放送局: ニコロデオン

プレミア放送日: 2/25/2006 (Sat) 20:00-20:30-21:00

製作: アニメーション・コレクティヴ

クリエイター/製作総指揮: ラリー・シュワーツ

声: マイケル・シンターニクラース (マイキー・サイモン)、ショーン・スキメル (ゴナード)、ゲイリー・マック (グアノ)、アニス・モリアーティ (リリー)、イヴリン・ラント (ミツキ)、スティーヴン・モヴァーリー (オズ)、ジェシ・アダムズ (イエスマン)


物語: アメリカ人俳優のマイキー・サイモンは、日本で放送されているアニメ「リリームー (LilyMu)」の主役に抜擢される。「リリームー」でマイキーは、二人の女性主人公リリーとミツキ、それにグアノと共に、悪の手先ゴナードと対決するという筋書きで人気を得る。しかしプライヴェイトに帰ると、マイキーはいまだ住む所が見つからないため、プロデューサーのオズは一時的にマイキーをリリーとミツキのルームメイトにしようと試みるが‥‥


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今ではアメリカでもアニメといっても通用するようになった和製アニメーションの人気は、すこぶる高いと言える。アメリカ人のマンガ家が描いている日本的なマンガ雑誌も定期刊行されており、アニメ、マンガの裾野は、アメリカのティーンエイジャーの間に確実に広がっている。アメリカを代表する書店チェーンのバーンズ&ノーブルに行くと、行くたんびにマンガ・コーナーが拡充されてスペースが増えているので、人気があるんだなということがよくわかる。


人気があって知名度があるということは、パロディの対象になる。人々が真似をし始めるわけだから、それは当然と言える。今回ニコロデオンが放送を始めた「カッパ・マイキー」は、日本のアニメ全般をパロるという、穿った企画の100%メイド・イン・アメリカのアニメーションだ。


そもそも、その設定がなかなかよくできている。アメリカの片田舎出身の売れない俳優、マイキー・サイモンは、どういう伝手でか、日本で人気のあるアニメーション「リリームー」の主演に抜擢され、東京に渡る。「リリームー」はいかにもアニメアニメした、可愛い女の子リリーとミツキが悪漢ゴナードに立ち向かうSFヒーローもので、脇キャラのグアノは、誰が見ても「ポケモン」のピカチューを拝借している。それにしてもよくミツキというキャラクター名を思いついたものだ。漢字で書くと美津樹って感じだろうか。


そこへ新ヒーローとしてマイキー演じるカッパ・マイキーが加わるのだが、そのマイキー、アメリカの田舎者丸出しで、完全にカルチャーの違う世界に来ているのに、アメリカ流で押し通す。そこに軋轢や衝突、誤解やカン違いが生まれないわけがない、というのが基本的な舞台設定だ。「カッパ・マイキー」自体がアニメであるのに、その入れ子構造のもう一本の作品「リリームー」ももちろんアニメだ。いわゆる劇中劇なのだが、それを両方ともわざわざアニメでやっていることがまずおかしい。


全員いかにもアニメ的なキャラクターなのに、マイキーだけが、輪郭が図太い、一人だけマーカーで描かれたようなアメリカン・タッチの絵柄で浮いている。リリーとミツキはいかにもアニメに登場しそうなキャラで、時々顔や身体がデフォルメされてギャグ・タッチになったりするところなんかが、いかにもという感じだ。リリーがなぜだかいつも私服ではセーラー服を着ているとこなんか、いいとこ突いている。ちょっとネクラ気味のミツキはマイキーに仄かな好意を持っており、グアノは実は神経症的な性質があり、悪役ゴナードは普段は気のいい若者だ。プロデューサーの名前がオズというのがまたいい。とはいえ、マイキーの役名がカッパ・マイキーというのはちょっと悪乗りしすぎ。番組製作者もカッパってのが何かなんてのは実はよくは知らないのではないか。


一応舞台は東京ということになっているので、当然背景に描かれる街並みの看板には、日本語で店の名が書かれている。その辺は実はちゃんと日本人か日系人がチェックを入れているのか、ほとんどすべてちゃんとした日本語になっている。ここで「バンザイ」みたいないかにも日本語風の意匠でごまかすこともできない相談じゃないだろうが、やはり本気でパロディを作るつもりでいるなら、こういう些細なところをないがしろにしてもらいたくはない。要は日本語ができる者を一人雇えばいいだけの問題だ。


こういう、劇中劇ならぬアニメ中アニメで、視覚的にもこれは面白そうだと思えた「カッパ・マイキー」であるが、しかし、その設定を活かしてよくできた番組となっているかというと、実は必ずしもそうとは言えないところが難だ。番組第1回は、東京に越してきたマイキーが新居を探すが、どうもいい物件が見つからず、カプセル・ホテルでの寝起きを強いられている。「リリームー」関係者が居住しているリリームー・タワーズにも空き室はない。しかしプロデューサーのオズは、人気の出てきたマイキーのご機嫌を損ねたくはない。そこでマイキーをリリーとミツキのルームメイトに仕立て上げるのだが、当然ことはそううまくは運ばない。


ここで本当ならもうちょっとうまくカルチャー・ギャップを挟み込むことができたり、アニメという媒体を有効に利用してなんか小技を利かせたりすることができたんじゃないかと思うんだが、番組はその点では失敗している。つまり、面白くない。ただのデリカシーに欠けた傍若無人なマイキーと、勝手に右往左往するリリーやミツキ、その他の面々といったいかにも一面的な常套的展開で、これだけ魅力的な舞台設定を立てておきながら、まったく活かしきっていない。つまらないなあ。


どんなに絵柄の点で面白そうだと人に思わせることができても、中味が伴わなければ、人はすぐに飽きる。実際、私の興味はほとんど30分も持たなかった。このくらいのレヴェルの番組なら、それこそ掃いて捨てるほどある。要は番組としての見所は、残念ながらこの舞台設定のみだったと言うしかないだろう。私は第1回だけを見て、第2回以降は見る気をなくしてしまったのだが、番組がその後化けて面白くなる可能性があるようには到底見えなかった。 






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Kappa Mikey


カッパ・マイキー   ★★

 
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