるわけではない。私はメシは作るのも食べるのも結構好きだが、どんなにおなかいっぱい食べても、甘いものやアルコール、間食をとり過ぎなければ太らないだろうと思う。第一、その手のものはどうしてもある程度摂取するとそれ以上は手が出ない。休暇時のような特別時は別として、普段は身体が要求しないから食べないし太らない。ストレスがかかると食欲がなくなって痩せるから、むしろ無理しても食べる。ところが、どうやら世間一般の人々はどうもそうではなさそうなのだ。そしてそういう痩せたいけど痩せられないという人たちを中心に、さらに一般視聴者を巻き込んでヒットしているのが、「ビギスト・ルーザー」だ。


実際、アメリカのスーパーマーケットで買い物をすると、デブほど大量に食料を仕入れているのには驚くばかりだ。プッシュ・カートに山盛りになるほどの食料がてんこ盛りで、あんたいったい何人家族の何十日分の食料を買い出ししているからそんなに食料が必要なんだとあきれるくらいだ。しかもよく見ると、そのほとんどが肉とミルク/オレンジ・ジュース系の飲料、こんなのを主食にしているのかとびびるくらいの冷凍食品の山、それにスナック系のジャンク・フードばかりで、野菜はほとんど陰に隠れて見えない、といった買い物の仕方をする者がかなりいるのだ。脂肪とプロテインとでんぷんばかりの食事。そりゃ太るだろうし成人病にもなるだろう。


一方、いくらそういう肥満がアメリカには多いとはいえ、不特定多数の視聴者の獲得が至上命令のネットワークのTV番組では、オーヴァーウエイトの人間のほとんどが番組を見たとしても、視聴率の上ではたかが知れている。それがヒット番組となるためには、やはり肥満ではない老若男女の視聴者が番組を見ていなければならない。実を言うと、あろうことか、いつの間にか私の女房がものの見事に「ビギスト・ルーザー」追っかけとなっていた。


因みに私の女房も私と同じで特に肥満体型ではない。さすがに中年になってスキニーと言われた昔ほど痩せ型ではなくなってきたが、それでもアメリカ人の間に入るとまだ痩せて見える。サイズ2が4になったって、一般的アメリカ人から見れば、だから何としか思わないだろう。実際、女房だって昔から「ビギスト・ルーザー」を熱心に見ていたわけではない。


「ビギスト・ルーザー」は原則として火曜夜8時放送だ。この時間帯は、夏から年末まではともかく、年明けから夏までは裏番組にFOXの「アメリカン・アイドル」が重なる。第1シーズンからほとんど欠かさず「アイドル」を見続けていた私たちにとって、「ビギスト・ルーザー」は「アイドル」が中休み中の暇潰しくらいにしか考えていなかった。女房もそう思っていた、と私は思っていた。


ところが、昨秋の「ルーザー」の第6シーズン辺りから、なんだか雲行きが怪しくなってきた。なんか、最近よく女房は「ルーザー」を見ているなと思ってはいたのだが、番組が始まると、2時間 (そう、2時間だ) うちの女房はほとんどTVの前から動かないのだ。最新第7シーズンは年明けから始まり、ということは「アイドル」と完全に裏番組同士でかち合う。そこで女房はボソッと言った。「ビギスト・ルーザー」を見る、「アイドル」は録画でいい。本気で言ってんのか!


この入れ込み具合を示すように、ある時、私がシャワーを浴びて出てくると、女房が「ルーザー」を見ながら泣いていて、私に気づいて慌てて涙を拭いていた。なんだ、おまえ、よりにもよって減量番組見て泣いてんのかと私が驚いて質問すると、だって感動するんだよ、と言った。こいつ、減量番組見て感動して泣いてんのか。


だいたい、この種の番組に参加する人間は、個人では減量できない意志の弱い人間だったりする。だからTVの助けを借りて減量しようとする。番組ではトレーナーがついてつきっきりでエクササイズさせ、食餌療法で痩せさせる。エクササイズはかなりスパルタで、休むことを許さず、やれと言ったことを徹底的にやらせる。もちろんだから痩せるわけだ。参加者も追放されたら元も子もないし、ほとんどがこれが痩せるための最後のチャンスなんて悲壮な覚悟で番組に参加していたりする。だいたい全員、肥満から来る肝臓肥大や糖尿病、高血圧や腎臓疲弊等の成人病の一つや二つ抱えている。ティーンエイジャーの子もいたりするが、今痩せないと身体に爆弾を抱えたまま成長してしまうことになるのは言うまでもない。


