第36回ライダー・カップ

2006年9月22-24日   ★★★

アイルランド、キルデア、ザ・Kクラブ

第1日

フォーボール

プレイが始まってしばらくして、最初の3マッチにヨーロッパのフラッグが立っているのを見た時には、またかよとがっくり来てしまった。本当に最近、出だしでアメリカがリードしているのを見たことがない。しかし第一ペアのタイガー・ウッズ/ジム・フューリック組は、1ダウンからコリン・モンゴメリ/パドレイグ・ハリントン組を相手に挽回し、1アップでうっちゃる。しかしヨーロッパはホゼ・マリア・オラハボル/セルジオ・ガルシア組がデイヴィッド・トムズ/ブレット・ウェターリク組を圧倒、3&2で下す。スチュワート・シンク/J. J. ヘンリー組は一時ポール・ケイシー/ロバート・カールソン組に3ダウンと差をつけられながら怒濤の追い込みで追いつき、引き分けて価値ある1/2ポイントを獲得。しかし最終ペアのフィル・ミッケルソン組はダレン・クラーク/リー・ウエストウッド組に1アップで破れ、午前を終わってヨーロッパ 2 1/2ポイント、USA 1 1/2ポイント。

フォーサム

アメリカがいい出足と一瞬見せかけて、すぐにヨーロッパが逆転する。しかしアメリカも盛り返し、残り数ホールで全勝負がオール・スクエアか1アップと競る。こうなるとマッチ・プレイって本当に面白い。これまで数フィートのパットを外していたゴルファーが、最後の方ではミドル・レンジのパットなら意地ですべて沈めてくるのだ。15フィートのバーディ・パットを沈め合ってどちらも譲らないと、ゲームが白熱する。

ハリントン/ポール・マッギンリー vs チャド・キャンベル/ザック・ジョンソン、デイヴィッド・ハウエル/ヘンリク・ステンソン vs シンク/トムズ、ウエストウッド/モンゴメリ vs ミッケルソン組がすべて分けた中で、唯一勝敗がついたのがガルシア/ルーク・ドナルド vs ウッズ/フューリックのマッチ。16番パー5でフューリックが15フィートのバーディ・パットを沈めてオール・スクエアを維持するも、17番パー4でガルシア/ルークがバーディを奪って1アップ。18番パー5のドナルドの第2打はあわや池ポチャのところをラフに引っかかり、これでグリーンに乗せればタイに持ち込めると思ったフューリックが逆に池ポチャ。ほとんど勝負は決したも同然でのウッズの第4打はカップまで20フィート、そこでガルシアのショットはほとんどトップでカップを40フィート・オーヴァー。ドナルドの返しは4フィートを残し、フューリックがこのパットを沈めればもしかしたら引き分けを拾えるかもと思えたが、パットは僅かにそれ、結局ガルシア/ドナルドが2アップで勝った。それにしてもマッチ・プレイでのガルシアとモンゴメリの勝率って異様に高い。一方、ウッズがやはり勝てんなあ。本当にマッチ・プレイって不思議。これで初日を終わってヨーロッパ5ポイント、USA3ポイント。


第2日

フォーボール

アメリカ・チームの不調は続く。なんといってもウッズとミッケルソンがよくない。交互にショットを打つフォーサム・プレイは相性があるだろうから成績が残せないことがあるだろうとも思うが、一応個人プレイであるフォーボールでも勝てない。それもやはりチーム・ゴルフになった時の難しさか。この日はまずミッケルソン組がガルシア/オラハボル組に3&2で完敗。続いてウッズ/フューリック組がやはりクラーク/ウエストウッド組にやはり3&2でいいところなく惨敗。第1マッチのヘンリー/シンク組は2ダウンから後半追い上げ、16番のヘンリーのイーグルで追いつき、17番、やはりヘンリーのバーディで1アップでリードを奪うも、18番で3パットでホールを失い、結局分ける。第4マッチのジョンソン/スコット・ヴァープランク組はハリントン/ステンソン組を、ほとんどジョンソン一人の活躍で2&1で退けた。これでヨーロッパ 7 1/2ポイント、USA 4 1/2ポイント。

フォーサム

午後もやはりヨーロッパの優勢は続く。第1マッチのミッケルソン/トムズ組はガルシア/ドナルド組に2&1で破れ、午前中調子のよかったシンクとジョンソンが組んだ第3マッチもケイシー/ハウエル組に大差をつけられ、ドーミーとなった14番222ヤードのパー3で、ケイシーはなんとホール・イン・ワンを決めて、5&4と相手の傷口に塩をなすりつける圧勝。シンク/ジョンソンはぐうの音も出なかった。一方第2マッチのキャンベル/ヴォーン・テイラー組は、モンゴメリ/ウエストウッド組を相手に1ダウンから17番で追いつき、引き分けに持ち込む。第4マッチのウッズ/フューリック組はようやっと噛み合ったという感じで3&2でハリントン/マッギンリー組を下し、これでヨーロッパ10ポイント、USA6ポイント。

