Power of 10

放送局: CBS

プレミア放送日: 8/7/2007 (Tue) 20:00-21:00

製作: エンバシー・ロウ、ソニー・ピクチュアズTV

製作総指揮: マイケル・デイヴィース

ホスト: ドリュウ・キャリー


The Price Is Right

放送局: シンジケーション (NY地域ではCBS)

プレミア放送日: 10/15/2007 (Mon) 11:00-12:00 (ドリュウ・キャリー版)

製作: ア・マーク・グッドサン・プロダクション、フリーマントルメディア・ノース・アメリカ、ザ・プライス・イズ・ライト・プロダクション

製作総指揮: マーク・グッドサン、ビル・トッドマン、ロジャー・ドブコヴィッツ、ボブ・バーカー

ホスト: ドリュウ・キャリー


内容: ドリュウ・キャリーがホストのゲーム・ショウ2種。


_______________________________________________________________


ドリュウ・キャリーはたぶん2本のTV番組、シットコムの「ザ・ドリュウ・キャリー・ショウ (The Drew Carey Show)」と、ゲーム・ショウの「フーズ・ライン・イズ・イット・エニウェイ (Who's Line Is It Anyway?)」のホストとして最もよく知られているだろう。「ドリュウ・キャリー・ショウ」はABCで9シーズン続いた、一時はかなり人気のあったシットコムだし、「フーズ・ライン」の方もやはりABCで8シーズン放送され、根強い人気を持っていた。「ゼペット」という意外なTVミュージカルで、あまり誉められない咽喉を披露したこともある。


この2本が2000年代中盤に相次いで最終回を迎えてからはあまり名前を聞かなかったのだが、ここへ来てキャリーの名がいきなり急浮上してきた。一つは長寿クイズ番組として知られる「ザ・プライス・イズ・ライト」で、ホストのボブ・バーカーがついに現役を引退して後の次期ホストとしてと、もう一つ、新ゲーム・ショウ「パワー・オブ・テン」のホストという2本のゲーム・ショウのホストとして任命されたのだ。


元々キャリーが「パワー・オブ・テン」ホストを担当するという話はかなり前から決まっていた。夏場の差し替え番組として編成された「パワー・オブ・テン」は、当初製作予定だったのはせいぜい数本程度だろうし、人気が出てレギュラーに抜擢されても週一番組だろう。しかしその上「プライス・イズ・ライト」か。「プライス」はたとえ収録は毎日ではなくても放送は毎日だし、アメリカ人なら誰でも知っている人気長寿番組だ。前任者のバーカーは国民的知名度があり、その後任というのはそれなりに責任も重いはずだ。そういう番組と掛け持ちをするってか。


しかしこの話は、「パワー・オブ・テン」を見たプロデューサーの方からキャリーに持ちかけられたということだ。掛け持ちをしてもらってもキャリーをホストに据えたかったらしい。キャリーは実際の話「フーズ・ライン」でも何年間もゲーム・ショウのホストを担当しており、経験もある。その上また「パワー・オブ・テン」ホストもやるということで、バーカーという御大の後任者選びに四苦八苦していたプロデューサーのお眼鏡に適ったようだ。キャリーは「パワー・オブ・テン」の放送が始まる時に、デイヴィッド・レターマンがホストの「レイト・ショウ」に番組プロモーションのためにゲストとして出ていたのだが、そこで図らずも「プライス」の新ホストにも決まったという就任発表の場になっていた。


そしてまずは「パワー・オブ・テン」放送が始まった。ゲーム進行はわりと簡単で、まず一対一の対戦者同士が、民間人1,000人に対して行った質問の答えをパーセンテージで予想する。例えば最初の質問は「アメリカ人の何パーセントが子供の時より大人になってからの方が親とよい関係を持てていると答えたか」で、次は「アメリカ人の何パーセントがジーンズを買うのに100ドル以上出しているか」というもので、因みに答えは前者が89%、後者が10%だった。5つの質問で3問先に正解に近い答えを挙げた者が勝者で、番組の最初の対戦では、勝った19歳のジェイミーが次ラウンドに進んだ。


次ラウンドでは5つの質問が出され、回答者はそのパーセンテージを予測する。まず第1問は賞金1,000ドルで、回答者は答えを40%以内の幅で当てなければならない。例えばある質問の答え予測に、10-50%という風に40%の幅をもって答え、実際の答えがその枠内に入っていれば正解だ。これが第2問では30%の枠内で正解を得なければならない。賞金は1万ドルだ。第3問は賞金10万ドルとなって、20%の枠内で正答しなければならない。第4問で10%の枠内で正答すると、賞金は100万ドル、ミリオン・ダラー、1億円だ。4問正解しただけで100万ドル、これはおいしい。


