Rocketman


ロケットマン  (2019年7月)

「ロケットマン」を知っての最初の感想は、エルトン・ジョンって、もう自伝的作品が製作されるような歳になったのかということだった。「ボヘミアン・ラプソディ (Bohemian Rhapsody)」でクイーンのドキュドラマが製作されることはわかる。主人公のフレディ・マーキュリーは既に故人だ。

  

しかし、エルトン・ジョンはまだ存命で活動中だ。ディズニーの主題歌で人気が再燃した一時のように派手に活動しているわけではないが、それでもツアーの情報は聞くし、「キングスマン: ゴールデン・サークル (Kingsman: The Golden Circle)」に出ていたのを見たのもわりと最近の話だ。昨年のグラミー賞でもマイリー・サイラスとデュエットしていた。要するに印象としてはまったく現役であり、伝記的作品が製作されるような歳になったとか、引退しているわけではない。 

  

と思って調べてみたところ、実際、現在エルトンはワールド・ツアー中だが、これを最後にツアー活動は休止するとのことだ。今後はプライヴェイトなことに専念したいらしい。とはいえ音楽活動すべてから引退するというわけではない。実際エルトンは80年代頃、引退宣言をして一時音楽活動を休止し、また復活してきたという経緯もあるから、今後ツアーはなくなろうとも、我々がエルトンをまったく見なくなるということはないだろうと思う。


とまれエルトンが人生の節目にいることは確かなようであり、これまでの彼の生い立ちやキャリアを顧みることは意味のないことではないということでの、今回のドキュドラマ製作ということのようだ。ついでに言うと「ロケットマン」監督のデクスター・フレッチャーは、「ボヘミアン・ラプソディ」の製作総指揮でもある。


実は私は「ボヘミアン・ラプソディ」をTVでしか見ていないが、それは若い時に結構聴き込んだクイーンのフレディを、まったく似ていないラミ・マレクが演じたことにすごく違和感を覚えたためだ。一方クイーンほど聴いたわけではないエルトンの場合は、特に誰がエルトンを演じようと気にならない。まあエルトンはいつも奇抜な衣装にサングラスで目を隠していたから、誰が扮しようとあまり気にならないというのはあるかと思う。おかげでエルトンの顔というと昔の顔では覚えておらず、今のあのぽっちゃりとした顔しか思い浮かばない。


エルトンは幼い頃から音楽の才能に秀でており、映画では王立音楽アカデミーの試験を受けた時、教師がピアノで弾いていた曲をその場で完全に再現して驚かせたというシーンがある。曲の途中まで弾いて止めたので、教師がなぜ途中で止めるのかと質すと、エルトンはあなたはここまでしか弾かなかったと答える。要するに一度聴けば曲を再現できる。「のだめカンタービレ」で、主人公のだめが同様に一度聴けばピアノで再現できるという設定になっていて、さすがマンガと思っていたのだが、どうやら世界には本当にそれができる人間が存在するんだと知った。 

 

しかしそういう才能に対して私生活が同様に恵まれたものとは限らない。というか、往々にしてそういう才能に恵まれた者は、私生活が犠牲になる。特にエルトンの場合、ゲイという本人の性向やすこぶる短気という性格もあって、私生活はかなり乱れていた。映画のオープニングは、ドラッグ等の自助矯正グループの集まりに参加したエルトンが、自身のこれまでの生活を告白するという出だしになっている。 

 

ところで、クイーンのフレディの場合、明らかに彼はどこから見てもゲイだが、AIDSに冒されていようとも終生カミングアウトしなかった。一方でエルトンは早くから自分はゲイもしくはバイだと認めており、最も初期の段階で同性婚を挙げたセレブリティとして知られている。私もその時の報道を覚えているが、同性婚が世界的に認められるようになった時に、エルトンの結婚式の模様は世界中に報道され、ゲイやプライドの認知と浸透に一役買った。もしかしたら「ライオンキング」のテーマより、ゲイの認知として果たした役割の方が社会的には大きかったんじゃないかと個人的に思う。 

  

エルトンに扮するタロン・エジャトンは、「キングスマン」の主演でもある。その「キングスマン」に、エルトンも出ていた。要するにエジャトンとエルトンは既に共演の経験がある。というか、「キングスマン」に出ていたエルトンは場違いという印象が甚だしく、一人だけ浮いていたという印象がある。秘密エージェント活躍作品に二人共出ていて、その主演のエージェント役が今回エルトンに扮するというのもなんか不思議な縁だ。 











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1950年代英国ミドルセックス。レジーは音楽好きな少年で、才能もあったが、母も父も特にレジーの興味に関心を示さず、祖母だけが唯一とも言える理解者だった。レジーはロンドンの王立音楽アカデミーに入学を許可され、成長したレジー (タロン・エジャトン) は名前をエルトンと替え、バンドを組んで人前で演奏するようになる。レコード会社の広告を見て売り込みをかけたエルトンは、面接の場で当時人気絶頂だったビートルズの写真を見て、自身をエルトン・ジョンと命名する。エルトンは終生の友となるバーニー (ジェイミー・ベル) を紹介され、次々と曲を作る。二人はLAの有名クラブ、トルバドールに出演し、奇抜な衣装のエルトンは斬新でキャッチーなメロディと相俟って、瞬く間に人気者になる‥‥ 


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