2007年9月16日に発表のあった第59回プライムタイム・エミー賞 (The 59th Annual Primetime Emmy Awards) 受賞番組と、私の予想成績と反省。
コメディ・シリーズ助演男優
私の予想: ジョン・クライヤー 「トゥ・アンド・ア・ハーフ・メン」
受賞したのは: ジェレミー・ピヴン 「アントゥラージュ」
そうでしたか。
ドラマ・シリーズ助演男優
私の予想: マイケル・インペリオリ 「ザ・ソプラノズ」
受賞したのは: テリー・オクイン 「ロスト」
またいきなり連敗かよ。
コメディ・シリーズ助演女優
私の予想: エリザベス・パーキンス 「ウイーズ」
受賞したのは: ジェイミー・プレスリー 「マイ・ネイム・イズ・アール」
当たらん‥‥。
ミニシリーズ/TV映画助演男優
私の予想: トマス・ハイデン・チャーチ 「ブロークン・トレイル」
受賞したのは: トマス・ハイデン・チャーチ 「ブロークン・トレイル」」
ちょっとやけになりかかってたぜ。
ドラマ・シリーズ助演女優
私の予想: ロレイン・ブラッコ 「ザ・ソプラノズ」
受賞したのは: キャサリン・ハイグル 「グレイズ・アナトミー」
ここは完全に外した。
ミニシリーズ/TV映画主演男優
私の予想: ロバート・デュヴォール 「ブロークン・トレイル」
受賞したのは: ロバート・デュヴォール 「ブロークン・トレイル」
「ブロークン・トレイル」は今年の穴だった。
ミニシリーズ
私の予想: 「第一容疑者: ザ・ファイナル・アクト」
受賞したのは: 「ブロークン・トレイル」
これまでとるとは思わなかった。
ヴァラエティ/ミュージック/コメディ・シリーズ (Variety, Music or Comedy Series)
私の予想: 「ザ・デイリー・ショウ・ウィズ・ジョン・スチュワート」
受賞したのは: 「ザ・デイリー・ショウ・ウィズ・ジョン・スチュワート」
本当に「デイリー・ショウ」は強いねえ。実はこの部門、予想でノミネート番組が昨年から「リアル・タイム」が消えただけ、と言っておきながら、中継を見ていたらちゃんと「リアル・タイム」もノミネートされていた。要するに昨年とまったく同じノミネートだったわけだ。何を見てカン違いしたのかは知らないが、要するに一次資料に当たらずに二次資料を丸写ししたからこんなことになる。来年からは気をつけよう。
ミニシリーズ/TV映画助演女優
私の予想: サマンサ・モートン 「ロングフォード」
受賞したのは: ジュディ・デイヴィス 「スターター・ワイフ」
デイヴィスは本当にエミーから好かれている。
TV映画
私の予想: 「ベリー・マイ・ハート・アット・ウーンディド・ニー」
受賞したのは: 「ベリー・マイ・ハート・アット・ウーンディド・ニー」
まあ、ここは外れるまいとは思ったけど。
ミニシリーズ/TV映画主演女優
私の予想: ヘレン・ミレン 「第一容疑者: ザ・ファイナル・アクト」
受賞したのは: ヘレン・ミレン 「第一容疑者: ザ・ファイナル・アクト
ここもかなり自信はあった。
リアリティ/コンペティション・プログラム
私の予想: 「アメリカン・アイドル」
受賞したのは: 「ジ・アメイジング・レース」CBS
さすがに今回はもうないと思ったのに (と昨年も同じことを言った。)
コメディ・シリーズ主演男優
私の予想: トニー・シャルーブ 「モンク」
受賞したのは: リッキー・ジャヴェイス 「エキストラ」
ここもかすりもしなかったな。
ドラマ・シリーズ主演女優
私の予想: キラ・セジウィック 「ザ・クローザー」
受賞したのは: サリー・フィールド 「ブラザース&シスターズ」
今回最初の本気の番狂わせ。
コメディ・シリーズ主演女優
私の予想: アメリカ・フェレーラ 「アグリー・ベティ」
受賞したのは: アメリカ・フェレーラ 「アグリー・ベティ」
なんとか当たってほつ。
ドラマ・シリーズ主演男優
私の予想: ジェイムズ・ガンドルフィーニ 「ソプラノズ」
受賞したのは: ジェイムズ・スペイダー 「ボストン・リーガル」
今回の最大の番狂わせ。そんなのありか。
コメディ・シリーズ
私の予想: 「アグリー・ベティ」
受賞したのは: 「30ロック」
ここも正しい路線で予想はしてんだけどねえ。
ドラマ・シリーズ
私の予想: 「ザ・ソプラノズ」
受賞したのは: 「ザ・ソプラノズ」
ここを間違えたら来年から予想はやめようと本気で思った。
