Megan Wants a Millionaire  ミーガン・ウォンツ・ア・ミリオネア

放送局: VH1

プレミア放送日: 8/2/2009 (Sun) 21:00-22:00

製作: 51マインズ・エンタテインメント

製作総指揮: クリス・アブレゴ、マーク・クローニン、ベン・サメク

ホスト: ミーガン・ハウザーマン


内容: モデルの女性の恋人の座を争う勝ち抜きリアリティ・ショウ。


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既に同工異曲の恋人獲得勝ち抜きリアリティ・ショウが山のようにあるアメリカTV界において、その差別化は非常に難しい。しかもこのジャンル、旬はとうに過ぎたという感じも否めない。FOXが2003年に編成した「ジョー・ミリオネア (Joe Millionaire)」をピークに、その視聴率に匹敵する番組はその後現れていない。というか、その半分の視聴率を獲得する番組すら現れていない。


そのためこの種の番組自体は今でも山のようにあるが、現実的に言って成功している、あるいは誰でも知っているほど知名度のある番組は、ABCの「ザ・バチェラー (The Bachelor)」、およびそのスピンオフ「ザ・バチェロレット (The Bachelorette)」の両番組くらいが関の山だろう。ケーブルに目を転じると、一時VH1の「フレイヴァー・オブ・ラヴ (Flavor of Love)」およびそのスピンオフ「アイ・ラヴ・ニューヨーク (I Love New York)」が話題を集めた時もあったが、既にこれらの番組は姿を消している。


そのVH1が、今ではこのジャンルを牽引している最大手のチャンネルと言える。「アイ・ラヴ・ニューヨーク」以降、現在ではポイズンのブレット・マイケルズの恋人の座獲得「ロック・オブ・ラヴ (Rock of Love)」、そのスピンオフ「デイジー・オブ・ラヴ (Daisy of Love)」、他にも「アイ・ラヴ・マネー (I Love Money)」、「リアル・チャンス・オブ・ラヴ (Real Chance of Love)」、「マイ・アントニオ (My Antonio)」、「フォー・ザ・ラヴ・オブ・レイ・J (For the Love of Ray J)」等々、どこに本当のラヴがあるのかわからないこの種の恋人獲得系勝ち抜きリアリティ・ショウを、これでもかとばかりに編成している。


しかしこのジャンルのブームを再燃させるためには、「ジョー・ミリオネア」がやって見せたように、視聴者の興味を喚起するある種のトリックやギミックを番組にとり入れる必要があるだろう。実際に「ジョー・ミリオネア」を放送したFOXは、このジャンルを現在プチ流行している減量リアリティと融合させ、体重過多の人間だけによる恋人獲得リアリティの「モア・トゥ・ラヴ (More to Love)」を放送している。ただし、現時点ではこの番組も特に成功しているとは言い難い。


あるいはMTVの「ショット・アット・ラヴ・ウィズ・ティラ・テキーラ (Shot at Love with Tila Tequila)」の場合は、ホスト役のティラ・テキーラがバイの女性だったため、彼女の恋人に立候補した者は男性も女性も同数ずついたというギミックがポイントだった。その後の「ダブル・ショット・アット・ラヴ (A Double Shot at Love)」では、ホスト役はリッキとヴィッキという双子のイッキ姉妹だったため、参加者も倍に膨れ上がった。


また、あるいは「フレイヴァー・オブ・ラヴ」、「アイ・ラヴ・ニューヨーク」の人気の所以となった、誰か強力なキャラクターが参加者の中に欲しい。現在VH1がやっていることがその応用で、要するにある程度の成功を収めたリアリティ・ショウの中から、人気のあった参加者を今度はホストに据え、彼/彼女の恋人の座を争わせて新しい番組を作る。その中にまた特異なキャラクターを持つ者が出てきたら、今度は彼/彼女を起用してまた新しい番組を作る。これは「バチェラー」-「バチェロレット」にも言えることで、こうしてこのジャンルの番組はどんどん拡散していく。


