12.12.12 ザ・コンサート・フォー・サンディ・リリーフ   (12-12-12: The Concert for Sandy Relief)

放送局: アメリカの主要チャンネル、およびインターネットを通じて世界各地 

放送日: 12/12/2012 (Wed)

製作: デンプシー・プロダクションズ、ザ・ウエインスタイン・カンパニー 

製作総指揮: ジェイムズ・ドラン、ハーヴィ・ウエインスタイン 

 

内容: 10月末にアメリカ北東部を襲い甚大な被害を与えたハリケーン・サンディの被災者救援のためのベネフィット・コンサート生中継。


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12.12.12 the Concert For Sandy Relief


12.12.12 ザ・コンサート・フォー・サンディ・リリーフ   ★★★1/2

10月末にアメリカを襲ったハリケーン・サンディは、東海岸に壊滅的打撃をもたらした。あまりもの広範囲におよぶ被害のため、復興は遅々として進まず、家を失い路頭に迷うことになった者たちも多かった。昨年上陸したハリケーン・アイリーンも大きな被害をもたらしたが、サンディはその比ではなく、どこから復興に手をつけたらいいかわからないくらい甚大なる爪痕を残して去っていった。いまだに仮り住まいを強いられている者も大勢いる。 


ニューヨークで収録している深夜トーク・ショウはそのため、収録スタジオに観客を集めることができなかった。公共輸送機関が動いてないし、実際問題としてシティには外出禁止令が発令された。それで番組がどうしたかというと、CBSのデイヴィット・レターマンがホストの「レイト・ショウ (Late Show)」とNBCのジミー・ファロンがホストの「レイト・ナイト (Late Night)」は、スタジオに観客を入れずに、まったく無人の観客席を相手に、いつも通り収録を行った。誰も人のない観客席を相手に、やりにくいと言いつつもギャグのモノローグをかましていた。自分たちも休もうという発想はなかったのか。


普段はLA収録だが、特別に生まれ故郷のニューヨークのブルックリンに帰ってきてNYヴァージョンを収録しているABCのジミー・キメルがホストの「ジミー・キメル・ライヴ (Jimmy Kimmel Live)」だけが、意地でもという感じでちゃんと集めた観客を前に収録を行った。キメルがNYヴァージョンを収録したブルックリンのダウンタウンは、NYでも最も被害の大きかった地域の一つだったんだが。

いずれにしても、そういう危急の時に間髪を入れずに救援の手を差し伸べようとするのはアメリカの美徳の一つであり、今回のチャリティ・コンサートもその一環だ。既にこれに先立つひと月ほど前にはNBCが、今回も出ているジョン・ボン・ジヨヴィやブルース・スプリングスティーンに歌わせる一時間の特番を企画放送している。 
 
今回は準備に時間の余裕もあり、スタジオでの演奏ではなく、マンハッタンのマディソン・スクエア・ガーデンに観衆を集めての一大コンサートとなった。パフォーマンスを行う者も前回同様のボン・ジョヴィやスプリングスティーンに加え、 ザ・ローリング・ストーンズやポール・マッカートニーという、アメリカのアーティストだけではなく、英国のアーティストも多数参加した。 
 
というか、メンツを見てみるとやたらと英国のアーティストが多く、これでは英国のチャリティ・コンサートにアメリカからも多くが参加した、みたいな人選になっている。こういう時の人選って、誰がどうやって決めるんだろうか。特に正式なホストとして発表はされていなかったが、要所要所に出てきてそれ風な役を受け持たせられていたのが、ビリー・クリスタル。もちろん彼はニューヨークの出身だ。 
 
パフォーマンスの方は、オープニング・アクトがスプリングスティーンとEストリート・バンド。いきなり全開という感じ。「ボーン・トゥ・ラン」ではボン・ジョヴィも出てきて一緒に歌う。実はスプリングスティーンもボン・ジョヴィも、出身はニューヨークではなく、今回ニューヨークと共にほぼ被害を二分したニュージャージーの出身だ。 
 
スプリングスティーンの次に登場したのは元ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズで、なんでここでウォーターズとは思うが、しかしまた 「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール」を聴けるのは嬉しいので、当然歓迎する。特にこの「ウォール」は、ニューヨークの子供たちによるアフリカン・ダンスつきで印象的だった。 
 
その後ウォーターズ以外にも、エリック・クラプトン、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、クリス・マーティン、ポール・マッカートニーという英国アーティストが次々と登場する。ストーンズはたまたま結成50周年! のツアーでアメリカを訪れており、時宜的に可能だったからスペシャル・ゲスト的なのりで出演したという感じが強し。2曲だけ歌ってさっさと引っ込んだが、「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」の冒頭、歌詞にハリケーンが出てくるところなんかは、それはそれでコンサートの意義と合ってなくもなかった。とはいえ直前に出てきたジミー・ファロンが興奮気味にストーンズを紹介していた割りには、あっさりと終わった。 


また、ウォーターズのパートにパール・ジャムのエディ・ヴェダーが出たり、トリのマッカートニーのところでクリス・ノヴォセリック、デイヴ・グロール、パット・スメアなんてニルヴァーナのリユニオンがあったりして、これでは本当に英国でのコンサートにアメリカ人アーティストがゲスト参加しているみたいだ。 

 

