スキン・タイト   Skin Tight

放送局: TLC

プレミア放送日: 1/6/2016 (Wed) 22:00-23:00

製作: メガロメディア

製作総指揮: ジョナサン・ナウザラダン、グレアム・デイヴィッドソン


内容: 手術による急激な減量で皮膚が余ってしまった者たちを再手術する。


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Skin Tight


スキン・タイト  ★★

アメリカに体重過多の人間は多い。それこそ山のようにいる。なんでも全人口の3分の1は肥満とかで、そのくせ背も高くて汗っかきだったりして、そういう奴らが近くにいると、とにかく暑苦しい。


サブウェイに乗っていて困るのは、女性が太っているのか妊娠しているのかわからないことだ。座っているこちらの目の前にそういう女性が立つと、席を譲るべきかそれともただのデブなのかわからず判断に迷う。こちらの女性は妊娠していても普通通りの生活を旨にしており、着ているものや立ち居振る舞いから判断できない。席を譲ろうとしてただのデブだったというのはお互いにバツが悪いので、自然、席を立ちにくくなる。うちの女房もここの女性はデブか妊婦か判断が難しいと言っていた。


こないだ目の前に立った者のお腹がそこだけぷくっと膨れているので、これならわかりやすいんだけどなと席を譲ろうと思って顔を上げたら、中年のおっさんだった。かと思うと、こないだはどこからどう見ても普通体型の30代くらいの二人連れの女性の片割れが、私の前に立つや否や、私は今、妊娠しているので席を譲ってくれと、ほとんど依頼というよりは命令のような形で立たされた。その女性はその後ずっと、友人と元気に大声で喋りっぱなしだった。しかも喋っているのは英語ではなくフランス語のようで、フランスでは妊婦は女王のように振る舞うのが許されるのかと思った。


脱線したが、アメリカにはこんな感じで男性も女性も肥満は多いと言いたかったのだった。都会ですらこうで、郊外や田舎に行くと、肥満の割り合いはもっと多くなる。そのためもあるのだろう、アメリカのTVに減量テーマの番組は多い。特にNBCの「ザ・ビギスト・ルーザー (The Biggest Loser)」がそこに勝ち抜きコンペティションの要素を持ち込んで人気を獲得したのを契機として、一気に減量リアリティというジャンルが確立した感がある。


一方、「ビギスト・ルーザー」のようにエクササイズと食餌療法で痩せようとする分にはまだいいのだが、短絡的に脂肪を吸引したり胃を半分切りとって痩せる者も結構いる。しかし元々は500パウンド (225 kg) くらいあったものをいきなり脂肪吸引と胃切除で200パウンド (90 kg) くらい落としてしまうと、問題が起きる。段階的な自然な方法に依らない減量では、皮膚がその急激な減量に対応できず、余った皮膚がたるんで垂れ下がってしまうのだ。


胃切除と脂肪吸引の目的は体重を減らすことのみにあり、その結果どう見えることになるかは考慮されてないのはもちろんだ。しかし手術を受けた本人は、それで愕然とすることになる。あれほど望んで受けた手術の結果は、到底受け入れられるものではなかった。


本当に、手術によって痩せた者たちは、実際のところ手術しなかった方ががまだマシだったとしか思えない。番組第1回に登場するミーガンは、手術によって痩せたはいいものの、結果としてたっぷんたっぷんと余っている自分のお腹や二の腕の皮膚を持て余す。皮膚だけがお腹から垂れ下がっているのだ。それをどうするかというと、文字通りその皮膚を折り畳んでパンツの中に突っ込んで隠す。見ていて唖然とする。こんなんじゃ、どんなに痩せたといっても自分自身に自信が持てるようになるわけがない。


そのため今度はもう一度、今度は余分な皮膚の切除手術を受ける。そういう境遇の者たちを集めて記録したのが、「スキン・タイト」だ。痩せるための手術ではなく、余分な皮膚だけを取り除く。


こういう手術が必要になるのも、元はと言えば信じられないほど大デブになってしまった自分自身に原因がある。しかしこれくらい肥満になると、歩くのも億劫になって、エクササイズに取り組めない。というか、ほとんどまともに歩けないくらいの体重だったりする。最初に手術する前の写真を見ると、確かにこれじゃ手術で減量するしかないかと思ってしまう。しかし、なんでここまで太るまでなんの手も打たないのかと、不思議ではある。


さて、皮膚切除手術を受ける者たちは、服を脱いで裸になって、切除部分にマーカーで印をつけられ、手術室に運ばれる。手術が始まると、切り取った、厚みのある、内側にどろりとした脂肪が付着している皮膚がどんどん積み重ねられていく。それがまた何十パウンド分にもなるのだ。肉屋の積まれている豚の三枚肉を見ているみたいで、なんか気分が悪くなる。これが人間の皮か。


術後の回復は人それぞれであり、人によっては回復が遅れたり、縫合が裂けたりする場合もある。そんなこんなで数か月経ってやっと一応人前に出れるようになったと思うと、晴れてお披露目パーティをする。それで変身した彼、彼女らを見て、親類知人が一様によかったねと喜んで幕となるのだが、やはり、なんかお前ら、間違っている、と思わざるを得ない。どうしてこうなるまでほっといたんだ。


現在ではたぶん、肥満はかなりの部分病気、しかも心の病気と密接に関係していると言えるのではないか。太るから心の病気になるのか鬱屈するから太るのか、たぶん両方の悪循環だ。なまじ経済的には余裕があって、何か食べようとするとすぐ手に入るから、歯止めが利かない。また、スキニーよりヴォリュームのある方が好まれるというお国柄も、そういう肥満体質を助長しているだろう。


とはいえ、番組に出てくるような者たち、あるいはその予備軍の多さは、社会問題とすら言える。やはりどこかで歯止めをかけるべきだ。せめて妊娠しているのかそうでないのかくらいはわかるくらいで留めてくれるとありがたいのだがな、と思ってしまうのだった。











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