クラリス (Clarice)

放送局: CBS 

プレミア放送日: 2/11/2021 (Thu) 22:00-23:00 

物語: 1993年。バッファロー・ビルの事件から1年、いまだにトラウマの残るクラリス (レベッカ・ブリーズ) はカウンセラーにかかりながらも、職務へ復帰する道筋を模索していた。クラリスがバッファロー・ビルから救い出した女性の母親であるルース・マーティン司法長官は、FBIの新ユニットにクラリスを任命するが、上司のポール・クレンドラー (マイケル・カドリッツ) は、マスコミ受け狙いのスタントとしてそのことを快く思っていなかった。川で女性の死体が発見され、連続殺事件の疑惑が持ち上がる‥‥ 

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「クラリス」とは、主人公クラリス・スターリングの名だ。と言えば、多くの者は、「羊たちの沈黙 (The Silence of the Lambs)」でジョディ・フォスターが扮したあのクラリスかと、すぐに思い出せるだろう。あるいは、「ハンニバル (Hannibal)」のジュリアン・ムーアの例もある。 

 

今回のTVシリーズの「クラリス」は、フォスターの演じた「羊たちの沈黙」から1年後、まだバッファロー・ビル絡みの悪夢の経験から完全に抜け出せていないクラリスを描く。猟奇事件のせいで一躍マスコミの寵児となったクラリスは一時捜査の一線から遠ざかっていたが、彼女がバッファロー・ビルの魔の手から救い出した女性の母ルースは米司法長官であり、クラリスをまた職務に復帰させることは、女性の権利向上や自分自身のキャリアにとっても有効だと考えていた。 

 

クラリスは現場に復帰するが、直の上司のクレンドラーは、クラリスの復帰をマスコミ対応のスタントだとして快く思っていなかった。番組はいまだメンタル的に完全復活とは言えないクラリスが、上司の偏見の目と闘いながらも職務を遂行していく姿を描く。 

 

個人的には、番組としての今後の最大の焦点は、果たしてクラリスはハンニバル・レクターと再会する可能性はあるのか、あるのならそれはどういうシチュエイションなのかという点に尽きる。クラリスは、確かに印象的なキャラクターではあるが、それでも、やはりクラリス本人ではなく、「羊たちの沈黙」でハンニバル・レクターを演じたアンソニー・ホプキンスが、舌をべろべろしながら「クラリース」と呼ぶ相手がクラリスという、ハンニバル・レクターを経由した印象の方が強い。

ムーアの「ハンニバル」は、「羊たちの沈黙」の7年後という設定だった。「クラリス」は「羊」の1年後という設定なので、その間に挟まることになる。確か「ハンニバル」では、「羊」以降ハンニバル・レクターは完全に行方を眩ませたという設定だったはずだから、「クラリス」において二人が接触する可能性は小さい。 

 

とはいっても、やっぱり夢想してしまうのだった。その時ハンニバルをアンソニー・ホプキンスが演じるのは無理だとしても、TVの「ハンニバル (Hannibal)」でハンニバル・レクターを演じたマッツ・ミケルセンなら可能性はあるんじゃないか。別に本当に再会しなくても、ハンニバル・レクターがクラリスを遠くから眺めているみたいな構図は、「クラリス」製作ティームの頭の中にあるのは間違いないと確信する。クラリスの背景にハンニバル・レクターを垣間見ない者はいないと思う。やはり最も印象に残るのは、ハンニバル・レクターなのだ。 

 

一方、ハンニバル・レクターが主要人物の作品で、ハンニバル以外でクラリスと並んで最も知られているのは、TV版「ハンニバル」と「レッド・ドラゴン (Red Dragon)」におけるプロファイラーのウィル・グレアムだろう。TVの「ハンニバル」は、事実上ハンニバル・レクターとウィルの二人が主人公だった。等々と考えていくと、どうしてもハンニバル、欲しいよなあと思ってしまう。 

 

しかし、たぶん「クラリス」は、時宜的に一人の女性としての主人公クラリスを描くものだと思える。クラリスを演じるレベッカ・ブリーズが、いかにもこれから自立して行くという雰囲気を出している。ローズ・バーンとロビン・タニーを足して割ったような顔立ちで、そういえば彼女たちもそういう役柄が多かった。