Shark Tank   シャーク・タンク

放送局: ABC

プレミア放送日: 8/9/2009 (Sun) 21:00-22:00

製作: ボビー・ワイズマン・ケイタラーズ、マーク・バーネット・プロダクションズ、ソニー・ピクチャーズTV

製作総指揮: マーク・バーネット、クレイ・ニュービル、フィル・ガリン

シャーク: バーバラ・コーコラン、ケヴィン・ハリントン、ロバート・ハージャヴェク、デイモンド・ジョン、ケヴィン・オリアリー


内容: 日本テレビ「マネーの虎」のリメイク。


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日本のヒットTV番組、端的に言ってヒット・リアリティ・ショウの海外におけるリメイクは、何も今に始まったことではない。アメリカでも昨年からだけでも、とんねるずの「脳カベ」リメイク「ホール・イン・ザ・ウォール (Hole in the Wall)」、「Run for Money 逃走中」のリメイク「チェイス (Chase)」、ダウンタウンの「サイレント図書館」リメイク「サイレント・ライブラリ (Silent Library)」等がリメイクされて放送されている。


この中にABCの「ワイプアウト (Wipeout)」を無許可の「たけし城」もしくは「SASUKE (ニンジャ・ウォリアー (Ninja Warrior))」リメイク、つまりパクリといって入れてもいいかは迷うところだ。実際「SASUKE」はG4がアメリカでもリメイクを製作することが本決まりになっている。いずれにしても、アイディアをパクられたと日本の放送局が騒いで訴訟問題に発展するほど、日本のリアリティ・ショウは注目されている。


その中で「マネーの虎」は、リメイク製作までの経路が他の番組とちょいと違う。なんとなればこの番組、アメリカでもリメイクされるという発表があったのはかなり前のことで、リメイクする、リメイクすると言われながらいっかな放送されないので、正直言って忘れていた。リメイクにはその地方に合ったマイナー・チェンジを施すのが普通だから、アメリカで番組リメイク権を持っているABCは、さてどうしたものかとあれこれ考えていたんだろう。


そのうち、英BBCが同番組を英国でリメイクして放送している「ドラゴンズ・デン (Dragons’ Den)」が、アメリカでもBBCアメリカで放送され始めた。たぶんこれで、ABCは番組が作りにくくなったものと思われる。基本的にほとんど同じ番組になるはずだから、それももっともだ。


アメリカでの「マネーの虎」リメイクである「シャーク・タンク」は、「サバイバー」プロデューサーであり、この手の勝ち抜きリアリティ・ショウ製作の第一人者であるマーク・バーネットが担当している。つまり結構力を入れられているわけだが、しかし既に同様の番組が放送されてしまっている場合、後発は明らかに不利だ。


それでたぶん、ああでもないこうでもないとマイナー・チェンジのアイディアを絞っているだけで、どんどん時間が経ってしまったものと思われる。既に後発なのだから、この場合、先発の「ドラゴンズ・デン」と比較されるのを避けるため、今度はなるべく時間を置いた方がいいとの配慮もあったろう。そんなこんなでようやく、「シャーク・タンク」は今夏初お目見えした。ABCの番組製作発表があってから、2年くらいは経っているような気がする。


これらのオリジナル、リメイクにおいて、面白いのはその番組タイトルだ。三者とも動物系もしくは架空の怪物の名前がタイトルに用いられている。つまり虎、ドラゴン、シャークだ。どれも怒らせたらめっぽう怖い生き物である (に違いない) ことは論を俟たない。むろん、そういう印象を与えることを狙っている。最初の「マネーの虎」は、「マレーの虎」のシャレに過ぎないが、その「虎」に反応して「ドラゴン」が生まれ、次は「シャーク」になった。


面白いのは世界各国で放送されている番組において、ほとんどがBBC版同様「ドラゴン」をタイトルにいだいていることだ。「虎」がダメというよりも、「ドラゴン」の方がしっくりする民族的な意識みたいなもんがあるんだろう。アメリカが「シャーク」になったのは、当然一国内において同名異内容の番組があったら困るからだろうし、BBC番組と同じタイトル名にしてたまるかという自負もあったに違いない。実際、アメリカでは毎年夏になるとディスカバリー・チャンネルがシャークをテーマにした番組を揃えるシャーク・ウィークを編成、いつもそれなりの視聴率を稼ぐ。海外において人がドラゴンと聞いて連想する印象をアメリカではシャークが担っていると言って差し支えないかもしれない。


で、その中味なのだが、時間軸順に言うと私が最初に見たのは「ドラゴン」で、次に「シャーク」、オリジナルの「虎」は最後に抜粋をYouTubeで見た。一見して印象に残るのは、やはりセットの違いだ。「虎」ではセットはいかにもスタジオの中のセットというだけの印象しか残らないが、「ドラゴン」では当然の如くセットはデン、つまり書斎を模している。その中にドラゴンに例えられる立志伝中の起業家が陣取って、志願者のプレゼンを聞く。背景の照明は心持ち暗めで、重厚感溢れる煉瓦づくりの壁など高級感がある一方、志願者に対しては心理的な圧迫感も与えそうだ。


