放送局: FOX

プレミア放送日: 8/23/1998 (Sun) 20:30-21:00

最終回放送日: 5/18/2006 (Thu) 20:00-21:00

製作: カーシー-ワーナー・プロダクション

製作総指揮: マーシー・カーシー、トム・ワーナー、ボニー・ターナー、テリー・ターナー

製作: フランコ・バリオ

監督: テリー・ヒューズ

脚本: カリオ・サレム

出演: トファー・グレイス (エリック)、ローラ・プリポン (ドナ)、ミラ・クニス (ジャッキー)、アシュトン・クッチャー (ケルソ)、ウィルマー・ヴァルデラマ (フェズ)、カートウッド・スミス (レッド)、デブラ・ジョー・ラップ (キティ)


物語: 第1回

1976年、ウィコンシン州の典型的な郊外の町ポイント・プレイス。ティーンエイジャーのエリック、ドナ、ケルソ、ジャッキー、ハイド、フェズは、今日も階上で親たちがパーティを繰り広げている中、地下室に集まってお喋りをして過ごしている。お酒も回って気分もよくなったエリックの父レッドは、彼が長年所有していた愛車をエリックに譲る計画を明らかにする。エリックたちはそれに乗ってロック・コンサートに出発するが、車が途中でエンコしてしまう‥‥


最終回

1979年12月31日、70年代最後の日。エリックとケルソは既に町にいず、ドナもまた大学に進学するために家を出ようとしていた。フォアマン家は家を売りに出し、皆が新しい道に踏み出そうとしていた‥‥


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アメリカのネットワークTVのシーズンは、毎年9月に始まり、翌年5月に終わる。5月には既に来る9月の新シーズンを睨んだ予定新番組が発表になる。つまり、当然その時点で、成績がよくなかった番組はそこで引導を渡されることになる。


シーズンの途中で、予定されていた回数を放送してもいないのに成績不振を理由にキャンセルされるのもきついが、こうやって何年か勤め上げた後で、じゃあお疲れ様でした、と後ろから肩をとんとんと叩かれるように追い出されるのも、やはり辛いだろう。とはいえ、たとえ今どんな人気番組であろうとも、いずれはこうやってキャンセルされる運命にある。今安泰だからといって、今後も楽観はできない。


さて、こうやって2005-06年シーズンも終わりを迎え、最終回を運命づけられた番組も当然あり、いつもながらの悲喜こもごもといったシーンが見られた。特に今年は、弱小ながらも頑張っていたUPNとWBが今季を限りに合併して今秋から新生CWとして発足することが決まっているが、それなのにCWは、当然秋の新番組も用意している。そのため、両チャンネルからキャンセルされざるを得ない番組がごそっと出た。


その中には、「チャームド」や「リーバ (Reba)」、「リレイテッド (Related)」のような、合併さえなければなんとか生き残れただろうなと思われる番組も含まれていた。一方で、もしかしたらダメかもと思っていた、「ヴェロニカ・マーズ」のような番組が生き残ったのは喜ばしい限りではある。またその一方で、一度は今季限りと最終回を迎えることが発表になっていながら、その最終回の視聴率がかなりよかったために前言撤回して、最終回になって大団円を迎えた後、今秋から新シーズンがスタートする「セヴンス・ヘヴン (7th Heaven)」のような言語道断番組もある。


人気があるなら何をやっても認められるアメリカTV界ということは重々承知してはいたが、それでも、こういうことをやられると肩の力が抜ける。最終回というから視聴者は、長年WBの屋台骨を背負っていた番組に敬意を表するためにチャンネルを合わせたのだということに、なぜ幹部は気づかない? 今後も続いていくということなら最初から見なかった。今秋に新シーズンが始まっても、期待通りの成績を上げることはできないだろうというのは、火を見るより明らかだというのに。


