ジョン・エドワード・クロス・カントリー

放送局: We

プレミア放送日: 3/17/2006 (Fri) 22:00-23:00

出演: ジョン・エドワード


サイキック・アット・ラージ

放送局: Sci-Fi

プレミア放送日: 3/29/2006 (Wed) 22:00-22:30-23:00

製作: クラスナウ・プロダクションズ、フリーマントルメディア・ノース・アメリカ

製作総指揮: スチュアート・クラスナウ、シャール・マーゴリス、ケヴィン・ウィリアムス

出演: シャール・マーゴリス


内容: サイキックが霊とコミュニケートするリアリティ・ショウ2種。


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昨年から始まった「ミディアム」「ゴースト・ウィスパラー」の例を引くまでもなく、いつの時代にも霊能力者とやらがもてはやされたり活躍したりする番組はあったりするが、最近はこういった番組がまたなにやら復活の兆しが見える。近年のこの手の番組は、その種のドラマ仕立ての番組としてだけではなく、リアリティ・ショウとしても製作されているのが特徴だ。


思えば、別にそれだって特に目新しいものというわけではなく、霊視者が死者と対話したり話を聞くという番組は以前からあった。最近では霊媒ジェイムズ・ヴァン・プラーグが霊視する「ビヨンド・ウィズ・ジェイムズ・ヴァン・プラーグ」の他にも、ジョン・エドワードが同様の霊視を行う「クロッシング・オーヴァー・ウィズ・ジョン・エドワード (Crossing Over with John Edward)」という番組があった。


私は「ゴースト・ウィスパラー」の欄で、現在のアメリカの2大霊媒を番組製作に関係しているアリソン・デュボワとジェイムズ・ヴァン・プラーグと書いたのだが、実は、その時はエドワードのことをまったく失念していた。今回エドワードの新番組が始まったのであっと思い出したわけだが、確かにエドワードも自分のTV番組を持つなど広く知られている存在だった。「ミディアム」放送前なら、エドワードの方がデュボワよりも知名度は高かったろう。要するに現在ではアメリカ2大霊媒ではなく、ヴァン・プラーグ、デュボワ、それにエドワードの3大霊媒というのが最もしっくり来る。


で、現在、ヴァン・プラーグの肝入りの「ゴースト・ウィスパラー」、デュボワの体験を基にした「ミディアム」がなかなか人気番組となっているのだが、エドワードがそれを指をくわえたまま黙って見ているわけがなかった。とはいえエドワードの場合、彼が主体となって製作した新番組「クロス・カントリー」は、「ゴースト・ウィスパラー」、「ミディアム」のようなドラマではなく、体裁は彼自身が以前ホストを勤めていた「クロッシング・オーヴァー」に近いリアリティ・ショウである。


さらにその上、SF専門のSci-Fi (サイファイ) チャンネルまで、同様の霊視者を担ぎ出しての新番組「サイキック・アット・ラージ」なる番組を投入してきた。Sci-Fiはこれまでにも、アメリカ中の幽霊屋敷を探索する「ゴースト・ハンターズ (Ghost Hunters)」なる番組を放送していたりするなど、この分野には関係が深い。「クロッシング・オーヴァー」は、元はといえば、Sci-Fiで放送されていたものがその後シンジケーションに舞台を移して再製作されていたものだ。そのため霊視ものが流行っていると聞けば、自分たちも本腰を入れて当然だった。


さらに言うと、バイオグラフィー・チャンネルでは有名人の霊を追いかける「デッド・フェイマス: ゴースト・エンカウンターズ (Dead Famous: Ghost Encounters)」なる番組があるし、そういうのとは無関係な番組が並びそうな法廷番組専門のコート・チャンネルにすら、霊視で犯罪解決を目指す「サイキック・ディテクティヴ (Psychic Detective)」なる番組がある。そういえばアニマル・プラネットには、動物と会話ができ思考が読めるという、自称アニマル・サイキックの女性がペットの素行を正すという「ペット・サイキック (Pet Psychic)」という番組があった。広いアメリカのことだ、探せば私が一度も名前を聞いたことのない自称霊能者はまだまだたくさんいるだろう。