一方「シャーク」では、志願者は両側をサメのいる水槽に挟まれた通路を通って起業家のいるスタジオに入ってくる。わざわざ志願者を最初からびびらせてどうする。因みにこの巨大水槽の中のサメは、CGによる後付けにも見えた。それなら志願者をびびらせることはないか。いずれにしても本家よりもリメイクの方が金がかかっているというか、既にお手本ができ上がっているリメイクなだけに、ポイントを絞って視覚的インパクトを与える余裕が感じられる。


リメイク製作は現地に合わせてマイナー・チェンジが施されるのは当然とはいえ、セットだけでなく、番組出演者のちょっとした挙措動作、ものの考え方がTVという媒体によって増幅されると、これがまたかなり印象が変わってくるのはなんとも面白い。どの番組でも起業家は、成功した分野こそ違え自分自身の才覚によってトップに躍り出た者たちで、視聴者としてはこれらの番組において、起業家たちには異なる部分よりも、時代を切り拓いていくリーダーシップといった、共通した部分を求めると思う。


ところがどっこい、これはもう、「虎」だろうが「ドラゴン」だろうが「シャーク」だろうが、やはり人は人それぞれと言うしかない。みな違うのだ。むろん起業家たちの中にも、志願者に同情的な人物、口の悪い人物、皮肉屋、切れ者、みたいなキャラクターを割り振ってキャスティングしているのだが、それでも見た後の印象はそこそこ違ってくる。志願者が同じように悪口雑言叩かれても、なぜだか「虎」では心持ちウエットになり、「ドラゴン」ではかなりドライな印象を受ける。「シャーク」はその中間といった感じだ。いったい、なにが、なんのせいでこういう異なる印象を与えるのか。これが民族性というものなのか。


実は今回は、「虎」も「ドラゴン」も「シャーク」も、そこそこそれなりに面白いという印象を受けた。「虎」は通しで見ているわけではないのでよくわからないが、少なくとも「シャーク」や「ドラゴン」で面白いのは、行けそうだと思われるビジネス案が出てきた時に、必ずシャークやドラゴンのうちの誰かがカウンター・オファーを出すことだ。これはもう必ずだ。彼らだってお遊びで新規ビジネス・プランを聞いているわけではない。金になると思ったら金も出すが口も出す。


その時に取り分を20%から30%に上げろと要求したり、共同パートナーになって利益の半分を要求したりする。時にはかなり無理と思える要求もあったりするが、当座の金がその後の莫大な利益を約束するかもしれない。ここが思案のしどころなのだが、考える時間はほとんど与えられない。ほんの1、2分で出した答えに後で納得するか後悔するか、その迷いが顔に出るこの辺りが番組のクライマックスと言える。また、既に番組が始まってから時間の経っている「ドラゴン」の場合、実際に商談が成立したビジネス企画は動き始めており、その経過を結構詳しく紹介したりしている。


一方、唯一これだけはオリジナルに及ばないと思わせられたのが、ビジネスが成立した時の、「虎」における、「マネー、成立です」という決めゼリフだ。これはインパクトある。言われた方の志願者は、これを聞いたらやったーと思うかほっとするか、いずれにしてもかなりカタルシス感じるだろう。「ノー・マネーでフィニッシュです」と言われたらなおさらだ。それが「ドラゴン」、「シャーク」では、商談が成立しても、ドラゴンやシャークたちから「Well done」とか「Congratulations」、「Good job」と言われて握手しておしまいだ。


さらに「シャーク」の場合、その手のセリフを発する役であるはずのホストが存在しない。そのため、なんかなあなあずるずるのうちに商談が成立したり破談になったりする。その代わりに商談の経過がわかりにくい時はナレーションが入って説明したりもするのだが、それも毎回必ずというわけではない。「ドラゴン」では一応ホストが存在するのだが、商談の合間合間に出てきて経過を述べるだけで、実際の商談の場にはいない。


この手の決めゼリフ、キャッチ・フレイズが非常に重要なのは、「ユーアー・ファイアード (You’re fired)、お前はクビだ」で一世を風靡したドナルド・トランプの「ジ・アプレンティス (The Apprentice)」が既に証明しているのを知らないわけでもないだろうに、「マネー、成立です」に倣う決めゼリフを英語でうまく考えられらなかったのだろうか。そこんところだけは、もったいないと思うのだった。


しかし、「マネー、成立です」って、よく考えると、文法的におかしい。マネーが成立するわけないだろと思うが、しかしこれを考え出したコピーライターは偉い。文法を超越している。英語だとどうなるかと考えてみて、「Business, done」、「Deal is done」、「We reached the agreements」、「Deal or no deal」なんてひねり出してみたのだが、私にはどうやらコピーライターの才能はないらしいということを再確認したのみだった。








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