Live Free or Die Hard   ダイ・ハード 4.0  (2007年7月)

全米のハッカーが何者かによって連続して爆死させられるという事件が相次いで起こる。そのうちの一人マット (ジャスティン・ロング) をDCまで連行してくるという任務を負わされたジョン・マクレーン (ブルース・ウィリス) は、すんでのところで殺されそうになったマットを助ける。彼は全米を窮地に陥れようとしていたサイバー・ハッカーのトマス・ゲイブリエル (ティモシー・オリファント) によって命を狙われていたのだ。またもや望んだわけでもないのにアメリカの生命線を守る立場に立たされたマクレーンの、捨て身の活躍が始まる‥‥


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意外に思ったのだが、これが4作目となる「ダイ・ハード」シリーズの前作「ダイ・ハード3」が作られたのは、既に12年も前の1995年だ。いつものように剃髪よれよれっぽいブルース・ウィルスがそれほど変わっているようにも見えなかったため、なんとなく「3」は5、6年くらい前の作品のような気がしていたのだが、もうそんなになるのか。


実は私はニューヨークが舞台となった「3」の、冒頭で爆破されるビルを撮影中の現場にたまたま居合わせている。私はその頃ニューヨークに来てまだ日も浅く、日本と較べるとべらぼうに安いため、せっかくだからと始めたばかりのゴルフが楽しくて、その週末も朝早くから6番街の23丁目で待ち合わせて、車を持っているやつにピックアップしてもらう手筈になっていた。そしたらその時ちょうど、そこでその「3」の冒頭の爆破シーンの撮影準備中だった。


もうちょっと待っていれば爆破シーンも見れたはずなのだが、車がきてしまったので泣く泣くそのシーンを後にしたのだった。結構印象に残ったのでその時の様子をわりと鮮明に覚えているため、そんなに昔のことという気がしなかったのだが、あれからもう12年、撮影はその前年くらいのはずだから、たぶんもう13年は昔の話になる。要するに私もニューヨークに来てからそれだけの歳月が経ったということになる。うーん、時の経つのは速い。


ウィリスはしかし、その間にも結構色んな作品に主演出演しており、わりと目にする機会は多い。はげ頭だからそうなのかは知らないが、特に十数年前も今もそんなに印象は変わらない。そもそもの「ダイ・ハード」第1作目が1988年だからかれこれ20年近く経っているわけだが、その時の印象からあまり変わらない。だいたいそもそもの最初からウィリスは事件にかかわり合いになるのに乗り気でなく、ぶつぶつと文句を言って嫌々ながら仕事しており、最初からジジむさい印象があった。


同様に息の長いシリーズとなると、例えば昨年、「ロッキー6」こと「ロッキー・バルボア」が作られた「ロッキー」の第一作は1976年だから、アクションというよりもスポーツ・シリーズというのがしっくりくるとはいえ、主人公が変わらない現役 (さすがにもう後はないか?) のシリーズとしてはこれに勝るものはないだろう。また、1990年公開の前作「5」と新作の「6」の間で16年というかなりの時間が経っているところも、「ダイ・ハード」と印象が近い。つまり主人公はかなり歳をとったわけだ。さらに1989年の前作の後、現在新作を製作中のフォード/スピルバーグの「インディ・ジョーンズ」もある。これなんかTVシリーズを計算に入れなければ19年もの間隔が開くことになる。


「ターミネーター」シリーズの場合、最初が1984年、「2」が1991年、「3」が2003年と、新作と前作の間には12年のスパンがあり、ロボットと生身の人間の違いがあるとはいえ、アクション・シリーズ作としてみると、「ダイ・ハード」と最も印象が近いのはこれになるかと思う。「ターミネーター2」で既に旧型になってしまい、「3」ではさらに過去のロボットとなってしまったターミネーターが、自分にむち打って新型ロボットに戦いを挑むのだ。ロボットだろうが人間だろうがアスリートだろうがヒーローだろうが、シリーズものは必ず最後はこうして台頭してくる新世代と我らがオールド・ヒーローとの対峙にならざるを得ない。誰にも時を止める術はないのだ。時を遡ってくるターミネーターにしてからがそうなのだ。