とはいえこういう番組は、一言で言って胡散臭い。特に私のような、霊能力なんてこれっぽっちも持ってなく、これまでの人生で幽霊を見たこともなければ体験したこともない完全なプラグマティストから見ると、なおさらそうだ。ドラマだと割り切って見れるので楽しめたりするが、サイキックが実際に市井の人間の前に立ち、あなたの祖父や亡くなった妻の霊が見えるなどと言い出したりすると、私にとってはもう興醒めだ。とたんに興味を失ってしまう。もちろん私だって体験的にシンクロニシティとか第六感とかいったことくらいは納得するが、それでもサイキックが、あなたに最後のお別れを言いに来た人物が今あなたのすぐそばに立っています、なんて言い始めると、思い切り引いてしまう。それでもこういう番組が途切れることなく現れてくるのは、やはりこういうのって、人間の本質というか、弱いところをうまく突いてくるからなんだと思う。


これまではこの種の番組はスタジオ収録が主体で、会場に集まった観客を前にしてホスト兼霊媒が、ではあなたの霊と話してみましょう、みたいな感じで進行するのが普通だった。今回放送の始まった「クロス・カントリー」の場合、前半はホストのエドワードが地方のどこかの劇場まで出張って観客を前に同種の体裁でショウを進め、後半はエドワードが個々人の家々に出向いて、そこで心霊トークをしたりする、というのが新しい趣向となっている。要するに出張心霊ショウ、みたいな乗りが強いのだが、考えたら人につく守護霊だけでなく、家につく霊というのもあるだろう。ある人に関係のあるその種の霊を全部把握しようと思うならば、個人の家にまで赴くというのは当然のことだ。それによってたぶんエドワードも深い心霊トークができようというものだ。因みにこの番組、放送しているのは女性向け番組専門のWeだ。やっぱり。


一方、「サイキック・アット・ラージ」の場合、サイキックのシャール・マーゴリスという中年女性の行動を追う番組であり、別にマーゴリスがどこぞの会場に人を集めて霊と対話したりするわけではない。いずれにしてもまたまた新しいサイキックの登場だ。いかにも知名度のあるサイキックみたいな紹介のされ方をしているが、この分野にほとんど興味のない私としては見たことも聞いたこともない。一見、腹が出始めたただのケバい中年のブロンドおばさんで、要するに、アメリカだとどこにでもいるごくフツーのおばさんにしか見えない。


番組はそのマーゴリスの言動を追うのだが、番組の冒頭、マーゴリスがいきなりやることは、ガタの来た車を買い換えることだ。もちろんサイキックだからといってどこかでどうかしたらただで車を手に入れられるということはない。ちゃんと中古車販売のディーラーまで行って車を買わなければならないのだが、ここでマーゴリスの特殊能力がものを言う。ディーラーの女性と相対したマーゴリスは、あんたの家族の名前を当てて見せたら、一人当てる毎に1,000ドル割り引きという条件をうまくのませ、次々と当てていくのだ。


うーん、いちいちこれをやらせでやっているようにも見えんし、仕込みがあるようにも見えんが、当たるものなのだろうか。それよりも何よりも、で、それが当たったから何? というのが私の一番の疑問だったりするのだが、それをうまく金に結びつけるマーゴリスの商才を誉めるべきか。マーゴリスはその後、ヌード・クラブに行ってはヌーディストの近親の霊とコミュニケートし、初代「バットマン」でロビン役をやっていたバート・ワードの豪邸で妻のトレイシーの祖父祖母の話をし、現在抗争中という法廷問題のアドヴァイスをちょこっとして帰っていく。どうやら忙しいようだ。


結局、この種の番組を見ての私の感想は、だからなんなんだ、ということに尽きる。もしかしたら彼らには本当にその種の能力があって死者と対話、とまでは行かなくても気配を察知したりある種のコミュニケートができたりするのかもしれないが、そんなもん、なくたって生きていけるし私は全然平気だ。むしろ自分の周りに死者がいるということを感知できたりしたら、よけいその方が生きにくくってしょうがないだろう。宝くじの当たり番号がわかるというのでもない限り、まず必要のない能力だと思う。しかし、霊だからといって予知能力があるわけじゃないんだろう?


もちろん、例えば「クロス・カントリー」の第1回で登場したオードリーのように、火事で前夫とその家族を失ってしまい、その責任の一端が自分にあるのではないかと思い悩んでいるような人物の場合だと、霊と交信して本人から慰めや励ましの言葉を聞くことができるならば、どんなセラピストやカウンセラーにかかるのよりも一発で効果があることは間違いなかろうと思うし、その点ではサイキックの存在価値はないわけではないとも言える。「ゴースト・ウィスパラー」はまさしくそのことをドラマにして人気を得ているのだ。まあ、そういう特殊能力を持っているとして、それで商売をしなければならないというのも結構大変かもと思わないでもないが。





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John Edward Cross Country
ジョン・エドワード・クロス・カントリー   ★★
Psychic at Large
サイキック・アット・ラージ   ★★

 
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