放送局: FOX

プレミア放送日: 2/20/2004 (Fri) 21:00-22:00

製作: LMNOプロダクションズ

製作総指揮: エリック・ショッツ、ビル・パオラントニオ

監督: ボブ・レヴィ

ホスト: スティーヴ・サンタガティ

アナウンサー: マイケル・バッファー


内容: 人間と動物を争わす体力勝負番組の第2弾。


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本当にくだんない番組なんだが、なぜだか目が離せなくて、結局最後まで見てしまう。それが「マン vs ビースト2」だ。実は昨年放送されたオリジナルの「マン vs ビースト」も、やはり同様にくだらなく、公正な視点という立場から言えば、ほとんど言語道断的に無茶苦茶な不公平さを持っていたのだが、それは今回も変わらない。


「マン vs ビースト」シリーズは、どう見ても公正な勝負など期待できそうもない、人間対動物の体力勝負番組である。前回は、各界から選ばれた人間が、クマとの大食い競争、オランウータンとの綱引き、キリンとゼブラとの100m走、チンパンジーとの障害物競走、ゾウとの力較べで優劣を争った。日本からも、誰もが世界一と認める大食いプリンス、小林尊が出場していた。


その第2弾である今回は、犬相手のロング・ジャンプ、オランウータン相手のぶら下がり競争、チンパンジー相手の木登り、らくだ相手のリレーで、動物界の名だたる相手に勝負を挑む。


この番組の競技は、誰がどう見ても公平な勝負とは言いがたい。あまりにも初期の条件差が大きすぎそうな場合だと、勝手にハンデ戦にしちゃうし、その線引きもすこぶる曖昧だ。それに、対する動物連中が、本気でやっているかも誰にもわからない。ぶら下がり競争に挑んだオランウータンなんて、途中で鉄棒にぶら下がりながら、いきなりおしっこし始めてしまった。人間はなめられている。なんでこんな番組を見なくちゃならんのだと、平常心に帰るとふと思ったりもするのだが、しかし、これがなんとなく癖になるのも、実際に番組を見た人にならわかってもらえるだろう。


そういう、ふざけた競技、ふざけた出演者の中で、一応真面目にやっているように見えるのが、冒頭に登場する犬だ。とはいえ、それでも真面目に勝負させるには餌で釣る必要がある。まず、桟橋の上で飼い主が鴨のようなデコイを振り回し、そこにたぶんラブラドール・リトリーヴァーのモーガンが走ってくる。モーガンのタイミングに併せて飼い主がデコイを川の中に思い切りほうり投げると、それをめがけてモーガンもジャンプするという寸法だ。そのジャンプした桟橋から着水点までの距離を競う。


対する人間も、一応オリンピック代表候補なんかを連れてきている。そして思いもがけなかったことには、犬と人間とでかなりいい勝負をしている。最初、人間のブライアンが25フィート跳ぶと、犬のモーガンが26フィート跳び、ブライアンが26フィート跳んで並ぶと、またモーガンが突き放すといった展開で、結局27フィート跳んだモーガンが人間代表を下した。いずれにしても、ちゃんと飼い主の要望通りに池の中にジャンプするモーガンを見ていると、やはり犬は人間が信頼できる唯一の動物だという気がする。


次がぶら下がり競争で、人間とオランウータンで鉄棒にどちらが長くぶら下がっていられるかを競う。オランウータンに挑むのは、96年オリンピックのアメリカ代表の体操選手マーシャル・アーウィン。数分で人間側は、手を握り替えたりと苦しみ出すが、オランウータンに疲れた素振りはまったく見えない。しかし、疲れはなくても退屈なのには勝てなかったようで、いきなり何を思ったか鉄棒にぶら下がったまま、おしっこし始めた。なんてこった。はっきり言ってまだまだ余裕はあったのだが、オランウータンは既に勝負に対する興味を失い、いきなり鉄棒をずり寄って降りてしまった。失格である。規定により、人間の勝ちだ。ほとんど人間側は限界に近づいていたため、思わぬ勝利を拾った格好になった。


因みに、鉄棒にぶら下がるだけなんて、見かけの上ではなんの技術も要らない、すごく単純で簡単なことをやっているように見えるので、たった数分で苦しみ出した人間に、そのくらいもできないのかなあと疑問を口にしたら、女房が、じゃあやってみたらと言う。それで私もその気になって、ベッド・ルームに行く通路の間に設置してある懸垂用のバーにつかまり、ただぶら下がってみた。1分が限界だった。いきなり手の平にまめができ、肩が抜けるかと思った。これにほぼ9分間もぶら下がっていたアーウィンは偉い。