しかし今回の英国勢襲来において個人的に私が最も印象に残ったのは、、ウォーターズでもクラプトンでもストーンズでもフーでもマッカートニーでもなく、コールドプレイを離れて個人として参加したクリス・マーティンだ。彼がスーツ着てネクタイしているところなんて初めて見た。スーツ着ないとと思ったんだろうか。また、ここでもマイケル・スタイプが助っ人として現れるなど、やはり主従逆転している。進行役みたいな感じのブライアン・ウィリアムズが、スタイプが出るのはこちらも知らなかったと驚いていたくらいだから、急遽決まったんだろう。マーティンも、引退していたスタイプを引きずり出してきたとジョークを飛ばす。

 

それにしてもマーティンとスタイプが親交があったなんて知らなかったし、マーティンがR.E.M.の「ルージング・マイ・リリージョン (Losing My Religion)」をスタイプとハモるのにも驚かされた。人の曲だってのにやたらとギターもうまい。観衆に向かって、本当はあんたらが見たいのはワン・ディレクションなんだろうけど、もう彼らはベッドタイムなんだっていう軽く皮肉の利いたジョークにも笑った。 
 
一方、もちろん英国勢だけではなく、生まれも育ちもニューヨークのビリー・ジョエル (というよりも、彼の場合はロング・アイランドだが)、アリシア・キーズという生粋のニューヨークのアーティストも当然いる。ジョエルはますます肉がついて禿げて貫禄ついて、これではどこから見てもギャング・メンバーの一員だ。あの、いかにもニューヨーカーという感じのセンシティヴそうな青年は、いったいどこに行ってしまったのか。 

 

アメリカ人アーティストでも、逆に浮いていると感じさせたのがカニエ・ウエスト。あの、スコットランドのタータン・チェックを真似したようなスカートもなにやら浮いていたし、こういう時でもどうしてもまず自分を先に主張してしまうんだよねえ。 


トリはマッカートニーだが、最後の最後にはキーズが再び出てきて「エンパイア・ステイト・オブ・マインド (Empire State of Mind)」を歌って幕。ジョエルの「ニューヨーク・ステイト・オブ・マインド (New York State of Mind)」と共に、ニューヨーク・テーマの代表曲だ。個人的にはこの2曲にクリストファー・クロスの「アーサーズ・テーマ (Arthur's Theme)」を加えた3曲が、ニューヨーク・テーマの現代3大楽曲だと思う。 


結局、当初夜7時半から零時までというスケジュールで始まったコンサートが終わったのは深夜1時半で、予定を1時間半もオーヴァーしてやっと終わった。マッカートニーなんて、あの歳でよくこんな深夜まで持つ。カウチに座ってただTVを見ているだけのこっちですらもういい加減疲れたと思っているのに。チャリティだろがなんだろうが、やはり人間最後は体力かと思うのであった。 


 
 
曲目: 


Bruce Springsteen and the E Street Band

     "Land of Hope and Dreams" with portion of "People Get Ready" 
     "Wrecking Ball" 

     "My City of Ruins" with portion of "Jersey Girl" 
     "Born to Run" (with Jon Bon Jovi) 

Roger Waters

     "In the Flesh?" 
     "The Happiest Days of Our Lives" 
     "Another Brick in the Wall (Part 2)" (featuring a youth dance troupe) 
     "The Ballad of Jean Charles de Menezes" 
     "Money" 
     "Us and Them" 
     "Comfortably Numb" (with Eddie Vedder) 

Adam Sandler and Paul Shaffer 
      "Sandy Screw Ya" (comedic take on Sandy and New York set to "Hallelujah") 
 
Bon Jovi 
     "It's My Life" 
     "Wanted Dead or Alive" 
     "Who Says You Can't Go Home" (with Bruce Springsteen) 
     "Livin' on a Prayer" (with a cappella intro) 

Eric Clapton 
     "Nobody Knows You When You're Down and Out" 
     "Got to Get Better in a Little While" 
     "Crossroads" 
 
The Rolling Stones 
     "You Got Me Rocking" 
     "Jumpin' Jack Flash" 
 
Alicia Keys 
     "Brand New Me" 
     "No One" with "Put your cellphones in the air" 
 
The Who

     "Who Are You" 
     "Bell Boy"
     "Pinball Wizard" 
     "See Me, Feel Me" 
     "Baba O'Riley" 
     "Love, Reign o'er Me" 
     "Tea & Theatre" 
 
Kanye West (all songs performed as a medley) 
     "Clique" 
     "Mercy" 
     "Power" 
     "Jesus Walks" 
     "All of the Lights" 
     "Run This Town" 
     "Diamonds from Sierra Leone" 
     "Diamonds Remix" 
     "Touch the Sky" 
     "Gold Digger" 
     "Good Life" 
     "Runaway" 
     "Stronger" 
 
Billy Joel 
     "Miami 2017 (Seen the Lights Go Out on Broadway)" 
     "Movin' Out (Anthony's Song)" 
     "Have Yourself a Merry Little Christmas"
     "New York State of Mind" 
     "The River of Dreams"
     "You May Be Right" 
     "Only the Good Die Young" 
 
Chris Martin 
     "Viva la Vida" 
     "Losing My Religion" (with Michael Stipe) 
     "Us Against the World" 
 
Paul McCartney 
     "Helter Skelter" 
     "Let Me Roll It" 
     "Nineteen Hundred and Eighty-Five" 
     "My Valentine" (with Diana Krall) 
     "Blackbird" 
     "Cut Me Some Slack" (with Krist Novoselic, Dave Grohl and Pat Smear of Nirvana) 
     "I've Got a Feeling" 
     "Live and Let Die" 
 
Alicia Keys 
     "Empire State of Mind (Part II) Broken Down" 











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