放送局: WLIW

プレミア放送日: 4/4/2006 (Tue) 23:30-0:00

製作: WTTW11、LRSメディア

ホスト: ラムジー・ルイス


内容: ジャズ界の代表的人物をスタジオに呼んで話を聞くと共にプレイする。


第1回: The Golden Horns ゲスト: クラーク・テリー、ロイ・ハーグロウヴ、クリス・ボッティ

第2回: The Jazz Singers ゲスト: アル・ジャロウ、カート・エリング

第3回: The Great Guitars ゲスト: ジム・ホール、パット・メセニー

第4回: Contemporary Jazz ゲスト: ジョージ・デューク、マーカス・ミラー、リー・リトナー

第5回: The Altos ゲスト: デイヴィッド・サンボーン、フィル・ウッズ

第6回: The Piano Masters ゲスト: デイヴ・ブルーベック、ビリー・テイラー

第7回: Roots: The Blues ゲスト: ロバート・クレイ、ケヴ'・モー'

第8回: American Songbook ゲスト: ジェイン・モンハイト、ジョン・ピッツァレリ

第9回: Latin Jazz ゲスト: エディ・パルミエリ、デイヴ・ヴァレンティン

第10回: The Tenors ゲスト: ベニー・ゴルソン、クリス・ポッター、マーカス・ストリックランド

第11回: Brazilian Jazz ゲスト: オスカー・カストロ-ネヴィス、アイヴァン・リンス

第12回: The Killer Bs ゲスト: ジョーイ・デフランセスコ、ロニー・スミス

第13回: NEA Jazz Masters 2006 ゲスト: トニー・ベネット、チック・コリア、レイ・バレット


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私は結構ジャズを聴くが、自分でプレイするわけでもなく一人でもっぱら聴く方専門のジャズ・ファンにありがちなことだが、ジャズという間口の広いジャンルの、その一部だけを愛好しているに過ぎなかったりする。要するに私の場合、主としてピアノを主体とするジャズばかりを聴いている。


その中でも特に、ここ数年の私の三種の神器ならぬ三人の神様は、ビル・エヴァンス、キース・ジャレット、ブラッド・メルドーの3人で、だいたい私のリスニングはこの3人を中心に、その合い間に誰か別のジャズを聴くというパターンで組み立てられている。こういう独りよがりのリスニングの弊害は言わずもがなで、要するに、このままではただの偏狭な音楽ファンの一人に過ぎない。


そのくらいは私でもわかっているので、時に間口を広げようとジャズ系のFMを聴いてみたり、TVの何十チャンネルもある音楽専門チャンネルの中のジャズ・チャンネルで、自分の知らなかったアーティストを新規開拓してみようとしたりしているのだが、なにぶんにも半分はながらリスニングなので、お、今のはいい、というフレーズを耳にして慌ててTV画面のアーティスト紹介を見てみると、メルドーの新しいアルバムからの曲だったりして、結局いっこうに幅が広がらない。


つまり、そういう私のようなファンにとって、「レジェンズ・オブ・ジャズ」は、まさにうってつけの番組だったと言える。例えば、アメリカを代表するドキュメンタリー映像作家であるケン・バーンズが製作したミニシリーズ「ジャズ」の場合だと、ジャズの歴史を勉強する分にはいいが、あまりにも広く浅くであるため、特に気に入ったプレイヤーを見つけるという風にはなりにくい。一方、マーティン・スコセッシが斯界の映像作家を起用して製作した「ザ・ブルーズ」のような番組だと、今度は演出家の思い入れが勝ちすぎて、これまた素人にはとっつきにくい。


「レジェンズ・オブ・ジャズ」は、本人も知られたピアニストであるラムジー・ルイス (日本ではラムゼイ・ルイスと表記している場合が多いが、どう聞いても本人はラムジーと自己紹介している) がホスト役となり、斯界を代表するジャズメンをスタジオに呼び、プレイを聴く一方で話も窺うという寸法だ。一回につき一人を呼ぶというのではなく、回毎にテーマを決め、そのテーマに沿って2、3人を呼んでいる。特に番組としての華が、そのゲストによるセッションにあるのは当然である。もちろんそれぞれのソロもあるが、わざわざ斯界のトップ・プレイヤーを連れてきて、一緒にプレイさせないんじゃそもそもジャズの番組を作る意味がない。


いずれにしても、番組として一番難しかったのがその人選にあったのは間違いあるまい。わざわざ番組タイトルに「レジェンド」という単語を持ってきているくらいだから、既に名を成した大家を中心に選んでいると思いがちだが、見てみると結構若手もいる。それにむしろ、当然だがこれに出ていない有名ジャズメンの方が多い。たぶん、ホストのルイスの現実の交友関係も人選に影響していると思われる。ではあるが、こちらはそういう、知る人ぞ知るというミュージシャンを探すのも半分以上は目的だからして、そういう玄人受けするような人選はむしろ歓迎だ。