しかし、やはりこの系統のリアリティ・ショウは、一応若者およびこのジャンル好きの一部の視聴者にはアピールするが、よほどのことがない限り人気再燃は難しいだろうと思う。私自身の嗜好を言うと、特に取り柄があるわけでもないホスト役の男性 (女性) に対し、さあこの人の恋人に立候補してくださいと強制する番組の根幹の部分にまったく賛同できないので、この種の番組はまず見る気にならない。参加者のうち何人かは絶対その時のホスト役に好感を持てないやつがいるに決まっているのだ。客観的に見て明らかに平均以下の容貌 (の場合が多い) でしかない者を恋人にしたいかと訊かれれば、ほとんどの者はノーと言うに決まっている。


とまあ、個人的にはまったく興味を持てないこのジャンルの番組の一つである「ミーガン・ウォンツ・ア・ミリオネア」をなぜわざわざ今回取り上げているかというと、この番組、近年ではこれ以上ないというくらい大きな事件に関係して世間の注目を集めたからだ。


番組としての「ミーガン」は、上にも挙げた「ロック・オブ・ラヴ」のスピンオフに当たる。「ミーガン」ホストのミーガン・ハウザーマン (Megan Hauserman) は、「ロック・オブ・ラヴ」ホストのブレット・マイケルズの恋人の座を射止めようと番組に出演、優勝は逃したが、そのキャラクターによってこの種の勝ち抜きリアリティの敗者復活的番組という色彩の強い「アイ・ラヴ・マネー」、および「ロック・オブ・ラヴ: チャーム・スクール (Charm School)」にも出演、めきめきと頭角を現した。


特に後者の「チャーム・スクール」は、態度のでかさだけは既にロック・スター並みの、これらの番組で落ちた子女に淑女としての挙措動作を教え込もうという番組で、ホストをかつてTV界を席巻したリアリティ・ショウ「ジ・オズボーンズ (The Osbournes)」のシャロン・オズボーンが務めた。そこでハウザーマンとオズボーンが喧嘩になり、ハウザーマンがオズボーンのことを、自分自身にはなんの才能もない、脳死ロック・スターと結婚しているだけの女、と罵った。


これは非常に痛いところを突いたようで、切れたオズボーンはハウザーマンと取っ組み合いになり、ついでにハウザーマンの髪をつかんで引きちぎるなどかなりの乱闘となり、警察沙汰になった (因みにオズボーンがジャッジとしてレギュラー出演しているNBCのタレント発掘リアリティ「アメリカズ・ガット・タレント (America’s Got Talent)」は、現在アメリカで視聴率1位の番組だ。)


こういう騒ぎは本人たちにはともかく、番組としては格好のパブリシティとなり、これらの貢献が認められ、ハウザーマンはこのたび晴れて自分が選ぶ立場で番組に主演ということに相成った。モデル上がりで派手物好きのハウザーマンは、参加者を金持ちでハンサムな男性だけで構成したかった。そこで生まれたのがこの、「ミーガン・ウォンツ・ア・ミリオネア」だ。


そこまではいい。そこまではいいが、問題はそれからだ。番組は実際に金持ちの男性17人を集めて撮影されたのだが、問題はその中に、不動産デヴェロッパーのライアン・ジェンキンスという短気で切れやすく、嫉妬深い男がいたことにある。ジェンキンスは見てくれこそよかったが番組で優勝はできず (収録は今春終わっている)、収録後、水着モデルのジャスミン・フィオレと結婚する。二人はラスヴェガスのカジノで出会い、2日後にヴェガスの有名な、「ザ・ハングオーヴァー (The Hangover)」にも出てくるザ・リトル・ホワイト・ウェディング・チャペルで結婚式を挙げたそうだ。