そういう危機感を皆持っているから、お尻を叩いてくれる人がいるこの機会に、これを逃せば後がないと、痩せようと必死に努力する。本当に必死なのだ。時に吐きながら、泣きながら叱咤されて延々と踏み台昇降やっていたり自転車こいでたりする。それがえらく感情を刺激して見ているこちらも泣かせるらしい。こないだなんか、ふと気づくと女房が顔を真っ赤にさせて息も絶え絶えにぜいぜいと喘いでいた。番組に集中して見るあまり、参加者と一緒に反復横とびを延々とやっている気持ちになって、息を止めてTV画面を見つめていたようだ。


もう吐きそうと言いながらカウチに倒れこむので、私もさすがに驚いて、頼むから「ルーザー」に熱中するあまり救急車を呼ばないといけなくなるような事態だけは勘弁してくれよな、オレ、救急隊員に減量番組を見てて心臓発作を起こしたんですなんて説明するのは嫌だぞ、と念押ししたのだが、番組はとにかくある種の人間、オーヴァーウエイトかそうかは問わず、特に女性視聴者のツボを痛く刺激するらしい。それにしてもここまではまっていたとは。


リアリティ・ショウの醍醐味は、参加者の生の感情の発露を見ることにあると私は思っている。その点では、確かに「ビギスト・ルーザー」ほど参加者が感情を表に出す番組は他にはない。参加を決めた時点でほとんど恥をさらしてでも痩せると決心した者たちばかりなのだ。計量の時は男性は皆Tシャツを脱ぐし、女性だって上はへその出るタイプのタンクトップだ。むろん全員おなかはだぶだぶだ。人によっては3段腹4段腹で、妙齢の女性がそういうおなかを人前にさらしてまで痩せようとするのを見るのは、かなり悲壮感が漂う。あるいは皆もう慣れっこになっているか。いずれにしても肌をさらしているからといっても、デブ専以外は特に見たいとも思わないだろう。


そういう参加者が恥を捨てて減量に取り組むのだ。実際に痩せる。賞金もインセンティヴになっているとはいえ、皆とことん痩せようと努力するので、本当に痩せる。番組のシーズンも後の方になってくると、誰でもだいたい100パウンド (50kg弱) くらいは痩せる。最初が300パウンドとか人によっては400パウンド超の人間が参加してくるので、それでもまだ太っているくらいだ。


そして、さすがに痩せてくると顔が変わってくる。特に女性なんかは、基本的に目鼻立ちのくっきりした女性が多かったりするので、痩せてくると、え、この人ってこんなに美人だったの、と思うくらい顔が整ってくる。そうすると本人も自信がつくのでますますエクササイズにも身が入り、もっと痩せるという好循環に乗れる。こうなったらエクササイズするのも楽しくてしょうがないだろう。「ビギスト・ルーザー」は、確かに参加者の感情の発露を見、変化を目の当たりにするという点で、リアリティ・ショウとしてはポイント高い。


一方、痩せるとはいえ、だいたい皆、調子がついて加速度的に痩せる時期と、どんなにエクササイズしても思うように痩せない時がある。人によっては途中リバウンドで、あんなにエクササイズしたはずなのに体重が増えている時すらある。しかし勝ち抜きリアリティだから、痩せないと追放される。そこでまた色々とドラマが生まれる。


エクササイズ・コーチには男性のボブと女性のジュリアンがおり、その二人の下でチームに分かれて競う。これもまた参加者との相性で、どちらかのやり方の方が効果的だったりする。その点で、感情的になりがちなジュリアンは特に参加者から慕われているわけではない。ほとんどサディスティックに参加者を限界まで追い詰めて喜んでいたりする。