しかし映像として見ると、ロボットなので歳をとるわけにはいかない「ターミネーター」と、歳とったらとったでよれよれになりながら老体にむち打ってぶつぶつ言わせながら活躍させるという手も使える、というか、それはそれで面白そうだと思わせることのできる「ダイ・ハード」の方が、息が長いだろうというのは言える。本人がまだその気があるかどうかは知らないが、作ろうと思えばまだ作れるはずだ。シュワルツネッガーがいくら本人が政治の方で忙しく、政治活動をしている限りは映画には出れないだろうということを差しおいても、「ターミネーター」にはさすがに「4」はあるまい。


「ダイ・ハード 4.0」では、ウィリスは離婚しており、娘はいちいち口うるさい父に反抗している。ウィリスが最初に登場するシーンは、娘の行動を張っていて、車の中でボーイフレンドもどきと乳くり合っているところに現れて、ボーイフレンドを追い返して娘を叱咤するというシチュエイションなのだ。むろんそんなことをしても娘からは反感を持たれるだけだ。ウィリス=ジョン・マクレーンは過去の価値観をひきずったままの旧時代の生き残りなのだ。もちろんそういう男が身体を張って生身のアクションに挑戦するところが、「ダイ・ハード」の楽しさ面白さなのであることは言うまでもない。


なのであるが、さすがにCGアクション主流の現代では「ダイ・ハード」もそれが魅力だとはいえ生身のアクションだけに徹することはできず、かなりCGが入る。作品半ばの見せ場であるカー・アクション・シークエンスでは、ホヴァリング中のヘリコプタに向かって車を激突させるなんてのがあるのだが、私はこれを見て、ちょっと無理あり過ぎなんじゃないかと思った。そしたら隣りに座って見ている私の女房はうひゃうひゃと喜んで手を叩きながら見ていた。劇場の大半も似たような反応で、ド派手なアクションはそれはそれでやはり受けるようだ。さすがにうちの女房も、最後にジェット機の尾翼にまたがってのアクションに至ってはやり過ぎと思ったようだが。


あのシーンを見て人が思い出すのは、それこそシュワルツネッガーの「トゥルー・ライズ」のクライマックス・シーンか、オールド・ファンなら「博士の異常な愛情」で爆弾にまたがって落ちていったピーター・セラーズなんじゃないかと思う。要するに架空のお伽話としてのアクションか、ギャグだ。いくらなんでもああいう展開で骨の一本すら折らないのか。ちょっと人間技じゃなさ過ぎる。ああいうのは「ダイ・ハード」の魅力の本質とは違うんじゃないかという気がしないでもない。


それでも最初から最後までアクションのぎゅう詰め、退屈させずに最後まで見せるところはさすが「ダイ・ハード」で、やっぱ、こんなのはハリウッド以外では撮れないだろうなと思う。だいたい、ほとんどの部分を実写で撮っているあれだけ無茶苦茶なカー・アクションを、いったいどこの国が撮影させるというのか。「シューター」もD.C.で結構派手なカー・アクションを撮っていたが、今回はそれに輪をかけてすごい。いくら実際の撮影の大半はD.C.で撮っているわけじゃないだろうとはいえ、映画撮影を模して、本当の武器を用いたテロが起こるかもしれないなんて、誰も心配していないのかと言いたくなる。ホワイト・ハウスのお膝元なんですが。度量がでかいというかなんというか。


今回悪役を演じるのは、HBOの西部劇「デッドウッド」に出ているティモシー・オリファント。「デッドウッド」に出ている俳優は、皆どんな作品に出てもいい悪役をできそうだ。マギーQは今回は多少線が細いように思え、私としては「MI3」の方が決まっていたかなと感じた。コンピュータ・ギーク兼ウィルスの片腕となるジャスティン・ロングは、アメリカでは俳優としてのこれまでの出演作よりも、アップル・コンピュータのマックとPCを比較した一連のコマーシャルの、カジュアルなマック・ガイとして知られている。今回もコマーシャルでも、まさしくイメージぴったり。演出は「アンダーワールド」シリーズのレン・ワイズマン。なんか本人がアクション映画の主人公みたいな名前だ。   







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