一人で勝手にノミネートして授賞して盛り上がる個人的アカデミー賞の第2回。



作品賞 (Picture)

「ブロークバック・マウンテン」

「ヒストリー・オブ・バイオレンス」

「マッチ・ポイント」

「ミュンヘン」

「ニュー・ワールド」


昨年末からの圧倒的な強さを見るに、本番でも「ブロークバック・マウンテン」が受賞するのはほとんど間違いなかろうと思えるが、同様に見る者をエキサイトさせ、感嘆させた作品は、「ブロークバック・マウンテン」だけに限らない。アカデミーからは無視されたが、私の昨年度のナンバー・ワン・ムーヴィは「ヒストリー・オブ・バイオレンス」である。最初から最後までほとんど鳥肌が立ち続ける異様な緊張感、全身が総毛立った幕切れ、後を引く余韻、しびれました。



監督賞 (Director)

ウッディ・アレン「マッチ・ポイント」

デイヴィッド・クローネンバーグ「ヒストリー・オブ・バイオレンス」

アン・リー「ブロークバック・マウンテン」

ジョージ・ルーカス「スター・ウォーズ: エピソード3 シスの復讐」

テレンス・マリック「ニュー・ワールド」

スティーヴン・スピルバーグ「ミュンヘン」


本来ならば「ヒストリー・オブ・バイオレンス」のクローネンバーグに上げるべきなんだろうがリーを推すのは、クリント・イーストウッドがリーにオスカー像を手渡す瞬間を見てみたいからに他ならない。



主演男優賞 (Actor)

ニコラス・ケイジ「ロード・オブ・ウォー」

レイフ・ファインズ「ザ・コンスタント・ガーデナー」

フィリップ・シーモア・ホフマン「カポーティ」

ヴィゴ・モーテンセン 「ヒストリー・オブ・バイオレンス」


ケイジ、ファインズ、モーテンセンと、本人の持ち味がぴたりとはまった感があるが、単純に昨シーズンを見渡して、ホフマン以外のアクターを考えることは難しい。



主演女優賞 (Actress)

マリア・ベロ「ヒストリー・オブ・バイオレンス」

キャメロン・ディアズ「イン・ハー・シューズ」

コリアンナ・キルヒャー「ニュー・ワールド」

シャーリーズ・セロン「スタンドアップ」「イーオン・フラックス」

リース・ウィザースプーン「ウォーク・ザ・ライン」


必須作品の「トランスアメリカ」のフェリシティ・ハフマンを見逃しているが、どんなに評判がよくても見ようという気になれない作品というのが時たまあり、これもその一つ。これが昨年だか来年だったりしたら見ていると思うんだが、ちょっと「デスパレートな妻たち」にうんざりし始めていることもあり、今回は私が見たいと思うタイミングじゃなかった。


そのせいかどうか、今回の女優陣は小粒という印象が否めない。ベロなんかも本当なら助演という気もしないでもないんだが、それを言うなら本当のアカデミーでも本命と見られているウィザースプーンだってそうだ。とはいえ、やはり私もウィザースプーンを選んでしまうわけだが。



助演男優賞 (Supporting Actor)

クリスチャン・ベイル「ザ・ニュー・ワールド」

「クラッシュ」の男優陣「クラッシュ」

レイフ・ファインズを助ける英国の友人「ザ・コンスタント・ガーデナー」

バリー・ペッパー「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」

ドナルド・サザーランド「プライドと偏見」


「クラッシュ」の男優は全員よく、誰にするか決めかねた。一人一人挙げていたらそれだけでノミネーションがいっぱいになってしまう。全米俳優協会 (SAG) が与える賞SAG Awardsの焦点は、当然のことながら俳優に向かい、今年のその最高の栄誉は「クラッシュ」のキャストの面々に与えられた。要するに私もそれを真似てみたわけだが、しかし、そのキャストとしてノミネートされる者、ノミネートされなかった者の線引きをどこで引くかは一悶着ありそうだ。


その他のノミネーションとしては、ベイルは静謐なカリスマが出てきた。「ザ・コンスタント・ガーデナー」に出てくる彼は、どうしても名前がわからなかったがなぜだかとても印象に残っている。ペッパーは今後期待大。サザーランドは貫禄。その他にも「スタンドアップ」、「フライトプラン」のショーン・ビーン、「ジャーヘッド」、「フライトプラン」のピーター・サースガードあたりも印象に残っていたんだが、涙を飲んで諦める。


しかしこういう風に一作品だけから複数ノミネートしてしまうと、やはり不公平になると気がついた。「クラッシュ」の全員をひとまとめにしていいなら、そりゃ敵なしになってしまう。かといって、やはりあの中から誰か一人というと、誰を選んでも他をとりこぼしたような気がしてしまう。うーん、困った、というわけで、本当はインチキなんだが、こちらは主演で出ている「バットマン・ビギンズ」と合わせてベイルに。本当にすごいインチキ。



助演女優賞 (Supporting Actress)

ジェニファー・エスポジト「クラッシュ」

キャサリン・キーナー「ザ・バラッド・オブ・ジャック・アンド・ローズ」「ザ・インタープリター」、「カポーティ」

スカーレット・ヨハンソン「マッチ・ポイント」

ロバータ・マックスウェル「ブロークバック・マウンテン」

ミシェル・ヨー「SAYURI」


主演に較べて助演の方は印象に残った者が多く、決めかねた。「ブロークバック・マウンテン」からミシェル・ウィリアムスでもアン・ハサウェイでもなくマックスウェルが入っているところが私の趣味である。「クラッシュ」だってサンディ・ニュートンでもなくサンドラ・ブロックでもなく、颯爽と歩くジェニファー・エスポジトの方が印象に残った。「SAYURI」でリーではなくヨーを選んでいるのもテイストばればれ。今回はこのカテゴリーを見るとはっきりとこれを選んだ人間の趣味が窺える。しかしここはすべて地味な役を地味なまま演じて印象を残したキーナーに。



脚本賞 (Original Screenplay)

ギジェルモ・アリアガ「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」

ウッディ・アレン「マッチ・ポイント」

ポール・ハギス「クラッシュ」


アリアガ。私はよくできたロード・ムーヴィに弱い。



脚色賞 (Adapted Screenplay)

スティーヴン・ギャガン「シリアナ」

ダン・フッターマン「カポーティ」


実は私はフッターマンに脚本賞を上げるつもりでいたんだが、トルーマン・カポーティの言動を繋ぎ合わせて一本の作品にまとめあげた「カポーティ」は、実はアカデミー賞では脚色賞にノミネートされている。そうすると、よけいに元々は一本の作品ではなかったものをまとめあげたフッターマンの力を認めないわけにはいかないだろう。



外国語映画賞 (Foreign Language Film)

「隠された記憶」ミハエル・ハネケ


「隠された記憶」は実際のアカデミー賞で手違いもあって外国語映画賞にノミネートされなかったため、当然ここでは私がノミネートする。「パラダイス・ナウ」もセザール賞独占の「真夜中のピアニスト」もなかなか評判の「トッツィ (Tsotsi)」も見てないが、それでも「隠された記憶」より私が評価することはないだろう。この作品を今回の作品賞ノミネートの中に入れて、「ヒストリー・オブ・バイオレンス」と勝負させてみてもよかったかもしれない。







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ごくごく個人的なアカデミー賞   (2006年3月)

 
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