とはいえ、かつてかなり聴いたミュージシャンが今でも現役でバリバリやっているのを見るのももちろん楽しい。特に私にとってそうだったのが、第3回の「ザ・グレイト・ギターズ」に出てきたパット・メセニーで、20年、30年前に同時代でかなり聴き込んだミュージシャンがいまだに華麗なテクニックを披露するのを見るのは文句なしに楽しい。そのメセニーと一緒にプレイするのは、こちらは実際に伝説的なジム・ホールとなればなおさらだ。それにしてもメセニーって、昔から顔が変わらない。若く見えるといえば聞こえはいいが、しかし、あの童顔のまま歳くっている。なんとなくデニス・クエイドを連想させる顔立ちをしているが、そう言うとホールの方はこちらはロバート・デュヴォールにかなり感じが似ており、クエイドとデュヴォールがギターのセッションをしていると考えるとかなりおかしかった。


もちろん、それまで知らなかったミュージシャン発掘という点でも楽しく、実は第4回の「コンテンポラリー・ジャズ」に出ていたピアニストのジョージ・デュークを私はまったく知らなかった。ちょっと経歴を調べてみると、ああ彼だったのかと思い当たったわけだが、要するに私がよく聴く傾向の場所にいなかったので、顔と名前が一致しなかった。こういう番組を見ないと、一生知らないままだったかもしれない。しかしいくらコンテンポラリーと題された回とはいえ、ベイスのマーカス・ミラーはレジェンドというにはいくらなんでも若すぎやしないか。また、ギタリストのリー・リトナーがここにいる理由もなんとなく解せん。それでも、デュークのファンキーなピアノ、ミラーのど派手なエレキ・ベイス、そしてリトナーの3人によるセッションは、かなり面白かった。ベイスはウッド・ベイスの方が渋いしこれに勝るものはないと思っているのだが、あれはあれでまた格好いいのは事実だったりする。


面白かったといえば、単純に最も面白かったのは、第2回の「ジャズ・シンガース」で、アル・ジャロウとカート・エリングの口楽器による「テイク・ファイヴ」のかけ合いは、ほとんど笑えるくらい面白かった。むろんこういうのも歓迎である。また、自分の好みだけだとピアノ系しか聴かなかったりするのに、こういう風な番組構成だと、改めて他の楽器もいいと思える。ホーンの回を見ると、やっぱりトランペットには華があると思い、アルト・サックスの回を見ると渋いと思う。それでまたテナー・サックスの回を見ると格好いいなんて思っちゃうんだろう。


これから放送される回では、ブラジル・ジャズとラテン・ジャズではいったい何が違うのかと頭を巡らし、名器ハモンドB3オルガンがテーマの「キラーB」と題された回は、ファンキーなのりのりになるのは必至だ。最終回に予定されている「NEAジャズ・マスターズ」というのは、非営利団体の米国芸術基金 (National Endowment of the Arts) の今年の表彰者 (トニー・ベネット、チック・コリア、レイ・バレット) をフィーチャーしている。私はこの番組の番宣でベネットとコリアの顔を見ていたのに、彼らがヴォーカルやピアノ・テーマの回にいないのはなんで? と思っていたのだが、こういうところにいた。要するにこの番組がNEAからなんらかの助成を受けて製作されているからだろう。しかし、コリアのピアノでベネットが歌うなんてシーンを見られるなら、別にNEAの顔を立てる必要があったとしても、私は文句は言わない。


番組は毎回30分構成であり、2、3人いるゲストに話を聞いた後まず一人一人がプレイし、その後でゲスト・ミュージシャンが揃ってのセッション、最後にルイスが加わっての番組のテーマ演奏で終わる。そのため持ち時間はせいぜい一人一曲分のみである。当然圧倒的に時間は足りないわけだが、これをきっかけに視聴者がジャズに親しんでくれればというのがたぶん当初の番組製作の目的であるはずだから、これはしょうがない。エンディングのテーマ演奏なんて、本当にテーマ以外は各自の即興部分は数フレーズと泣きたくなるくらい少なく、ルイスは本当にホストとして以外は、自分が演奏するパートはないに等しい。一流のジャズマンとしては、こういうメンツをわざわざスタジオに呼んできて目の前でプレイさせているわけだから、自分も加わりたいだろうに。あるいは、もしかしたら収録が終わった後、自分たちで楽しんでいるのかもしれない。たぶん、きっとそうだろう。  





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Legends of Jazz with Ramsey Lewis


レジェンズ・オブ・ジャズ・ウィズ・ラムジー・ルイス   ★★★

 
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