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9月16日以前に発表のあったマイナー部門の受賞予測。
ノンフィクション・スペシャル
私の予想: 「ゴースト・オブ・アブ・グレイブ」
受賞したのは: 「ゴースト・オブ・アブ・グレイブ」
特に自信があったわけではないが。
ノンフィクション・シリーズ
私の予想: 「プラネット・アース」
受賞したのは: 「プラネット・アース」
ここはまず来るだろうと思った。
リアリティ・プログラム
私の予想: 「ザ・ドッグ・ウィスパラー」
受賞したのは: 「キャシー・グリフィン: マイ・ライフ・オン・ザ・D-リスト」
グリフィンってこんなに評価されてたっけ。
アニメーション
私の予想: 「ザ・シンプソンズ」
受賞したのは: 「サウス・パーク」
去年は「ザ・シンプソンズ」が来たのに。ここは異なる番組で交互にとるというのが不文律になっているようだ。ということは来年また「シンプソンズ」か。
総評 (反省と今後の対策)
今回のエミーは22部門予想して当たったのは9部門。前回の6部門からは挽回したとはいえ、勝率は4割に過ぎない。前回に較べ予想自体はしやすかったので、これは半分は当たってくれないかななどと虫のいい希望を持っていたのだが、そうは世の中甘くなかった。
今回のホストは「アメリカン・アイドル」のライアン・シークレストで、特に可もなく不可もなく。というよりは、放送後の番組評とかを見ていると、ほとんどの評者が不可と見なしているという印象を受けた。少なくとも去年のコナン・オブライエンの方がよりうまくまとめていたのは確かだろう。シークレストは、スタンダップでギャグで人を笑わせることができるほどの技術があるわけではないというのはバレバレという感じ。これでは4年後にまたFOXがエミーを中継する時に、再度シークレストがホストを頼まれる可能性はあまりなさそうだ。
式次第では今回、初めてステージの周りを観客席が取り囲む中央ステージ制を採用、最初にステージに立ったプレゼンターのレイ・ロマノも、こいつはやりにくくてしょうがない、しかも後ろには「ソプラノズ」の面々もいるし、とジョークを飛ばしていた。「ソプラノズ」と言えば、やはりよくも悪くもあの最終回が物議を醸したのを受けて、オープニングの「ファミリー・ガイ」のキャラクターを使ったギャグ・イントロでも、やはりあの幕切れがパロられていた。
誰が受賞するかという注目の部分以外で一番印象的だったのは、「ドント・フォーゲット・ザ・リリクス」ホストのウェイン・ブレイディが壇上に「ジ・オフィス」のレイン・ウィルソンとカニエ・ウエストを呼んで、カラオケで歌詞を見せずに歌わせてどちらがよく歌詞を覚えているかを競わせたギャグだ。そのウエストが自分の曲を歌わせられたのにもかかわらず、歌詞の最後のほんの些細な間投詞の部分を間違えて失格になった。ウエストはこれに先立つ一週間前、恒例のMTVの「ヴィデオ・ミュージック・アウォーズ」で多くの部門にノミネートされていながら一つも賞がとれず、「黒人にもチャンスを与えろ」と怒鳴っていたらしいが、その事実を踏まえてのいびりギャグという印象強し。
その次壇上に立ったジョン・スチュワートとスティーヴン・コルベールは、コメディ部門主演男優賞を受賞したリッキー・ジャヴェイスが会場にいなかったものだから、盟友の「オフィス」のスティーヴ・キャレルに上げますと宣言、それを聞いたキャレルが喜んで壇上に走ってくるという一連のシークエンスも結構笑えた。いずれにしても、今回はほとんどホストのシークレスト絡みで印象に残ったものがなく、その辺がマスコミから及第点をもらえない理由だろう。
今回最も物議を醸した点としては、2004年のスーパー・ボウルでのジャネット・ジャクソンのおっぱいポロリ事件以来厳しくなった米TVの検閲機構が、ここでも強く機能したことが挙げられる。そもそもの最初のプレゼンターであるロマノがステージ上でしゃべっている時、不意に中継が途切れてカメラが会場内を静止画像で映す音声なしの画像がかなり続いたので、これはFOXは中継ミスったなと思っていた。そしたらこれはミスでもなんでもなく、意図的で、要するにロマノがしゃべりの途中で、かつて「Hey! レイモンド」で共演したパトリシア・ヒートンが今秋からFOXの新シットコム「バック・トゥ・ユー」でケルシー・グラマーと共演することに対し、壇上からこの浮気者、「Screwing」と呼びかけたところ、とっさにカットの判断が下されたらしい。