前回、2日目を終わった時点でヨーロッパ11ポイント、USA5ポイントと大差をつけられていたのに較べればまだましと言えるが、それにしてもワールド・ランキングでは完全に上回るヨーロッパ・チームになぜこうも大差をつけられる。特にミッケルソンは敗戦率90%を超えているんじゃないか。彼はシングルス戦でも結構負けが込んでいるはず。もうフォーサム/フォーボール・プレイにはミッケル ソンは出すな。一方、若手は頑張っているという印象があり、ヘンリーや2日目フォーボールのジョンソン等の活躍は目立っていた。ライダー・カップではこういうルーキーやキャプテンのピックがわりと決まったりすることが多い。ライダー・カップ七不思議の一つ。


最終日

シングルス

最終日のシングルスは、ヨーロッパがこれまでのシングルスで負けなしのモンゴメリとガルシアを最初の二人に持ってきて勢いをつけようという布陣。対するアメリカは中盤にルーキーを揃え、その回りをヴェテランが固めている。

勝負はシンクがガルシア相手にいきなり大きくリードを奪った他は、序盤のほとんどのマッチでヨーロッパがリードし、早くもアメリカの逆転劇には黄信号が点滅。ウッズも最初カールソン相手に1ダウンとなったが、こちらはそれからすぐに巻き返した。とはいえその第2マッチのシンクと第4マッチのウッズ以外は最終第12マッチのヴァーウランク vs ハリントンのマッチまですべてでヨーロッパ勢が圧倒、前半のマッチの趨勢が明らかになった時点で、ほとんどヨーロッパのカップ維持は動かず、競った勝負という点ではほとんど面白味はなかった。

とはいえ、では勝負自体が面白くないかというとそんなことはなく、特に中盤、両陣営のゴルファーが続け様に20フィートから50フィートくらいのミドルからロング・パットを10人くらい全員続けて決めたのはかなりエキサイティングで、鳥肌もんだった。解説のジョニー・ミラーや実況のダン・ヒックス等が信じられないを連発、そのクライマックスがクラークの100フィートのスーパーロング・パットで、いやあギャラリーが沸く沸く。それにしても今回、地元のアイルランド人で、妻をガンで亡くし、プレイに影響がないかと危惧された当のクラークが最も印象的なショットを放つ。不思議なもんだ。クラークはジョンソンを3&2で破ったが、泣いていた。

勝負としては第5マッチのドナルド vs キャンベル戦で、ドナルドが2&1でキャンベルを破った時点でヨーロッパは全得点の半数の14ポイントに達し (その時アメリカは8ポイント)、カップ維持を決めた。結局シングルスではアメリカが勝ったのはシンクがガルシアを4&3で破ったのとウッズがカールソンを3&2で下したの、さらに最終第12マッチのヴァープランクがハリントンを4&3で破った3勝のみで、さらにヘンリーがマッギンリーと分けた計3 1/2ポイントしかなく、終わってみるとヨーロッパ 18 1/2ポイント、USA 9 1/2ポイントと、前回と同じ大差がついた。ヘンリーのハーフ・ポイントだって18番のグリーン上でマッギンリーがヘンリーの20フィートのパットをわざわざコンシードして花を持たせてくれたものだ。この日のアメリカ・チームの唯一の明るい話題はヴァープランクの14番パー3でのエースのみで、しかもそれはヨーロッパのカップ維持が決まってだいぶ後の話だった。

ヨーロッパ勢はモンゴメリがシングルスで連勝記録を伸ばした他、ドナルド、クラーク、オラハボルが起用された3戦で全勝、ガルシアもシングルス以外で4勝した。ウエストウッドも3勝2分けと4ポイントを稼ぎ、ケイシーも2勝2分けで3ポイント貢献した。特に若くてムード・メイカーのガルシアのようなプレイヤーが一人チーム内にいると、士気も上がるだろう。キャプテンのピックのモンゴメリとウエストウッドがちゃんと活躍しているのも利いた。一方、ハリントンはまさかの4敗1分けで足を引っ張ったが、まったく勝負に影響がなかったわけだから、今回もどんなにヨーロッパ・チームのできがよかったかが窺われる。

アメリカ・チームは、最もポイントを稼いだのがウッズの3ポイント。ヴァープランクは起用された2戦で2勝しているが、最初の1勝は一緒にプレイしたジョンソン一人で勝ったマッチだった。トムズの3敗1分けというのも痛かったが、やはりなんといっても最もネックになったのは、4敗1分けのミッケルソンだろう。前回も叩かれたが、今回も当分は叩かれるだろうなあ。ミッケルソンって、本当にマッチ・プレイ向きじゃない。

前回同様の大差がついた今回のライダー・カップだが、だからといって面白くなかったかというと、それなりに見せ場はあった。中身から言うと、前回より今回の方が面白かった。それでも、やはり手に汗握るくらい競ってもらいたいとは思う。アメリカ・チームはなんとか立て直さないと。もう一回ハル・サットンをプレイング・キャプテンにしてチームに活を入れさせるとか。 



 
 
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