一人で勝手にノミネートして授賞して盛り上がる個人的アカデミー賞の第3回。



作品賞 (Picture)

「バベル」

「ディパーテッド」

「ジ・イリュージョニスト」

「硫黄島からの手紙」


本当なら2部作の「硫黄島」と「父親たちの星条旗」を合わせて1本として考えようとも思ったんだが、そうすると勝負にならないから涙を飲んで「硫黄島」1本に絞る。それでも作品賞は「硫黄島」、と喉元まで出かかっているのだが、そこで「バベル」が頭をよぎる。「ディパーテッド」だって、これがリメイクでなくオリジナルなら、今度こそと推したいところだ。小品ながら伏兵「イリュージョニスト」も侮り難し。と、悩みに悩んだ末、今回はとにかく力強さで見る者を圧倒した「バベル」に。



監督賞 (Director)

ペドロ・アルモドヴァル「ボルベール」

ロバート・アルトマン「今宵、フィッツジェラルド劇場で」

アルフォンソ・キュアロン「トゥモロー・ワールド」

ロバート・デ・ニーロ「ザ・グッド・シェパード」

ギレルモ・デル・トロ「パンズ・ラビリンス」

ブライアン・デ・パルマ「ブラック・ダリア」

クリント・イーストウッド「父親たちの星条旗」、「硫黄島からの手紙」

メル・ギブソン「アポカリプト」

アレハンドロ・ゴンザレス・イナリツ「バベル」

マーティン・スコセッシ「ディパーテッド」


監督賞が混雑してしまったのは、昨季、1シーン1ショットの長回しで印象を残したデ・パルマをどうしても入れたかったからで、そうすると、やはり同じく1シーン1ショットの力技を見せたキュアロンも入れざるを得なくなった。ギブソンもせめてこれくらいの評価はするべきであろうし、デ・ニーロにも感嘆した。こうなったらセンチメンタル・フェイヴァリットとしてもう一人アルトマンを詰め込んでも構うまい。


それでも「ディパーテッド」がリメイクですらなかったら文句なしにスコセッシを推すし、当然本当のアカデミー賞でもスコセッシがとるだろうが、しかし、たかだか数年前に公開されている作品をわざわざスコセッシにリメイクしてもらいたくないという気持ちで葛藤を起こしてしまうのも事実だ。結局ここは私としては2本の印象的な作品を矢継ぎ早に発表したイーストウッドに贈りたい。



主演男優賞 (Actor)

ダニエル・クレイグ「007 カジノ・ロワイヤル」

マット・デイモン「ディパーテッド」、「ザ・グッド・シェパード」

レオナルド・ディカプリオ「ディパーテッド」

アーロン・エッカート「サンキュー・フォー・スモーキング」

エドワード・ノートン「ジ・イリュージョニスト」

フォレスト・ウィテカー「ザ・ラスト・キング・オブ・スコットランド」


誰を選んでも納得だが、私が選ぶのはたぶん他の人から見れば最も意外であろうノートン。要するにこの作品、私のツボだったのだ。



主演女優賞 (Actress)

ジェシカ・ビール「ジ・イリュージョニスト」

ケイト・ブランシェット「ザ・グッド・ジャーマン」

ペネロペ・クルス「ボルベール」

シャーロット・ランプリング「ヘディング・サウス」


ビールが助演じゃなくて主演かという意見もありそうだが、まあよしとしておこう。ここではいつの間にやら貫禄まで身につけてしまったクルス。



助演男優賞 (Supporting Actor)

アレック・ボールドウィン「ディパーテッド」

マイケル・ケイン「トゥモロー・ワールド」

ノア・エメリック「リトル・チルドレン」

ジャッキー・アール・ヘイリー「リトル・チルドレン」

ジェイムズ・マカヴォイ「ザ・ラスト・キング・オブ・スコットランド」

エディ・マーフィ「ドリームガールズ」

マーク・ウォールバーグ「ディパーテッド」


「リトル・チルドレン」の二人はすんなり決まったが、「ディパーテッド」からは誰を入れるか煩悶した末、ボールドウィンとウォールバーグを選ぶ。マカヴォイは主演級の印象だし、エンタテイナー、マーフィも底力を見せた。ヴェテラン、ケインも健在。これら以外にも、「グッド・シェパード」のジョン・タトゥーロ、マイケル・ガンボン、「パンズ・ラビリンス」のセルジ・ロペス、「イリュージョニスト」のポール・ジアマッティやルーファス・シーウェル等、候補が目白押しで、今回最も悩んだ部門がここだ。まったく決めきれない。一応ノミネートを決めた後、全員同時受賞でお茶を濁して逃げようかと思ったくらい。何度も何度も何度も再考してヘイリー、マカヴォイ、マーフィの3人に絞ったはいいものの、そこからまた悩む。結局今の時点ではヘイリー。明日にはまた考え変わっているかもしれない。



助演女優賞 (Supporting Actress)

アドリアナ・バラザ「バベル」

タミー・ブランチャード「ザ・グッド・シェパード」

菊地凛子「バベル」

コン・リー「マイアミ・バイス」

エリザベス・ロドリゲス「マイアミ・バイス」


パラザと菊地はどちらも渾身のでき。ブランチャードは見る者を彼女の気持ちに同化させる。リーとロドリゲスは、格好よさという観点から選んだ。特に銃の性能を説明してから相手に向かって引き金を引いたロドリゲスにはしびれた。とはいえこの中では私が選ぶのはブランチャード。彼女の時代が来るのはまだか。



脚本賞 (Original Screenplay)

ペドロ・アルモドヴァル「ボルベール」

ギジェルモ・アリアガ「バベル」

ギレルモ・デル・トロ「パンズ・ラビリンス」

アイリス・ヤマシタ、ポール・ハギス「硫黄島からの手紙」


もう、本当に、彼しか思いつかないオリジナリティに敬意を表してアルモドヴァル。映画が終わる直前までこれがどういう幕切れを迎えるのかまったく見当もつかなかった。



脚色賞 (Adapted Screenplay)

ジェレミー・ブロック、ピーター・モーガン「ラスト・キング・オブ・スコットランド」

ニール・バーガー「ジ・イリュージョニスト」

トッド・フィールド、トム・パーロッタ「リトル・チルドレン」

ジェイソン・ライトマン「サンキュー・フォー・スモーキング」


ブロック&モーガン「ラスト・キング・オブ・スコットランド」。フィクションも真っ青と言ったら誉め言葉になるのか。



外国語映画賞 (Foreign Language Film)

「ザ・ハウス・オブ・サンド」アンドルーシャ・ワディントン

「パンズ・ラビリンス」ギレルモ・デル・トロ

「ボルベール」ペドロ・アルモドヴァル


もし「外国語映画」というのが英語以外の言語で製作されている作品ということになれば、当然ここに「硫黄島からの手紙」も「バベル」も入れないといけないことになって、ほとんど外国語映画賞と作品賞のノミネートが同じということになるところだった。ついでに言うと「アポカリプト」も外国語映画ということになるのか。予告編だけで興奮させた「善き人のためのソナタ」を見ていたら、これもたぶんノミネートせざるを得なかったと思う。


特に「パンズ・ラビリンス」と「ボルベール」は実際に作品賞ノミネートに入れてもよかったくらいのできで、共に監督のヴィジョンと演出スタイルが綺麗に決まって甲乙つけ難い。ここも迷った上「ボルベール」に。ふう、今回はどこも接戦で決めきれず、書くのに前回の3倍の時間がかかったぜ。







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ごくごく個人的なアカデミー賞    (2007年2月)

 
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