Rock Center with Brian Williams   ロック・センター・ウィズ・ブライアン・ウィリアムズ

放送局: NBC

プレミア放送日: 10/31/2011 (Mon) 22:00-23:00

製作: NBC

ホスト: ブライアン・ウィリアムズ


内容: プライムタイムの新ニューズ・マガジン。


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Rock Center with Brian Williams


ロック・センター・ウィズ・ブライアン・ウィリアムズ   ★★

近年ヒット番組に恵まれず、やることなすこと裏目に出てばかりいるNBC、今シーズンの最大の失敗は、AMCのヒット「マッド・メン (Mad Men)」の成功にあやかろうと製作した「ザ・プレイボーイ・クラブ (The Playboy Club)」の、目も当てられないほどの大ごけだった。


エミー賞の常連でもある「マッド・メン」をやっかみ、あやかりたいという気持ちはわかる。それが低迷している今のNBCならなおさらだろう。しかし、「プレイボーイ・クラブ」は明らかに番組としては失敗作だった。


だいたち、「マッド・メン」がケーブル・チャンネルのAMCで成功したのは、裸の描写や禁忌言葉の使用等に過敏過ぎる、ネットワークではできないことをやってみせたからだった。むろんネットワークではないとはいえ、ペイTVのHBOやショウタイムとは異なり完全に自主規制から自由なわけではないAMCのこととて、フル・ヌードや四文字言葉を堂々と採り入れているわけではない。


しかしそれでもほとんど最初から最後まで登場人物がタバコを吹かし、日中から酒を飲んでいる番組は、ネットワークでは作り得ない。こういう描写なくしては「マッド・メン」の成功はあり得なかったし、そしてそれは逆立ちしたってネットワークが作るわけにはいかないのだ。つまり、「マッド・メン」路線を追ったって、ネットワークが成功する可能性は最初からほとんどなかった。


むろん今シーズンのネットワークが編成したもう一本の「マッド・メン」追従番組であるABCの「パン・ナム (Pan Am)」は一応その辺にも目配せしており、独自のパワー・ゲーム番組にすることで「プレイボーイ・クラブ」よりはまだ見れたが、それでも成功は覚束なかった。結局「プレイボーイ・クラブ」は今シーズン最も早くキャンセルされた番組になっちまったし、「パン・ナム」も公式のキャンセルの発表こそまだないが、このまま消えて行くだろう。


そのキャンセルされた「プレイボーイ・クラブ」が編成されていた月曜夜10時枠に10月最終週から投入されたのが、時事問題報道解説のニューズ・マガジン、「ロック・センター・ウィズ・ブライアン・ウィリアムズ」だ。


ブライアン・ウィリアムズとは、もちろんNBCの毎夕方のワールド・ニューズ、「ナイトリー・ニューズ (Nightly News)」アンカーのウィリアムズのことだ。要するに、NBCのニューズ部門の顔だ。現在各ネットワークのワールド・ニューズで最も多くの視聴者を獲得しているのが「ナイトリー・ニューズ」であり、したがってウィリアムズは、アメリカのハード・ニューズの顔と言っても差し支えない。


そのウィリアムズをホストに起用し、製作するのが「ロック・センター」だ。「ロック・センター」とはNBCが入っているニューヨークのロックフェラー・センターの略称だ。要するに、「30ロック (30 Rock)」のロックと同じだ。そのロック・センター内のスタジオから発信するニューズ・マガジンが、「ロック・センター」だ。


とはいえNBCには既に「デイトライン (Dateline)」というヴェテランのニューズ・マガジンがあり、これにもう一本ニューズ・マガジンを増やす意味があるのかといういささかの疑問点はないこともなかった。それにウィリアムズの「ナイトリー・ニューズ」は毎夕の番組だ。この上また毎週のニューズ・マガジンを作るほど時間や精神的余裕があるのかという疑問もあった。要するに今回の編成は、そう視聴者に思わせてしまうほどNBCが追い詰められていることの証明であるとも言える。


