アメリカン・ニンジャ・ウォリアー: USA vs. ザ・ワールド

American Ninja Warrior: USA vs. the World

放送局: NBC

プレミア放送日: 9/15/2014 (Mon) 20:00-23:00

製作総指揮: アーサー・スミス、ケント・ウィード

ホスト: マット・アイズマン、アクバー・バジャ-ビアミラ

フィールド・レポーター: ジェン・ブラウン


アメリカ選抜: ブライアン・アーノルド、エレット・ホール、ポール・カシミア、ジョー・モラフスキー、トラヴィス・ローゼン

日本選抜: 山本進悟、又地諒 、朝一眞、菅野仁志、森本裕介

ヨーロッパ選抜:ティム・シーフ、ショーン・マッコール、ステファノ・ギゾルフィ、ミシュカ・ステラ、ヴァディム・クヴァキン


内容: 日本代表の「Sasuke」選抜メンバーおよびヨーロッパ選抜メンバーをアメリカに呼び、ラスヴェガスのマウント・ミドリヤマ施設でアメリカ代表のニンジャ・ウォリアー・チームと戦わせる。


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American Ninja Warrior: USA vs. the World


アメリカン・ニンジャ・ウォリアー: USA vs. ザ・ワールド  ★★★

アメリカではNBCが製作放送している、東京放送の「Sasuke」のアメリカ現地製作版「アメリカン・ニンジャ・ウォリアー(ANW)」は、結構人気がある。現在ではTVシーズンの合間である夏場に、全米の予選の模様から撮影し、夏中をかけてシリーズとして毎週放送、クライマックスにはラスヴェガ スに特設したアメリカ版聖地ミドリヤマにて参加者が最終挑戦する様をとらえるのが、夏の定番となっている。


シーズンを数えるに連れ、ANWにも「Sasuke」同様オールスターズのようなヴェテランが現れて、そしてそれらのヴェテランが徐々に代替わりしていくという、本 家同様の展開になってきた。そしてヴェテランが、なぜだかここぞというところで失敗して、予選や第1ステージで消えていくというパターンが頻発するようになるのも、これまた本家と同じ展開だ。


特にその印象が強いのが、一昨年ただ一人第3ステージまでコマを進め、アメリカ 人として初めてクリフハンガーを成功させたブレント・ステッフェンセンで、彼は一躍寵児となりながら翌年予選落ち、推薦で本戦に進むもやはりすぐに脱落、 今年も同様といいところがない。ANW版山田となりつつある。


一方その逆に今年一躍脚光を浴びたのが、そのステッフェンセンのガールフレンドであるケイシー・カタンザロだ。カタンザロは体操選手で身長150cmと小柄、それで体格に何倍も勝る男子選手に挟まれながら同じコースにハンデなしで挑戦、見事にそり立つ壁を征服した。


それだけでもすごいのに、カタンザロはさらに二次予選までクリアしてしまった。ANWの予選は一次予選では障害物の最後にそり立つ壁がある。二次予選は同じステージ内で一次予選の障害物+新障害物があり、その中にはサーモン・ラダーも組み込まれている。わりと疲れた段階でサーモン・ラダーが現れ、それを克服しないとならない上、その後にさらに難しそうな障害物がある。


要するに「Sasuke」の第1ステージと第2ステージを足したようなのが二次予選で、しかも障害物自体もかなり難しそうだ。それなのにちゃんとそれをクリアする挑戦者が何人もいる。本家オールスターズがアメリカン・オールスターズに勝つのは難しいだろうと、近年のANWを見ていると思う。明らかにANWの障害物の方が難しそうに見えるのだ。これをクリアしてきた相手に勝てる気がしない。


そしてカタンザロは、ただ一人女性で二次予選までのすべての障害物をクリアした人物となった。一次予選でそり立つ壁をクリアした時もおおっと思ったが、二次予選でサーモン・ラダーをクリアした時には、まさか女性がこれを成功させることがで きるとはまったく考えてなかったので、本気で驚いた。しかもその直後には、振り子のように揺れる大きなカラビナみたいな吊り具から吊り具に移動するという障害物が待っていた。ウィング・スパンの小さいカタンザロでは、こればかりは次の吊り具に手が届かない。どんなに運動神経やセンスのよさをもってしてもどうにもできまい、できるわけがない、しかしここまでよくがんばった、あんたはえらいと思っていた。


そしたらカタンザロ はまるでサルみたいに跳躍してこれも成功させ、後にも先にも女性でただ一人の予選制覇者となった。体格のハンディキャップを考えると、男性がミドリヤマを 完全制覇するよりすごいと思う。無事予選を通過して本線に進んだカタンザロは、しかし、ジャンピング・スパイダーを成功させることができずに第1ステージ で涙をのんだ。それだって彼女の上背があと数センチあって足があと数センチ開けばいけそうなぎりぎりのところで落ちたのであって、本当に、あとほんの僅かのところだった。彼女は本当にすごい。


こういう新スターの出現もあってANWはますます人気を高めているのだが、この 人気にあやかって、NBCは昨冬、日本から若手のSasukeオールスターズを呼び寄せ、アメリカの選抜チームと対戦させる特別版を製作した。これでは日本チームがアメリカ・チームに完膚なきまでに叩きのめされ、本家の面目は失墜した。このまま終わるわけには行かないから、これは是非2か国対抗戦をレギュラー化し、来年こそは雪辱を果たしてくれと思っていたら、冬を待たずにその機会が巡ってきた。しかもアメリカ対日本ではなく、さらにヨーロッパまで巻き込んだ世界3地域選抜対抗のスペシャル版が、今回の「アメリカン・ニンジャ・ウォリアー: USA vs. ザ・ワールド」だ。もちろんアメリカで「ANW」が流行っているのは重々承知だが、ヨーロッパにも進出していたか。時々ヨーロッパからも参加者がいるのは 目にしていたが、代表を組めるほどまでだとは知らなかった。