それだけでなく、その後キャサリン・ハイグルがドラマの助演女優賞をとった時と、やはりドラマのこちらは主演女優を受賞したサリー・フィールドが壇上でのスピーチ中にも、中継が一時途切れた。もう、この辺の判断の基準というものはまったく恣意的としか言いようがなく、ハイグルの時なんて、自分が受賞して一瞬まさかと驚いたハイグル自身が、思わず口だけで、声に出さずに「Shit」と形作ったのが見咎められた。もしかしたら小さく言葉を発したのかもしれないが、マイクが拾っているわけではないため、音としては視聴者には聞こえなかったが、彼女が「Shit」と口の中で言ったのは、確かに口の動きではっきりとわかった。いずれにしても、カメラが切り換わった時には既に手遅れだったという体たらくだ。これではカットする意味がない。
フィールドの時は、興奮したフィールドが「Goddamn」と口走ったのが引っかかった。しかしこれも「Screw」同様、特に強い単語だという気はあまりしない。だからフィールドも気にせず発言したのだ。これはフィールドが、「Go...」と言ったのまでははっきり聞こえたが、次の瞬間にはカメラが切り換わった。フィールドは後で、だったら別のところで (この言葉を) 使うわと述べており、人によって使っていい言葉、よくない言葉の基準はまちまちであることを改めて証明した。要するにFOXのやったことは、とにかく臭いものには蓋式の方便でしかない。が、しかしやはり、そのちょっとしたミスの揚げ足をとられて、後でFCCから罰金食らうのは誰だって嫌なのであった。
むろんこれらのカメラの切り換えは、番組が本当にライヴなら不可能だ。それができるのは、近年はライヴだとこういう問題が起きるため、一応ライヴという建て前ではあるが、実際には数秒のタイム・ラグをおいて、ディレクターが問題がないか目を光らせながら中継しているからだ。そのため、誰かが不都合な言葉を発した場合、即座に反応してカメラや音声を切り換えることができる。とはいえハイグルのようにちゃんと声として聞こえるわけではない場合、その判断をするディレクターが一瞬迷う。どうしよう、と思った時には既にそのシーンは中継されてしまった後だった、ということが起きるのだ。フィールドの時も、「Goddamn」はよかったんだったっけ? とディレクターが一瞬考えたのは間違いない。だからワン・テンポ、カメラの切り換えが遅れたのだ。いずれにしても、FOXとしてはこれでFCCに対し、うちらは努力したという姿勢を見せることができる。最も重要なポイントはそこだ。
本筋の賞自体では、まず間違いなしと思えた「ソプラノズ」絡みで、とれたのがドラマ部門だけというのがまったく意外。確かに最終シーズンが他のシーズンと比較して特によかったとは言えないと思うが、それでも主演女優のファルコはともかく、まさか主演男優でジェイムズ・ガンドルフィーニまで落とすとは思ってもいなかった。主演男優賞を発表する壇上のケイト・ウォルシュが、ジェイムズ‥‥と言い始めたので、これでやっと「ソプラノズ」が一矢報いたかと思った次の瞬間、‥‥スペイダーと言った時は、本当に愕然としてしまった。これでもしドラマ部門でも「ソプラノズ」がとれなかったらどうしよう、これじゃほとんど予想する意味ないから、来年からはもう予想なしだなとほとんど悲壮な覚悟をしていた。
一方、的中確率は4割強に過ぎなかったとはいえ、今回は前回に較べてちゃんと筋読みは押さえており、「ソプラノズ」絡みで外したドラマ部門を除き、だいたいこれかこれと思ったそのどちらかがだいたい来るか、あるいは前年やその前年に予想した番組や俳優が遅まきながら受賞していたりする。要するに、番組のある一エピソードだけではなく、シリーズを通して頭を巡らせないといけないのもエミー予測の難しさであり、楽しさなのだった。
今年のエミーは、1990年に次いで史上下から2番目に視聴率が悪かったそうだ。インターネットを筆頭とする、新たに登場してくる様々な娯楽に押され、TVという媒体自体がかつてほどの訴求力がないため、それはしょうがない。それまで家庭での娯楽といえばTVくらいしかなかったというのがむしろ不自然なのだ。とはいえ、シークレストがホストを担当している「アメリカン・アイドル」の視聴者数は今回のエミー賞中継の視聴者数の2倍という結果を見ると、思わず溜め息をついてしまうのだった。