そして8月、そのフィオレがLA郊外で死体となって発見される。フィオレの全裸死体はトランク・ケースの中に入れられ、路地のゴミ捨て場に捨てられていたのを発見された。その死体は全身に打撲と首を絞めた痕が認められ、さらに身元の判明を不可能にするべく、両手の指がすべて切り落とされていた上、念の入ったことに歯がすべて引き抜かれていた。


さすがにここまでされると簡単には身元は割れない。それが一両日中にフィオレと判明したのは、両胸に入っていた豊胸用のシリコンの製造ナンバーが、整形外科医の彼女のカルテに記録として残っていたからだ。ここで思わずCBSの「CSI」でよく見るように、解剖台の上で死体の胸にメスを入れ、シリコンを取り出して番号をメモするという検死医の姿を想像したのは決して私だけではあるまい。事実は小説より奇なり。完全犯罪とまでは言わなくても、時間稼ぎ、あわよくばそのまま身元不明の死体として迷宮入りを願っていたと思われるジェンキンスの目論見は、もろくも水泡に帰した。


こうなると真っ先に疑われるのは、当然夫のジェンキンスだ。ジェンキンスは出身地のカナダに逃げており、故郷の近くの山間のモーテルに投宿していた。ここでしばらくほとぼりを冷まして、これからどういう行動に出るか考えるつもりでいたのだろう。しかし、その時は既にジェンキンスは重要参考人として指名手配されていた。TVで芸能ニューズを見れば、真っ先にTV画面に映るのは自分の顔なのだ。逃げられないと観念したジェンキンスは部屋で首を吊り、後日モーテルのマネージャーによって発見された。


まさかこんな事件を起こした原因とも言える番組を、放送し続けられるわけがない。VH1は3回放送しただけの「ミーガン・ウォンツ・ア・ミリオネア」をキャンセルした。番組で最後の方まで残ったジェンキンスは、そのキャラクターによって次シーズンの「アイ・ラヴ・マネー」にも出演が決まっており、実際既に収録も終えているそうだが、それが放送される見込みもほとんどない。これらの番組に出て、あわよくば芸能界デビューのチャンスを狙っていた他の参加者こそいい迷惑だろう。


その最大の被害者と言えるハウザーマンだが、「ミーガン」こそキャンセルされたが、実は彼女を起用して別の新番組を作る話は既に俎上に上っているそうだ。考えたら彼女こそ今が旬のパーソナリティであり、VH1がそのチャンスを逃すわけはなかった。たぶん来春には我々は新しい番組でまた彼女の姿を目にすることになるんだろう。この事件にしたって、あと2年後にはライフタイムがこれを題材にTV映画を製作して放送するか、あるいは「CSI」が逆にそのアイディアを頂くか、あるいはNBCの「ロウ&オーダー (Law & Order)」でこの事件がプロットとして利用されるに違いない。


ハウザーマンだが、彼女も元々はモデルであるわけだが、彼女の場合も胸に詰め物をしているのは確実だ。シリコンを入れた胸ってどうしても人工ものくさくて、私の審美眼ではそれこそ逆に美しくなくなる。自分がどうしても胸を大きくしたいというのなら別に止めはしないが、しかし私のような意見を持つ者だって大多数ではないかもしれないが、それなりにいることをわかってもらいたい。実際の話、水着モデルを除けば一流モデルで胸の大きい者はほとんどいない。プロポーションがいいというのはバランスがいいことを意味するのであって、胸が大きければいいってもんじゃない。乳搾るわけじゃないんだからさ。


また、ハウザーマンは特に美人とは思わないが、角度によってはパリス・ヒルトンに似ている。絶対引かない性格といい、お姫様気取りのところといい、その辺もパリス似だ。そのパリスの顔とモデルのスタイルを合体させれば鬼に金棒とVH1が考えた可能性はかなり高い。というか、それしか考えられない。しかし私としてはまず、このような番組を製作するに当たっては、顔に過度に手を入れていたり、胸に詰め物をしている女性参加者は却下ということにしてもらえないかと願うばかりだ。








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