こんなそんなでシーズンも終わりの状況を眺め回していて、ふと、この5月は上記の「チャームド」だけでなく、ABCの「エイリアス」、NBCの「ウィル&グレイス」と「ザ・ホワイトハウス (The West Wing)」、FOXの「マルコム・イン・ザ・ミドル」と「ザット'70sショー」等、長期にわたって人気を博した番組が最終回を迎えることに気がついた。もちろん毎シーズン、それなりに長い間人気のあった番組がいくつかは最終回を迎えているわけだが、今回のそれらの番組は、「チャームド」や「ザット'70sショー」や「ホワイトハウス」のように、途中で主演が抜けてごたごたを経験した後も続いていたり (「ホワイトハウス」のロブ・ロウを主演と呼べるならだが)、「エイリアス」主演ジェニファー・ガーナーや「ウィル&グレイス」のデブラ・メッシングのように、プライヴェイトの妊娠のため大きく番組内容やスケジュールを変更せざるを得なくなったなど、なにかと話題を提供した番組が並んだため、なんとはなしにしばし感懐にとらわれた。そうか、これらの番組がこの一と月ですべて終わるのか。


その中でも「ザット'70sショー」が特に印象に残ったのは、いくつか理由がある。まだまだヒッピー時代の余韻を引きずる70年代、フォアマン家の地下でたむろっているエリックやケルソたちはまず間違いなく酒やドラッグをたしなんでいるはずなのだが、そこは天下のネットワーク、そういうことを正面切って描写するわけがない。それでもよく見ると、そんなことは一言も言ってないが、彼らがラリっているのは明らかだったりする。いかにもFOXのシットコムという感じで、こういうギャグは3大ネットワークではまずしないという描写が新鮮だった。


さらにこの番組の主人公、エリックに扮するトファー・グレイスは、その後スティーヴン・ソダーバーグに気に入られ、「トラフィック」「オーシャンズ・イレヴン」と彼の映画に連続して出て知名度を上げた。ちょっとカンにさわる生意気そうな若造という役をやらせると、抜群にうまい。最近はちょっと見かけないなと思っていたら、先日のMTVの「ムーヴィ・アウォーズ (Movie Awards)」で、冒頭、いきなりホストのジェシカ・アルバとの絡みのギャグで「M:i:III」のパロディを演じていただけでなく、調べてみると「スパイダーマン3」で最新の悪役を演じるそうで、やはり若者には人気があるようだ。


そのグレイスよりも人気が出たのが、ケルソを演じていたアシュトン・クッチャーである。一回り以上も歳が違うデミ・ムーアの恋人として (結婚したんだっけ?)、いきなり話題をさらった。ムーアと前夫のブルース・ウィリスとの間にできた子と一緒に並ぶと、恋人同士というよりもまるでムーアの息子みたいに見える。そのクッチャーがまた、「ジャスト・マリッジ (Just Married)」、「マイ・ボスズ・ドーター (My Boss's Daughter)」等のラヴ・コメ路線で若者に人気がある。


さらにMTVの芸能人専門の「どっきりカメラ」的番組「パンクト (Punk'd)」ではプロデューサーも務め、グレイスを上回る人気を誇る。そういえば「パンクト」では、「マルコム・イン・ザ・ミドル」主演のフランキー・ムニツも引っかかってたのを見たことがある。地のままのクッチャーは、いかにも頭は悪いが人がよくて憎めないアメリカ人の若者の典型という感じで、要するに「ザット'70sショー」のケルソそのままだ。一応上背もあって顔もいいクッチャーが女の子からもてるのはよくわかる。ムーアとのことははやまっていないことを祈る。


そして実は、これが意外中の意外なのだが、「'70sショー」で最も人気が出たのは主演格のこの二人ではなく、完全に脇でお笑いとりに徹するフェズに扮する、ウィルマー・ヴァルデラマなのだ。南米のどこかからの交換留学生という設定のフェズは、かん高い声で南米訛りの英語を喋ってボケをかます。どこから見てもいかにも脇役然としているのだが、実は現在、ハリウッド若手の同業者から最も人気があるのが彼で、今をときめくリンジー・ローハンとヒラリー・ダフがヴァルデラマをめぐってとり合いになったという話を聞くと、思わず、えっと耳を疑ってしまう。あんなのがいいわけ?


