ゴースト・ウィスパラー

放送局: CBS

プレミア放送日: 9/23/2005 (Fri) 20:00-21:00

製作: サンダー/モーゼス・プロダクションズ、タッチストーンTV

製作総指揮: イアン・サンダー、キム・モーゼス、ジョン・グレイ、ジョン・ワース

共同製作総指揮: ジェイムズ・ヴァン・プラーグ

製作: ジェニファー・ラヴ・ヒューイット

クリエイター/監督/脚本: ジョン・グレイ

撮影: ジェイムス・クレサンディス

音楽: マーク・スノウ

出演: ジェニファー・ラヴ・ヒューイット (メリンダ・ゴードン)、アリシャ・タイラー (アンドレア・モレノ)、デイヴィッド・コンラッド (ジム・クランシー)


物語: メリンダは幼い時から死者の霊が見えるという特異能力を持っていた。成長して結婚してからもその能力は消えることはなく、メリンダはまだこの世に思い残すことがあったり、伝えることがあったりしてこの世に留まっている霊の最後の願いを聞き届け、その思いを残された者たちに伝える役目を引き受けるのだった‥‥



イフ・オンリー

放送局: ABCファミリー

プレミア放送日: 1/15/2006 (Sun) 19:00-21:00

製作: ラヴ・スペル・エンタテインメント、イフ・オンリー・プロダクションズ・サーヴィスズ

製作総指揮: モーリッツ・ボウマン、ベイジル・アイワニク、ガブ・ニール

製作: ジェニファー・ラヴ・ヒューイット

監督: ジル・ジュンガー

脚本: クリスティーナ・ウェルシュ

撮影: ジャイルス・ナトジェンス

編集: ウィリアム・アンダーソン

美術: ジョゼフ・ベネット

音楽: エイドリアン・ジョンソン

出演: ジェニファー・ラヴ・ヒューイット (サマンサ・アンドリューズ)、ポール・ニコルズ (イアン・ウィンダム)、トム・ウィルキンソン (キャブ・ドライヴァー)


物語: アメリカらロンドンにヴァイオリンの音楽留学をしているサマンサは、ヤング・エグゼクティヴのイアンと同居していたが、イアンにくびったけのサマンサに較べ、イアンの方はいつも大事な約束を忘れるなど、二人の間には小さな諍いが絶えない。今日もよりにもよってイアンはサマンサの卒業コンサートの日だということを忘れてしまう。そしてほとんど喧嘩別れしたその夜、サマンサはイアンの目の前で交通事故で死んでしまう。今さらながら失ったものの大きさに気づくイアンだったが、しかし、翌日ベッドの上で目を覚ましてみると、そこには死んだはずのサマンサがいた‥‥


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アメリカTV/映画界にあって、ジェニファー・ラヴ・ヒューイットの存在はかなり貴重である。ともすれば派手顔グラマーがもてはやされやすい土壌にあって、美形ではあるがスキニー・タイプの女優としてそれなりのファン層を有し、一時は「ラストサマー」シリーズで、もう一息でホラーの新女王になり得た可能性すらもあったヒューイットは、なかなか得がたい女優であると言える。


そもそもヒューイットは、FOXの「サンフランシスコの空の下 (Party of Five)」で一躍注目された。ヒューイットが出てきたのは95年の第2シーズンからなのだが、そこで素行に問題のある主人公の次男ベイリーを演じたスコット・ウルフの恋人役として登場し、人気を勝ち得た。私自身の好みから言えば、アル中になったりして問題ばかり引き起こしていたベイリーよりも、家庭の事情という悩み事を抱えながら健気に生きるサラを演じたヒューイットの方が圧倒的に気になった。陰のある可愛い女の子というのは、やはりいつでも男の子の気を惹くものである。因みにこの番組で長男のチャーリーを演じたマシュー・フォックスは、今ではABCの「ロスト」で主人公のジャックを演じて大ブレイク中だ。


しかしブレイクするかに見えたヒューイット人気はいったんそこで影を潜める。やはりメインストリーム顔ではないヒューイットは、圧倒的不特定多数にアピールするほどの人気があったわけではなかった。「タキシード」でジャッキー・チェンと共演するなど、話題作もないこともなかったんだが、今一つブレイクしきれない。TVでは、全然似ていないのに堂々とオードリー・ヘップバーンを演じてしまった「オードリー・ヘップバーン物語」や、社交界入りするためには手段を選ばない強烈な上昇志向の持ち主を演じた「コンフェッションズ・オブ・ア・ソシオパシック・ソーシャル・クライマー (Confessions of a Sociopathic Social Climber)」なんてユニークな番組にも出ていたりしたが、そのまま中堅女優としての地位を固めるものと思えた。


そんな中、ヒューイット主演のCBSの新番組「ゴースト・ウィスパラー」は、昨秋から放送が始まっている。この番組でヒューイットが演じるのは、死んだ人間の霊が見える新婚女性という役どころである。昨年、同様に死者の霊が見える霊媒が主人公の「ミディアム」が始まっており、いきなりこの手の霊視ドラマが2本も現れてしまった。とはいえ「ゴースト・ウィスパラー」と「ミディアム」とでは番組のスタイルはまったく異なっており、「ミディアム」は主人公を演じるパトリシア・アークエットが死者の霊を目撃することによって犯罪を解決する刑事ドラマであるのに対し、「ゴースト・ウィスパラー」は、かつての超常ハートウォーミング・ドラマ「タッチド・バイ・アン・エンジェル」的なドラマである。要するに「シックス・センス」と「ゴースト」を足して割ったら、「ゴースト・ウィスパラー」になると思っていてほとんど間違いない。