番組にはさらに続きがあって、4番目の設問に正答した場合、その予想した10%枠の中から正確な数字を選ばせるというのが最終第5番目の設問となっている。正答した場合の賞金はなんと1,000万ドル、10億円だ。マジで一生遊んで暮らせる。ただし誤答した場合はそれまで獲得した賞金ではなく、10万ドルが獲得賞金として渡される。第5番目の設問に挑戦せず、そこまでに獲得した100万ドルを手にして降りてもいい。


実はこの番組第1回で、最初に登場した19歳の青年、というかまだ少年という方が近そうなニュー・ジャージー出身のジェイミーが、あれよあれよという間にぽんぽんと正解して、一番最初のもう一人の挑戦者との勝負ではあっという間に3タテ食らわせて次ラウンドに進出した。彼はその後も連続して正解で、なんと番組第1回の最初の回答者にして100万ドルを獲得してしまう。


私は最初、番組を面白く見せるための演出として高額賞金獲得者のエピソードを第1回にもってきたと思ったのだが、そうではなく、ホストのキャリーが、番組の第1回の最初の回答者でいきなりミリオネアが出ちゃったよと驚いていたので、どうやら本当に最初の挑戦者がミリオネアになってしまったようだ。結局ジェイミーは最後の第5問には挑戦せずに、100万ドルを手にして降りた。試しに彼が答えた第5問の数字は間違っていたから、彼は最後の最後まで正しい判断をしたことになる。因みにこの最後の設問は「アメリカ人女性の何パーセントが自分をフェミニストと考えているか」で、答えは29%、ジェイミーが答えた数字は24%だった。


この番組、クイズ・ショウとしてはかなり一人にかける時間が長く、ホストと回答者がすぐに一対一となってやりとりする。他人の答えを予想するという番組体裁として似ているのは、クラシック・クイズ番組の「クイズ100人に聞きました」こと「ファミリー・フュード (Family Feud)」だが、実際に番組を見て受ける印象として似ているのは、「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア」「ドント・フォーゲット・ザ・リリクス」、あるいはNBCの「ディール・オア・ノー・ディール」だ。そしてさらに、キャリーがすぐ答えに行かずに、脇道に逸れたりしてかなり回答者をじらす。この技法がクイズ・ショウで最も効果的に使われていた例として思い出すのは、これはバーカーの「プライス・イズ・ライト」に他ならない。「プライス」のプロデューサーが、「パワー・オブ・テン」のキャリーを見てバーカーの後任に最適と思ったのもむべなるかななのだ。


そして「パワー・オブ・テン」プレミア放送の2か月後、キャリーが新ホストとしての「プライス」の放送も始まった。こちらの方は番組フォーマットは既に確立しており、いくらキャリーが新ホストだからといっても、バーカー版と大きく異なる点はない。というか、キャリー本人も番組プロデューサーも、でき上がっているフォーマットに手を入れようなどとは露ほども考えていないだろう。むしろバーカー版の色を損なわずに番組を続けていくことに全力を傾けているはずだ。実際、キャリーは「パワー・オブ・テン」に較べたら、こちらの方ではかなり自分自身のおしゃべりを控えているという印象を受ける。「プライス」では回答者、ステュディオの観客、一体になって番組を盛り上げるので、それに水を差さないことを第一に考えたという印象が濃厚だ。


その「プライス」、午前中放送ということもあり、私はたまたまは平日休みでしかも午前中起きているという、めったにない機会にごくたまに見たことがあるに過ぎない。それで前回、バーカー版の最終回を見た時、新車が2台も回答者に持っていかれたので、これはバーカー版最終回ということでの大盤振る舞いかと思っていたのだが、キャリー版「プライス」でも、いきなりやはり最初の回答者がジープの新車を当てていた。その後に出てきた女の子もやはりフォードの新車を獲得していたので、結構頻繁に車が賞品として出ているようだ。それでも、いくらなんでも毎日毎回新車2台ずつ当てられていたら番組としては成り立たないような気がするが、そうでもないのだろうか。「パワー・オブ・テン」では番組第1回でいきなり100万ドルだからな、それを考えたら新車2台5万ドルなんて屁のようなものなのかもしれない。


キャリーは、「プライス」の最後には、「あなたのペットに避妊去勢手術を受けさせるのを忘れないように」という、バーカーのトレードマークだったセリフを踏襲して自分も言っている。その点を見ても、キャリーがバーカーが確立したフォーマットを遵守して、できるだけ手を入れずにバーカー版そのままで今後もやっていこうと考えていることが見てとれる。ま、実際自分の色は、一応CBSで今後も続いていくことが本決まりとなった「パワー・オブ・テン」の方で出せるだろうし、特にキャリー本人にも不満はないものと思う。しかし、ということは、キャリーをシットコムで見ることは当分‥‥いや、たぶんかなり長い間、もしかしたらもうないかもしれない。それはそれで寂しい気もする。 






< previous                                    HOME

 

Power of 10
パワー・オブ・テン   ★★1/2
The Price Is Right
ザ・プライス・イズ・ライト   ★★1/2

 
inserted by FC2 system