と、つい思ってしまうわけだが、実はこういう疑問も、本人の素の姿を目の当たりにすると氷解する。番組内でこそああいう大ボケをかましているわけだが、素顔のヴァルデラマは、なかなかハンサムでシャイな若者なのだ。フェズは完全に役を作っていたわけか。なかなかやるなあ。ヴァルデラマもクッチャー同様、MTVで自分の番組「ヨー・ママ (Yo Momma)」をプロデュースしている。タイトルともなっているヨー・ママというのは、つまり「おまえのかーちゃん‥‥」という、定番の罵倒フレーズの出だしである。その後に、「おまえのかーちゃんはあんまりでぶなので‥‥ (Yo momma so fat...)」とか、「あんまり痩せてるので‥‥ (Yo momma so skinny...)」あるいは、「あんまりバカだから‥‥ (Yo momma so stupid...)」みたいな感じで続く。


私がこれまでに聞いたことがあるやつでは、「おまえのかーちゃんあんまりでぶなので、他の人はその周りを回ってエクササイズしている」とか、「おまえのかーちゃんあんまりでぶなので、コンドルの巣として正式認定された」、あるいは「おまえのかーちゃんあんまり痩せてるので、横向いたら消えてしまう」みたいな、皮肉が利いているだけでなく、想像力に訴えかける頭の回転の速そうな罵倒ギャグがあったりして、なかなか捨てて置けない。それをアドリブでかました上に、一対一の勝負にして、勝ち抜きで勝者を決めようというのが、「ヨー・ママ」だ。


つまり「ヨー・ママ」は、「8マイル」であったようなラップ・バトルを、単純に罵倒フレーズのみで製作してみたものだ。ほとんどセットも人件費も要らない、安上がりのリアリティ・ショウの中でもたぶん最も安上がりの番組なのだが、上述のギャグのように、ツボにはまるとかなり笑える。スラング的表現も多いが、何を言っているか理解しようと必死になって聞き取りに身が入るから、上級者向きとはいえ、英語を勉強している人間にもうってつけの番組と言える。ヴァルデラマはこの番組をプロデュースした上に、ホストも担当している。「ヨー・ママ」は今春のMTVの新番組の中でもそれなりに話題になったから、今ではヴァルデラマの知名度は、少なくともティーンエイジャーの中ではクッチャーよりもグレイスよりも高いだろう。


そして人気としてはこの3人ほどではないが、実は私はドナを演じているローラ・ブリボンを、かなり気に入っている。美人の上に性格もよさげでプロポーションもよく、あのハスキーな声もまたいい。そういうと人はスカーレット・ヨハンソンを連想するだろうが、実際、彼女の持ち味はかなりヨハンソンに近い。スタイルという点ではブリボンの方がヨハンソンよりも勝ってたりするのだが、まあ、ヨハンソンほど知名度があるわけではない。


で、番組では当然主人公のグレイス演じるエリックと、ブリボン演じるドナという幼馴染み同士が恋に落ちるのだが、番組も何シーズンか続いた後、契約が切れたグレイスとクッチャーが番組を降りることを表明する。いきなり番組の主要登場人物が二人いなくなってしまったわけで、私はこの時点で「70sショー」もこれで終わりだなと思ったのだが、意外にもドナは新しいボーイ・フレンドを見つけ、番組は新しい展開になって続いていった。さりとて、こういうシリーズ番組に対しては、視聴者は主人公の顔で番組を記憶している。その主要登場人物が同時に二人いなくなってしまったことは、番組としてはやはり致命的だった。結局「'70sショー」の成績はジリ貧となり、キャンセルは避けられないものとなった。ここまで頑張ってきたことだけでも大したものと言える。


番組最終回では、エリックの両親が家を売りに出すことを決め、1979年最後の大晦日を迎える。登場人物がことあるごとに集まって酒やタバコやドラッグにうつつを抜かすのもこれが最後かもしれない。ドナも町を離れて進学する決心をする。そこへ最終回ということもあり、エリックもケルソも一時的に帰ってきて、ほんの僅かの間ながら、全員がまた顔をあいまみえるという展開だ。「ザット'70sショー」というタイトルの通り、番組の最終回が70年代の最後の日という設定なのが気が利いている。明日からは80年代なのだ。


因みにそれなりに人気番組だった「ザット'70sショー」は、スピンオフ番組として今度は80年代を舞台とした「ザット'80sショー」も製作されているが、こちらの方はほとんど泣かず飛ばずで、結構すぐに番組はキャンセルされた。時代が近すぎて、視聴者がまだ懐古的な気分にはなれなかったせいかもしれない。





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That '70s Show


ザット'70sショー   ★★1/2

 
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