勝負のルールは前回の「USA vs ジャパン」と基本的に一緒だが、前回は1ステージで勝者が多い方が一つのステージで1ポイント獲得となっていたものが、今回は3チームの競技者対抗で、1ステージにつき1チームから3人ずつ登場、勝てば一人一人が1ポイント獲得する。第2ステージでは勝てば一人につき2ポイント、第3ステージでは3ポイントが与えられる。つまり第1ステージの総合ポイント数は3ポイント、第2ステージでは6ポイント、第3ステージでは9ポイントだ。もちろん最終的に最も多いポイントを獲得したチームの勝ちだ。


日本チームは漆原裕治が抜け、代わりに新星の森本裕介がメンバー入りした。しか し、それにしても気になるのはヴェテラン山本進悟の存在だ。彼はムードメイカーとしてはいいかもしれないが、ポカが多過ぎる。先頭バッターとしてもしうまく行けば大きな推進力になるかもしれないが、そうならなさそうな不安要素が大き過ぎる。


と思っていたらやっぱり案の定、 山本は前回に引き続き、今回も第1ステージ、それもほとんど初っ端のジャンピング・スパイダーで落ちた。お前最近日本だろうがアメリカだろうが、ほとんど 第1ステージクリアできてないんじゃないのか。続く菅野はなぜだかそり立つ壁をクリアできず、これまた前回に続いて入れ込み過ぎで、こりゃやばいなと思っていた朝も、山本同様ジャンピング・スパイダーで落ちる。既に暗雲立ち込め過ぎだ。


第2ステージでも日本チームの不振は止まらず、森本がバタフライ・ウォールで、又地と菅野に至っては、最初の障害物のロープ・ジャングルすら攻略できない。まるでいいところのない日本、特に菅野の不調振りは見ていて痛々しいくらいだ。


もうほとんどチャンスが風前の灯火となった第3ステージ、日本は再度朝が登場、第1ステージにも増して気負う朝は、今度は最初の障害物のキャノンボール・イ ンクラインで敢えなく落下、あまりもの不甲斐なさにくそっ、くそっ、くそっと大声で水の中で叫びわめく朝、チームの面々もかける言葉が見つからない。続く森本は日本チームで初めてクリフハンガーを含め障害物を全部クリアするが、喜びも束の間、ヨーロッパのギゾルフィにそれよりも早いタイムを出される。前回第3ステージで唯一の勝利者となった又地もステージ・クリア、しかしこれまた前回同様USAのアーノルドとの接戦になり、今回はアーノルドのタイムの方が早かった。


結局第3ステージを終わった時点で獲得ポイントは、USA 9ポイント、ヨーロッパ 9ポイント、日本 0ポイントと、日本はいいところなく壊滅した。USAとヨーロッパは同率首位となったため、勝者決定のため両チームから一人ずつ出して第4ステージのヴァーティカル・クライムに挑む。先攻のUSAはローゼンが35秒77というタイムで見事クライムを完遂させるが、後攻のヨーロッパはマッコールが35秒46という僅か10分の3秒差でローゼンをうっちゃり、見事チャンピオンに輝いた。それにしてもこいつら、すげえ。


前回もポイントでUSA 6ポイント、日本 0ポイント、勝敗でUSAの9勝1敗と大差ついていたわけだが、それでも各々の勝負だけを見ると、数字ほど差があると感じたわけではなかった。しかし今回は、今度こそ日本チームはぐうの音も出ないほど叩きのめされたという感じ。今後日本チームがもし本当にアメリカでも勝とうと思っているなら、まず第一に山本は連れてくるな。彼はオブザーヴァーもしくはコーチ、チームリーダーとしてなら有用だと思うが、競技者としては起用は危険過ぎる。朝もメンタル面で安定しないと安心して任せられない。今後は森本の成長と、その他のメンバーの安定感を増すことが鍵だ。


ところで話は変わるが、本家 「Sasuke」ファンでもある私たち夫婦は、東京放送の「Sasuke」も毎回DVDを手に入れて視聴している。しかし今夏の「Sasuke」で、放送前にホストが、今回は久し振りにファイナル・ステージ進出者が出ますと言ったのには唖然とさせられた。


「Sasuke」 の面白さは、何はともあれスポーツの面白さと同一だ。次に何が起こるかわからないからいいのであって、今回はファイナル進出者が出ますと先に言われてしまっては身も蓋もない。それでは番組の面白さを半減、いや、7割くらい殺してしまっている。いったい何をカン違いしてしまったからこんなバカなことを言っ てしまうのか。ゲストも、え、そんなの言ってしまっていいんですかとキツネにつままれたような顔していた。


たぶん最近完全制覇者が出ていないことを気にしたディレクターが、ちょっと煽るためにファイナル進出者がいることを最初に言ってくれと指示したものと思われる。さもなければこんなのホストが独断で言っちゃうわけがない。しかし、それを指示したディレクターは、クビを切って然るべきと言わざるを得ない。こういう根本の判断を誤る人間は、ディレクターとしての資質を抜本的に欠いている。作る奴がこうだから、出る奴も最近精彩を欠くんじゃないのと思ってしまう。しかし、今のちょっと煮詰まった状況は、逆に言うと思い切った改革には適していると言えないこともない。「Sasuke」も曲がり角に来ているという感触ありあり。










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