Spider-Man: Far from Home


スパイダーマン: ファー・フロム・ホーム  (2019年8月)

マーヴェルの「アベンジャーズ (Avengers)」の一員として組み込まれてしまった「スパイダーマン」、「アベンジャーズ」自体はもうほとんど見る気をなくしてしまったので、今回の「スパイダーマン」もどうしようかなと思ったのだが、それでもついいつもの癖で、という感じで劇場に足を運ぶ。


「ファー・フロム・ホーム」は、案の定というか「アベンジャーズ/エンドゲーム (Avengers: Endgame)」でアイアンマンことトニー・スタークが命を落としたことを受けて、喪に服す人類、という感じで話が始まる。一瞬、まさか「エンドゲーム」を見てないと話がわからないなんてことはないよなと身構えるが、そんなことはなく、さらっと「アベンジャーズ」繋がりをおさらいした後は、本題に入る。


マーヴェル・シネマティック・ユニヴァースの一員となった「スパイダーマン」が従来の「スパイダーマン」と大きく異なる点が、ニューヨークの東側のクイーンズに住む一般市民階級出身のスパイダーマンことピーターが、新シリーズでは名目上ニューヨークに住んではいても、そこは事実上マーヴェル・ユニヴァース上のニューヨークであり、これまでのようなピーターが生活して地に足をつけて歩いていたニューヨークではないことにある。


これは既に前作の「ホームカミング (Homecoming)」で明らかだったのが、その時はニューヨークを舞台としながら実はニューヨークらしくない、もしくはニューヨークの名所が映らない内容に、単に違和感を覚えるだけだった。それなのにワシントンDCの名所はしっかりと舞台となる。「スパイダーマン」は地元密着型のスーパーヒーローではなかったのか。


そしたら今回は、ニューヨークどころか基本的に舞台はヨーロッパだ。アメリカですらない。要するに「スパイダーマン」は、マーヴェル・ユニヴァースのスーパーヒーローの一人という位置付けが確立したために、住んでいるのは今現在のニューヨークではなく、マーヴェル・ユニヴァース内の架空のニューヨークなのだ。どうやらそこには自由の女神はなく、そして活躍の舞台もニューヨーク、さらにはアメリカである必要すらない。段々わかってきた。ついでに言うとヴェニスもプラハもロンドンも、実在の都市とは異なるものと思われる。


実は私はこの項の大半を、ヴァケイションで訪れているプラハのホテルで書いている。街のほとんどが石畳という美しい街だ。実はピーターがMJに告白した古い橋は、あれはカレル橋ではなかったかと、今気づいた。そうだったに違いない。私たち夫婦が投宿したホテルは、そのカレル橋から徒歩3分のところにあり、王宮に行くために二度も橋を往復したのだが、それでも、橋を渡りながらこれが「ファー・フロム・ホーム」で映った橋とは気づかなかった。街最大の観光スポットで、たとえ夜中だろうと人通りが絶えないため、セット撮影だったのかもしれないし、夜のシーンだったことも理由の一つにはなるだろうが、やはり本当のプラハではなく、マーヴェル・ユニヴァースの一部としてのプラハだったから気づかなかった、というのがしっくり来る。


今回悪役のミステリオに扮するのは、ジェイク・ジレンホール。最先端のIT技術を駆使して仮想空間を創り上げ、事実か虚構かわからない世界で、スパイダーマンと戦いを繰り広げる。ハリウッドのこういうCG技術はさらに進化しており、見る度に驚かされる。


ヒロインのMJ役のゼンデイヤも可愛さに磨きがかかってきた。それなのに今HBOの「ユーフォリア (Euphoria)」で演じているのは、ヤク中のティーンエイジャーだ。たぶん可愛いと言われる者ほど、こういう汚れ役をやりたくなるんだろう。


今回ミステリオは、最後にタイムズ・スクエアの電光板でスパイダーマンの正体をばらす。これまた大いに違和感で、庶民代表型のスーパーヒーローであるスパイダーマンは、実は既に多くの者が彼の正体を知っている。メイおばさんも知っているしネッドだって知っているしMJにも告白した。トビー・マクガイアがスパイダーマンに扮した初期の三部作では、マスクが外れて公衆の面前に素顔を晒したピーターを、わざわざ人々が見ない振りをしていた。


それなのに、今さらスパイダーマンの正体はピーター・パーカーだとタイムズ・スクエアで大々的にばらされても、こっちとしては、ああそうですか、くらいにしか思えない。その正体に関して、最も人々が関心を持ってない、あるいは正体を知っても気にしないスーパーヒーローが、スパイダーマンなのだ。正体をばらされたからといって、翌日学校で、友人たちから、お前がスパイダーマンだったんだな、知らなかったよ、実はそうなんだ、へへ、で終わりそうな気がする。あんまり次回へのいい伏線にはなってないんじゃないか。











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トニー・スターク/アイアンマンの活躍によって平和が取り戻された地球。一人のティーンエイジャーとして学校生活を送っていたピーター・パーカー/スパイダーマン (トム・ホランド) は、学校主催のヨーロッパへの研修旅行に参加、MJ (ゼンデイヤ) に思いのたけを告るつもりで、ニック・フューリー (サミュエル・L・ジャクソン) からの電話も無視して自由な日々を満喫していた。しかしヴェニスで巨大な怪物が現れ、苦戦するピーターたちを突如現れたミステリオ/クエンティン・ベック (ジェイク・ジレンホール) が間一髪で救う。ピーターにはトニーの遺志で、人工知能EDITHを内蔵したスターク・インダストリーの最高傑作である形見の眼鏡が残されていたが、ピーターはプラハでもミステリオに助けられ、自分には相応しくないとEDITHをミステリオに譲り渡してしまう。しかし実はミステリオには裏の顔があった‥‥


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