つまり、端的に言って、「ゴースト・ウィスパラー」はお涙頂戴番組である。誰か愛する人と仲違いしながら突然の死を迎えざるを得なかった者など、何かこの世に思い残すことがある者は、どうしても天国 (地獄?) に行けずに、霊魂となってまだこの世をうろうろしている。彼らの生きている者への伝言を聞き届けてやるのが、ここでのヒューイット演じるメリンダの仕事だ。これはもう設定からして思う存分ヒューマン・タッチの泣ける番組であり、実際、もう、徹底してそうである。毎回ほぼ必ず登場人物は涙涙で幕を閉じるのであり、つまり、それを見ている視聴者もそうだ。


こういう、労せずして人を泣かすというか、ツボを突きやすい設定は、私はインチキというか反則だと思うのだが、しかし、こういうのって、たまたまつけたTVでやっていたりすると、見ちゃうのだ、これが。しかも、わかっていてもやっぱり泣かされてしまう。霊媒役をヒューイットがやっているのでなおさらだ。あの大きな目でうるうるされると、これは男性なら誰でもどきどきするだろうし、共振度は高い。ああ、インチキ。蛇足だがこの番組、共同製作総指揮に名前が上がっているのは、現在、「ミディアム」のモデルとなった実在の人物アリソン・デュボワと共に、アメリカの2大霊媒と目されているジェイムズ・ヴァン・プラーグである。霊媒だって金を稼いで食わないと生きていけないのだ。



一方、「イフ・オンリー」は、これは実は2年前に製作された劇場公開用の映画なのだが、アメリカではついに一般公開されずお蔵入りになっていたところを、ABC傘下のケーブル・チャンネル、ABCファミリーが放送権を獲得して放送したものだ。この辺が、今一つ確立したスターとは言えないヒューイットの人気の程度を物語っている。ヒューイットの名前だけでは客は呼べないのだ。ところが、アメリカでは一般公開されていないのに、わりとヒューイット人気が高いスペインとか一部のヨーロッパや韓国ではちゃんと劇場公開されているらしい。ふーん。


ここでのヒューイット演じるサムは、ロンドンに音楽留学しているアメリカの田舎町出身の女の子という役どころで、実は、このヒューイットはかなり可愛い。肩にかかるかどうかの短めの髪で、「ゴースト・ウィスパラー」で今のヒューイットを見た後だと、たかだか2年で結構人は変わるという感じがする。さらに「イフ・オンリー」は恋愛映画であるため、製作者はヒューイットをどうやったら可愛く見せることができるかということだけに全力を傾けて絵作りをしている。


いきなり冒頭では、白のランジェリー姿のヒューイットというサーヴィスつきで、朝起きて隣りにこういう子が寝ていたり、こんな姿で起こしに来てくれたりしたら、どんな低血圧の男でも一発で目が覚めそうだと思ってしまう。全編を通したヒューイットのファッションから、妙齢の女の子が学べるところは多いと思う。それでも作品では、そういうヒューイットがわりと邪険に扱われたりしてうるうるしたりするところなんかが、また非常に可愛いわけだが。


サムは途中で事故であっけなく死亡してしまうのだが、もちろん彼女の出番はそれで終わりではない。ここで彼女が幽霊となって現れたりしたら、まったく別ヴァージョンの「ゴースト・ウィスパラー」か、あるいは本当に「ゴースト」のぱくりなんだが、「イフ・オンリー」の場合はそうではなく、サムが死んだ翌日、傷心の恋人イアンが目を覚ますと、いつの間にやら時間が戻っていて、隣りでサムが寝ている。イアンは結局またその時がくれば事故が起こるだろうということを予測したまま、どんどん時が経っていく‥‥という展開だ。いずれにしてもこういう時間差恋愛ものは、最後に報われない悲恋で終わることがほとんどお約束になっているため、これまた泣かせる話になっている。


要するに、ヒューイットの泣き顔にセールス・ポイントがあることを作り手もヒューイット自身もちゃんとわかっている、「イフ・オンリー」はヒューイットのプロモーション用作品なのであった。いや、べつに異議はないです。やはりああいう可愛いヒューイットが見れるのは本望だ。作品としても最後はちゃんと一ひねり加えてあり、それはそれで面白い。他に、警句を発する謎のキャブ・ドライヴァーとしてトム・ウィルキンソンがカメオ的な出演をしており、なかなかいい味を出している。


さらにヒューイットの魅力を全編に撒き散らすために、作品内では彼女は歌も歌っているわけだが、CDを何枚か出しているというわりには、実は私は彼女の歌唱力にはそんなに感心しない。「オードリー・ヘップバーン物語」でもそう思ったし、今回もそうだ。彼女はFOXの「アメリカン・アイドル」に出ても、いいとこ辛口のサイモンから、可もなく不可もなく、くらいに言われるのが精一杯だろうと思う。はっきり言って、彼女が「アイドル」で予選を通過できるとは到底思えない。やはり彼女のCDまで買おうという気にはならないなあ。


とはいえ、時たまつけたTVで「ゴースト・ウィスパラー」をやっていて、霊媒ヒューイットがうるうるした目でこちらを見つめていたりなんかすると、やはり見てしまうのだった。同様にうるうる顔で一世を風靡した「ゴースト」のデミ・ムーアが、今では男顔負けのマッチョおばさんになって若い子を誘惑しているのを見ると、もしかしたらヒューイットだって今にそうならない可能性がないわけではないともふと思ってしまうのだが、まだまだもうしばらくは、うるうるヒューイットを楽しんでいられるだろう。    






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Ghost Whisperer
ゴースト・ウィスパラー (ゴースト 天国からのささやき)   ★★1/2
If Only
イフ・オンリー   ★★1/2

 
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