お次がチンパンジーを相手の木登りで、木登りといっても枝が張り出している生きている木を上るのではなく、枝を切り落とし、一本の柱と化した高さ40フィートの木の周りに、長さ1mくらいのロープを巻きつけながら、スクワットをするみたいな要領で、ぐんぐん登っていく。サモアで行われている、伝統的な勝負事らしい。そのチャンピオンのキャップ・テオ・タイティとチンパンジーを争わせる。とはいってもこの登り方はもちろん人間のみで、チンパンジーはロープなぞなしでぐいぐい登る。


この勝負も、やはりサル科の生き物は物事をなめているようで、どうしても真面目に競技しているようには見えず、人間の楽勝。それで今度は、チンパンジーが上まで行って降りてくる間に、人間は同じことを2回繰り返すというハンデをつけた。チンパンジー相手の木登りで、なんで人間がハンデを負わないといけないのかという気になるが、チンパンジーが真面目にやってくんないからしょうがない。


最初楽勝でチンパンジーを下し、余裕のあったタイティであったが、しかし、この登り方、はっきり言ってうさぎ跳びで木を登っていくようなもので、足腰にかかる負担は並大抵のものではあるまい。案の定、大口を叩いていたタイティは、次の勝負では最初こそ余裕を見せていたものの、いったん登って降り、さらに登る段になると、ほとんど足腰が言うことを聞かなくなった。急激にスピードがダウンし、休み休みながらでないと登れない。その間にチンパンジーは余裕綽々で上まで行って降りてきたが、まだタイティは頂上までにも達していない。タイティの足はいかにもがくがくして痙攣を起こしそうで、いきなり木から落ちてこないか冷や冷やもんだった。結局この勝負は、一勝一敗ということでけりが着いた。


最後の勝負は、なんとラクダに対して人間がリレーで勝負するかけっこだ。この勝負がいかにもFOXらしいのは、一匹のラクダに対して4人の複数の人間が走るという、まったく公平さを欠いた勝負内容にもよるが、なんといっても、その人間が走ることのスペシャリストではなく、またまた前回のゾウとの綱引きと同じく、小人を揃えたという、この言語道断な代表選定にある。


いったい、一匹に対して片方はリレーで勝負することの意義はどこにあるのか、それに勝ったからといって意味はあるのかという本質的な部分もさることながら、なぜまた人間側を小人で揃えないといけないのか、理解にまったく苦しむとしか言いようがない。一応はそれまでの競技は、人間側もそのスペシャリストを揃えていたわけで、競技が公平かどうかはともかく、少なくとも人間サイドは、そのベストに近いパフォーマンスだったとは言える。しかし、リレーを小人で揃えることに、多少なりとも意味はあるのかという問いには、はっきり言って番組プロデューサーだって明確には答えきれまい。しかも彼らの練習風景を見るからに、やはりどう見ても、彼らの足は速くない。


しかし、一方で、その小人たちはやる気になっており、やはり小人のコーチをつけ、おさおさ調整に怠りない。レースのアンカーは、その小人の息子だ。そして号砲が鳴り、レース・スタート。ほとんど走るというよりは、ただ前に足を進めているだけという風にしか見えないラクダに対し、一応は本気で走る小人が、ひとまずリードを奪う。しかし、徐々にスピードを増してきたラクダに対し、その差は急激に詰まりだし、あっという間に逆転。しかも小人側の第3走者からアンカーへのバトン・タッチがうまく行かず、さらに差は開く。


しかし、小人もさすがにアンカーには最も速いランナーを持ってきていたようで、いったんはラクダの楽勝かに見えたものが、徐々に小人が差を詰める。うわ、これはもしかしたら追いつくかも。しかしゴールは目前だ、どうだ、追いつくか、それともラクダが逃げ切るか、届くか、逃げ切るか、そして決着は‥‥なんと写真判定にもつれこんだのであった。結果、判定は10分の2秒差でラクダが人間代表の小人チームを下した。いや、ちょっと、結構興奮したぞ。実はラクダの方は、最初から最後まで余裕 (つまりは真面目に走ってない) だったんだが。


この番組、公正さという点ではまったく言語道断の極みであるけれども、このくだらなさにかける意気込みには、正直言って感心してしまうところがあるのも確かだ。なんてったって2年連続でこういう番組を製作してしまうんだから。さて、来年の第3弾の種目として考えられるのは、イルカと人間でどちらが長い間水の中で息を止めていられるか、ライオン相手のハイ・ジャンプ、ゴリラとの逆立ち勝負、クマ相手に川に入ってのサーモン獲り競争、冬期競技で、モモンガ対人間の90m級スキー・ジャンプなんてどうだと思ったりもしたんだが、さて、どうなるか。来年を楽しみに待つこととしよう。






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Man vs Beast 2

マン vs ビースト 2   ★★1/2

 
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