House Hunters Off the Grid   ハウス・ハンターズ・オフ・ザ・グリッド

放送局: HGTV

プレミア放送日: 4/21/2014 (Mon) 22:30-23:00

製作: レパード・アルゴノン

製作総指揮: ジェイムズ・バーストール、デイヴ・ハミルトン

ナレーション: アンドロメダ・ダンカー


内容: 新しい住居を探す者たちに密着する人気リアリティ・ショウ「ハウス・ハンターズ」の最新スピンオフ。


_______________________________________________________________

House Hunters Off the Grid


ハウス・ハンターズ・オフ・ザ・グリッド  ★★1/2

HGTV (Home & Garden TV) は読んで字の如く、住居に関係する番組を揃えたチャンネルだ。勝ち抜きでインテリア・デザイナーを勝負させる「HGTVデザイン・スター (HGTV Design Star) (現HGTVスター (HGTV Star))」は人気があり、私もよく見ている。初代ウィナーのデイヴィッド・ブロムスタッドは、今では様々な番組を掛け持ちするHGTVを代表するパーソナリティだ。


もう一本HGTVを代表する番組として、「ハウス・ハンターズ」がある。1999年から始まっている30分のリアリティ・ショウで、カップルが新しい家を探す様に密着する。様々な条件を考慮してカップルが3件の候補物件の中からどれか一件を選ぶのだが、これがなかなか見ていて飽きない。視聴者がオレならこれを選ぶな、いや私ならと、番組に感情移入しやすいからだろう。


「ハウス・ハンターズ」には、海外に目を向けたスピンオフの「ハウス・ハンターズ・インターナショナル (House Hunters International)」もある。転職や結婚等で海外に住むことになったカップルの家探しをとらえるもので、これまでに何度か日本にも行っている。どこでもそうだが新しい場所で住居を決める時の最大のポイントは職場までの距離であり、それは東京だろうと例外ではない。広い家に住み慣れたアメリカ人の場合だと、もちろん部屋の広さも大きなファクターだ。


これまで見たところによると、アメリカから日本に引っ越す者には軍関係者がわりといる。米軍基地が至るところにあるから、考えたらそれも当然だ。そのため東京大阪といった都市圏だけでなく、青森や沖縄といった場所でも新居を探す。期せずして一般的な観光客がは訪れない場所に赴く観光案内にもなっており、それはそれでまたなかなか面白い。


「ハウス・ハンターズ」はその後もさらに間口を広げ、ヴァケイション・ハウスのみに焦点を絞った「ハウス・ハンターズ・オン・ヴァケイション (House Hunters on Vacation)」、「ハウス・ハンターズ」に登場した者のその後を追う「ハウス・ハンターズ: ウェア・アー・ゼイ・ナウ (House Hunters: Where Are They Now)」、家を購入した者がリノヴェイションするまでをとらえた「ハウス・ハンターズ: リノヴェイションズ (House Hunters: Renovations)」、超豪華物件に的を絞った「ハウス・ハンターズ: ミリオン・ダラー・ホームズ (House Hunters: Million Dollar Homes)」、そして南洋の島々の物件に絞った「アイランド・ハンターズ (Island Hunters)」等、いくつものスピンオフ番組を生み出して現在に至っている。そしてその最新の例となるのが、今回の「ハウス・ハンターズ・オフ・ザ・グリッド」だ。


「オフ・ザ・グリッド」、要するに地図にない世界であり、通常なら人が引っ越してくることはほとんどないだろうと思われる秘境辺境に、それでもなんらかの事情で引っ越すことになった家族やカップルをとらえる。因みに私が見たエピソードでは、デンマークのコペンハーゲンからオーストラリア内陸部の、本当に周りに砂漠以外何もなさそうな小さな町クーバー・ペディに引っ越してきた一家をとらえる。だんなさんは鉱山関係の技術者であり、砂漠の中で鉱物資源発掘が仕事なのだ。


それはいいが、しかし、夫に付いて来る妻とまだ幼い子供たちにとってはきつい。なんせ日中の気温は軽く110F (43C) を超える砂漠町だ。結局一家が選んだ家は、山肌の岩をくり抜いて、半分岩盤の中に埋まった家だった。家の中に入ると、壁の半分以上がそのまま岩肌になっている。要するに、その方が涼しいのだ。とにかく暑さをいかに凌ぐかが最大のポイントという、非常にワイルドな家だ。半分山の中に埋まっているため、外に出ると天井部分に当たる山肌のそこここから換気の煙突状のパイプが突き出ている。その部分に上って周囲を眺めると、ほとんど周りが赤い地肌の、火星のような世界が広がっている。美しいといえば美しいが、やはり普通の人にとっては生活をためらわせると思える。


こないだたまたまDVDで見た朝日放送の「劇的 ビフォーアフター」で、ポルトガルの山の上で、四方を岩で囲まれた家に住んでいる者がいた。元々お互いにもたれかかるようにそそり立っているいくつかの巨岩を繋ぐように壁を作り、家にしてしまったものだ。「オフ・ザ・グリッド」の場合は、岩盤を掘削して作った家であるが、いったん中に入ると岩肌が露出している壁の趣が一緒だ。匠によると構造材と壁材が兼ねており、強度的にもまったく問題ないらしい。こういう暮らし方もある。


その次に見たエピソードでは、今度はオーストラリアの、こちらは快適な町メルボルンから、彼女のいるノルウェイの沖合にあるスヴァルヴァール諸島に越してきて、イヌぞりを引くイヌたちを育てるのが夢というやたらとアウトドア志向の男性と彼女をとらえる。


このスヴァルヴァール諸島、クーバー・ペディと逆で、今度は著しく寒い。距離的にはノルウェイに出るより北極の方が近いくらいで、人間が定住している町としては世界最北らしい。因みにグーグル・マップで位置を調べたところ、マウス操作しても地図がそれ以上上にスクロールしていかない。北限だからだ。一年のほぼ半分は白夜で日が沈まず、もう半分は今度は常に夜で朝が来ない。人口は3000人だが北極クマの数は4000頭と人口より多い。番組収録時は夏ということだったが、雪がちらつき始めた。こんなんじゃ真冬がどうなるか、想像を絶する。私ならクーバー・ペディも到底耐えられそうもないと思ったが、スヴァルヴァールはもっと無理だ。


こういう場所に建つ家は、住んでいる者たちの体格に反してほとんどが小さい。冬の暖房コストを最小限に抑えるためだ。身長は高いのに天井は低いので、手を上に伸ばすと天井に手が届いてしまう。そういう物件の中からカップル (というか彼) が選んだのは、必要最小限の設備しか整っていない、家というよりはほとんど山小屋で、おかげでかなり安いようだが、トイレは外、しかも汲み取りという、今の時代そんなんがまだあるかという物件だ。冬、おしっこがしたくなったら、-30Cの中を外に出なければならない。それでもアウトドア志向の彼はうきうきしているのだった。


しかしクーバー・ペディと同じく、手つかずの自然を残すスヴァルヴァールの景色は、それはそれで確かに美しい。それでも旅行で訪れるならともかく、住みたいとは決して思わないが。それにしても家もの番組は、見ていて飽きない。











< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system