とはいえ番宣コマーシャルは、ウィリアムズの乗っているエレヴェイタにいきなり番組を手伝うテッド・コッペルが乗り込んでくるというもので、これにはおお、と思わせられた。ABCの「ナイトライン (Nightline)」を辞めさせられて以来、仕事らしい仕事をしていないコッペルがNBCで復活するか。「ナイトライン」はコッペルが辞めて以降、ややソフト路線で逆に視聴者を増やしているだけに、コッペルとしてはこの辺で汚名挽回したいところだ。


さらにケイト・スノウ、そしてハリー・スミスが乗り込んでくる。スミスもABCのコッペル同様、古巣のCBSの「アーリー・ショウ (Early Show)」で苦渋を飲まされてNBCに移籍してきた。コッペルといいスミスといい、こういうヴェテランに仕事を与える機会としても機能するなら、もしかしたら「ロック・センター」はなかなか得難い番組かもしれない。


番宣コマーシャルの最後にはエレヴェイタにセス・マイヤーズも乗り込んでくる。マイヤーズはNBCの「サタデイ・ナイト・ライヴ (Saturday Night Live: SNL)」でギャグのニューズを担当しているパーソナリティで、彼を見たウィリアムズは、隣りのナタリー・モラレスに、「彼はフェイクで我々の仲間ではない」と囁くというオチになっている。


番組のプレミア・エピソードの最初のセグメントは、スノウが、アメリカの市民権を得るために、アメリカに出産しにくる中国人の面倒をみるというビジネスを行なっている者にインタヴュウする。アメリカで生まれた者に対しては無条件に市民権を与えるというアメリカの法律を利用した、限りなく犯罪に近い合法ビジネスだ。


次のセグメントはリチャード・エンゲルが、次の市民革命となるか注目されているシリアの民衆蜂起の模様を伝える。ハリスは就職難のアメリカで今、ビジネスが急激に拡大しており、人手がいくらあっても足りないという油田ビジネスを紹介する。とはいってもねえ、どんなに仕事が欲しくても、やはり内陸部のど田舎に行ってブルー・カラー・ジョブに従事したいと考える者はあまりいないと思う。


とまあ、番組はごく普通のニューズ・マガジンで、ウィリアムズがメイン・ホストだからという特色は特には感じられない。「デイトライン」といったいどこがどう違うんだ。特にプレミア・エピソードの最後に、ウィリアムズの盟友であるコメディ・セントラルの「デイリー・ショウ (Daily Show)」のジョン・スチュワートが出てきてウィリアムズをよいしょするのは、なんだかなあと思わせられた。正直言って、天下のネットワークのワールド・ニューズのアンカーとエミー賞常連のトーク・ショウ・ホストがなあなあでじゃれあっているのを見るのは、アンチ・プロフェッショナルという印象も甚だしく、特に好もしいものではない。頼むから二人して肩なんか組まんでくれと叫びたかった。


ウィリアムズには時々こういう露悪趣味的なところがあって、よくNBCの「トゥナイト (Tonight)」や「SNL」にゲスト出演したり顔を出す。ボビー・フレイがフード・ネットワークの出たがり屋とすれば、ネットワーク・ニューズのフレイ的存在がウィリアムズだ。実力は誰もが認めているのに、それでもなにかと出しゃばりたがる。玉に瑕だ。


番組のお手柄としては、第2回でボブ・コスタスが今問題となっているペンシルヴァニア州立大のフットボール・チームの選手に対する性虐待スキャンダルで、チームのコーチ、ジェリー・サンダスキーに行った電話インタヴュウは出色だった。


このインタヴュウでサンダスキーは、裸になって遊びで選手を追い掛け回したことはあるが、虐待の事実はないと潔白を主張、しかし、これは無実の釈明どころか自分で自分の首を締めただけで、逆にどツボにはまった。彼が話すことを聞きながら、こいつ、自分で自分が何言っているのかわかってんのかと唖然とした。この話は翌日ありとあらゆるところで話題になっていた。


とはいえ、この功績はサンダスキーからこういう話を引き出したコスタスのインタヴュウ技術に帰すものであって、ウィリアムズとは関係がない。ウィリアムズは、もうちょっと手綱を引き締める必要があるように思う。









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