Scary Stories to Tell in the Dark


スケアリー・ストーリーズ・トゥ・テル・イン・ザ・ダーク  (2019年9月)

先頃、月10ドルで毎日1本映画館で映画鑑賞を提供するという、映画ファンには夢のようなサーヴィスを歌っていたムーヴィパス (MoviePass) が、突然サーヴィスの終了を発表した。だいたい、現在チケット代1本10ドル内外する映画料金は、毎日見れば月300ドルかかる。むろんそこまでのファンや時間がある者は少ないだろうが、しかし、私のようにほぼ毎週見るというくらいのファンなら結構いるだろう。それでも月4週あるとして40ドルかかる。いったいどうやって収支をつけるのかと、部外者ながら気になる。 

 

結局、これで採算は合わないことをムーヴィパスも遅まきながら理解、最終的に月10ドルで毎月3本まで鑑賞可能というシステムで、サーヴィスは発足した。それでもファンにとっては充分おいしい話で、サーヴィス開始の報を受けて、私も早速登録した。 

 

サーヴィスはスマートフォンにアプリをダウンロードして利用するが、それと共に会員カードが必要で、それはまず郵便で送られてくる。ところが、そのカードがいっかな届かない。それなのに、現物もなくサーヴィスも利用できないのに、いきなり私のクレジッド・カードにサーヴィス・チャージが課金され始めた。確か最終登録確認後から料金は請求されるはずだったが? 

 

それでカスタマー・サーヴィスにコンタクトしてみたものの、事情を説明しても、別人から事情を説明してくれとか鋭意調査中みたいな、まったく的はずれな返事が連日返ってきはするが、問題そのものは一向に解決しない。そのうち翌月のクレジット・カードの決済日が近づいてきて、この分だと、利用してもないのにまた課金される、冗談じゃない、と、ムーヴィパスにサーヴィスのキャンセルを申し入れ、課金されたものは当然払わないと、クレジット会社に連絡した。 

 

信じられないことにムーヴィパスは、その後もはなはだ見当違いの返事を何度も返してきた。何もわかっちゃいない。その頃には私は、このサーヴィスは長くは保たないなと見当をつけていた。カスタマー・サーヴィスが自分たちのサーヴィスについて何もわかっちゃいないし、社内の横の連絡はどうやらないに等しい。そういう企業の経営がうまくやっていけるとは到底思えない。事実それから1年と経たないうちに私の読み通りになった。読み通りで嬉しいやらがっかりやらだ。 

 

さて、気を取り直して、今週見る映画はと、公開中のリストを見渡し、「スケアリー・テイルズ・トゥ・テル・イン・ザ・ダーク」と、「レディ・オア・ノット (Ready or Not)」、そして本命「 IT/イット The End “それ” が見えたら、終わり。 (It: Chapter Two)」の3本のホラーを並べてその中から「スケアリー・テイルズ」にしたのは、特に強い理由があったわけではない。「イット」は、ジェシカ・チャステインをフィーチャーした予告編はかなり気に入ったのだが、いかんせん前作の「It/イット」を見ておらず、話が追えないかもしれないと思ったこと、「レディ・オア・ノット」は、これもなかなか面白そうだとは思ったのだが、気分的により正統的なホラーっぽい「スケアリー・テイルズ」の方により興味を惹かれた。 

 

ついでに言うと、初耳だが演出の André Øvredalという名前にも痛くそそられた。近年、アメリカのホラー界は、中南米やヨーロッパ、それも北欧等の外縁部出身の演出家の進出が著しい。そのため、名前にアクセント記号やOにストロークがかかった北欧文字を見るだけでそそられる。調べるとノルウェイ出身で、日本語表記はアンドレ・ウーヴレダル。カルト的ヒットとなったホラー・ファンタジーの「トロール・ハンター (Trollhunter)」を撮っている。さらに脚本/製作にはギレルモ・デル・トロの名前も見える。というわけで、今回はこれに決める。 

 

「スケアリー・テイルズ」はアルヴィン・シュワーツの同名原作のシリーズを映像化したもので、過去にTVシリーズ化もされている。この手のアンソロジー・ホラー・シリーズはTVに結構あって、つい最近でもニコロデオンの「アー・ユー・アフレイド・オブ・ザ・ダーク? (Are You Afraid of the Dark?)」とか、CWの「トゥ・センテンス・ホラー・ストーリーズ (Two Sentence Horror Stories)」とかが始まっている。「スケアリー・テイルズ」も同様に異なるホラー・エピソードをそれぞれ繋げた作品だ。 

 

実際、見ているとなんか異なる話をごっちゃにしたようなごった煮感は強い。色んな場所から印象的な絵やエピソードを持ってきて繋げたという感触がする。例えば、ステラたちがお化け屋敷で見つけた本に封印されていた怖い話やモンスターを顕現させてしまうという展開は、サム・レイミの「死霊のはらわた (The Evil Dead)」を思い出さずにはいられないし、他にもなんかどこかで見たことがあるような展開が多い。だいたい、主人公は、一応はステラたちオタク3人組と言えるだろうが、彼らに絡むラモンがいったいどういう立ち位置なのか、実は彼こそが主人公と言えなくもなく、中心となる視点をつかみづらい。 

 

案山子やその他のモンスターも、統一感がないというか、別の話、という印象が強い。そこへ顔の中から変なものが出てきて生理的に気持ち悪いという描写も加わり、てんこ盛りと言えばいいのか、コスパ高しと言えばいいのか、いずれにしても、それでもやはり楽しめてしまうところが、ホラーというジャンルの強みか。中でも最も怖いのがやたらと顔のでかいペイル・レイディで、こいつは怖い。病院の中でチャックたちを追いかけ回すのだが、よくこんな不気味な顔を造形化できたと思う。夢に出そうだ。 











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1968年ペンシルヴァニア。オタクの3人組ステラ (ゾーイ・コレッティ)、オーギー (ゲイブリエル・ラッシュ)、チャック (オースティン・ジャズア) は、天敵のいじめっ子トミーにちょっとした仕返しをしたおかげで追いかけられ、ドライヴ・イン・シアターで映画を見ていたよそ者のラモン (マイケル・ガーザ) のクルマに逃げ込んで難を逃れる。ステラたちは町の幽霊屋敷にラモンを誘い、そこで発見した隠し部屋で、この家の持ち主だった女性が書いたと思われる、怖い話が書かれている曰くありげな手書きの本を見つける。ステラはその本を持ち帰り、そして本に書かれていた怖い話が、現実のものとして起こり始める‥‥ 


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