なんていう細々とした情報や楽しみ方は、番組を見ている時に女房からいちいち教わった。さすが追っかけなだけあって、私が気になったことを質問すると、待ってましたとばかりに逐一嬉々として説明してくれる。「ルーザー」は参加者をカップルにしたり、家族対抗にしたり、敗者復活戦を取り入れたりと毎シーズンちょこちょことルールに手を入れてマイナー・チェンジしているらしいので、細かい点は知っている人に訊かないとわからなかったりする。


ホストのスウィーニーは番組では妊娠中で、おかげで初代ホストのレイ同様、わざと太目のホストを選んできたように見える。一方、現実ではスウィーニーは1月に無事出産したはずで、要するに番組は昨秋頃に収録したものを今放送している。実際、番組最後には、毎回、追放された参加者が今はここまで痩せましたという最新映像を見せてくれるのだが、いくらなんでもそこまでくるためには収録後さらに数か月は必要だろう。


スウィーニーは、正直言ってホスティング技術はそれほどない。特に番組内エクササイズ・コンペで参加者が必死にイミュニティ獲得を争う時に、スウィーニーが実況するのだが、こんなに盛り上がらない下手な実況をするアナウンサーはいないだろうと思う。別に競馬のような実況をしろとまでは言わないが、しかしもうちょっとうまくできないものか。これでは参加者が必死に競技に挑戦しているのに、脱力してしまう。


一方、番組が最も重視しているのはそういう実況技術、アナウンサーというよりも、参加者に感情移入できていっしょに頑張ろうという気分にさせるパーソナリティの方だろうから、これはこれでいい、というのは私の女房の弁。とにかくさすが追っかけなだけあって、私が何に茶々を入れてもちゃんと反論して番組を擁護するのだ。


第7シーズンでは元モデル (モデルがここまで太れるというのもすごいが、Lサイズのモデル?) というタラが、顔の中味がケイト・ウィンスレットそっくりで印象に残る。ウィンスレットは今、「レボリューショナリー・ロード」と「愛を読むひと」と主演作がたて続けに公開、しかもアカデミー賞主演女優賞受賞と最も注目を集めている女優で、従ってなにかと目にする機会が多い。そのウィンスレットに、タラの顔の中味がそっくりなのだ。今はこんなにデブでも、確かに昔はモデルだったというのも納得できる。タラを見る度に、ウィンスレットが太るとこんな風になるんだろうなと思う。


このタラが、私の意見では今シーズンの優勝最右翼だ。ちらちら見ていると、何をさせても必死にやり遂げようとする意志力が漲っており、イミュニティを賭けたエクササイズ・コンペになると、だいたいいつも最後の方まで残る。こんなに意志の強い人間がなぜ自分の食欲をコントロールして痩せることができないのか不思議なくらいだ。次点が同様に根性のあるシオネで、この二人はだいたい毎週コンスタントに10パウンドくらいずつ減っている。穴はシーズンも後半になってちゃんと痩せ出したクリスティンといったところだろうか。またルールをいじって敗者を復活させたりするようなことがない限り、この予想はかなりいい線行く気がする。



追記 (2009年5月)

かなりの確率で当たるんじゃないかと踏んでいた今回の予想、最後まで残ったのはタラ、ヘレン、マイケルの3人で、シオネとか外したかとは思ったが、本命と思っていたタラは残っている。一方、番組最年少のティーンエイジャーのマイクはともかく、47歳のヘレンが残ったのはまったく予想外。しかも、優勝したのは番狂わせのヘレンだった。ヘレンは娘と共に参加していて、将来のある娘をないがしろにしてまで自分が番組に残ったというどちらかという悪役的役回りで、しかも持久力に問題のある歳のことを考えると、さすがに優勝は無理で、タラかマイクかどちらかだと思っていたのだが、勝負は終わってみるまでわからない。


番組開始時に260パウンド (120kg) だったものが、最終回時は120パウンド (55kg) と、140パウンド (65kg) 以上の減量に成功、それよりも自分の全体重の50%以上減量したという事実に驚く。しかし、それくらい意志力のある人々が、なぜそれまで痩せることができなかったのか。やはり金の威力か。いずれにしても、母ほど痩せられなかった娘の心中はいかばかりか。








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ザ・ビギスト・ルーザー (ザ・ビゲスト・ルーザー)   ★★1/2

 
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