ハリー・ポッター (ダニエル・ラドクリフ) と友人のロン (ルパート・グリント)、ハーマイオニー (エマ・ワトソン) らは、新学期を迎えるために魔法学校に帰ってくる。学校へ向かう列車の中で、ハリーらは死神ディメンターに襲われるが、そこを救ってくれたのが、学校に新しく赴任してきたルービン先生 (デイヴィッド・シューリス) だった。一方、脱獄不可能と言われていたアズカバン牢獄から、シリアス・ブラック (ゲイリー・オールドマン) が脱獄に成功する。しかもシリアス・ブラックは、ハリーの親の死と何か関係があり、ハリーを探し回っているというのだった‥‥


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別に今さら多言を弄して説明する必要もない、世界最大のベスト・セラー・シリーズの映像化の最新作。とはいえ、私は前2作は見ていない。原作も読んでない。いくら話題作といえども、わざわざ子供向け作品を見たり読んだりする気になぞまったくならないし、それでも、実は周りの評価が高いのならと内心は思っていたのだが、見た大人のほとんどが、別に金を払って見に行くほどの価値があるわけではないと口を揃えるので、ほとんど興味を失っていた。


それが今回に限って興味を惹かれたのは、これまでのクリス・コロンバスに代わって演出に抜擢された、アルフォンソ・クアロンの存在にあるのは言うまでもない。元々クアロンは「リトル・プリンセス」も撮っているわけだから、子供向け作品も撮れるのは既に証明済みなのだが、しかし、とはいえ、「天国の口、終りの楽園。」を撮ってしまったクアロンがまた子供向け作品に帰ってくるというのか。


なんでも今回の「ハリー・ポッター」は、ハリーを中心とする主人公3人組が、成長して思春期の入り口に立ち、大人になる一歩手前で悩み始めるというのが展開の骨子になっているらしい。なるほど、それならばいかにもクアロンらしい題材と言えなくもない。しかも、今回の「ポッター」は、評もいい。最近の子供向け作品としては、「シュレック2」と並んで、大人の鑑賞にも堪えると断トツに受けがいいのだ。これは確かに見てみたいという気にさせる。


ポスターで見ても、最近、当然のことながらひっきりなしに登場するTVで見ても、主演のハリーに扮するラドクリフは、成長したという感がありありとする。もちろん共演のグリントやワトソンもそうで、特にワトソンは、もちろん以前も可愛かったが、これはあと2、3年経ったらかなりの美人になるだろうなと思わせる。しかも、ちょっと性格の悪い美人になりそうだ。なんというか、派閥を作って気に入らない奴を虐めそうな、気位の高そうな感じがありありとする。


というわけで、本当に久し振りに子供向け作品とやらを見に行ったのだが、実は作品そのものよりも、ただただ、これでもかとばかりに起用される英国俳優陣の総出演に圧倒されて帰ってきた。内容なんて、実はほとんど覚えてない。リチャード・ハリスを一度も見ることができなかったのは残念だが、代わりに魔法学校の校長に扮するマイケル・ガンボンを筆頭に、先生陣にアラン・リックマン、マギー・スミス、エマ・トンプソン、ロビー・コルトレーン、デイヴィッド・シューリス、他の主要な役にゲイリー・オールドマン、ティモシー・スポールと、これだけでもうげっぷが出る。


これだけの俳優陣を惜し気もなく起用できるどころが、金に糸目をつけないハリウッド大作の最大の長所でもあり、短所でもある。短所とは、もちろんそのせいでストーリーなんてどうでもよくなって、主人公に目が行かなくなってしまうところにある。別にあんな小僧ほっとけ、子供はほっといても育つ。それよりももうちょっとシューリスに芝居させろ、もうちょっとガンボンを見させてくれ、トンプソンのオーヴァーアクションもそれなりに楽しめるな、オールドマンはまだ話に絡んでこないのかと、そちらの方ばかりが気になってしょうがない。それにしてもリックマンのこわもてって似合っているなあ。


実際の話、「ハリー・ポッター」はこれからもまだ続いていくわけだし、私のいとこの話だと、たぶん、主人公が成長して様々な要素が絡むこれからこそ、原作は本当に面白くなるだろうと言っていた。アメリカでおそらく最大の書店チェーンのバーンズ&ノーブルでバイヤーとして働き、常に売れ線の本に目を光らせている彼の言うことだから、信用できると思う。私の意見だと、ハリーやハーマイオニーがあと二つ三つ歳をとって、どうやって彼らがヴァージンを失うかなんて話になったら、それこそその映像化においてはクアロンの本領発揮と相成り、文句なしに面白くなると思うが、基本的に子供文学である「ハリー・ポッター」シリーズが、果たしてそういう方向に向かうかどうか。そういう意見を持つだけで原作ファンから非難が集中しそうな気もしないでもない。 






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ハリー・ポッターとアズカバンの囚人  (2004年6月)

 
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