チャック (Chuck)

放送局: NBC

プレミア放送日: 9/24/2007 (Mon) 20:00-21:00

製作: カレッジ・ヒル・ピクチュアズ、ワンダーランド・サウンド&ヴィジョン、ワーナー・ブラザースTV

製作総指揮: ジョシュ・シュワーツ、マックG

監督: マックG (プレミア・エピソード)

出演: ザカリー・レヴィ (チャック・バートウスキ)、イヴォンヌ・ストロヴスキ (サラ・ウォーカー)、アダム・ボールドウィン (ジョン・ケイシー)、ジョシュア・ゴメス (モーガン・グライムス)、サラ・ランカスター (エリー・バートウスキ)


物語: 大型電気量販店に勤める冴えないオタク青年のチャックは、とある知人が送ってきたeメイルをひょんなことから頭の中にダウンロードしてしまう。しかもそれは政府の秘密文書だった。その時からチャックの身の回りを政府の秘密エージェントが所狭しと徘徊するようになってしまう‥‥



ジャーニーマン (Journeyman)

放送局: NBC

プレミア放送日: 9/24/2007 (Mon) 22:00-23:00

製作: 20世紀FOX TV

製作総指揮: ケヴィン・フォールズ、アレックス・グレイヴス

出演: ケヴィン・マキッド (ダン・ヴァサー)、グレッチェン・イゴルフ (ケイティ・ヴァサー)、ムーン・ブラッドグッド (リヴィア・ビール)、リード・ダイアモンド (ジャック・ヴァサー)


物語: サンフランシスコの記者ダンは、ある時、時間を遡ってしまう。しかもいつ時間を遡り、いつもとの時間に戻ってこれるかはダン自身もわからないのだった‥‥



バイオニック・ウーマン (Bionic Woman)

放送局: NBC

プレミア放送日: 9/26/2007 (Wed) 21:00-22:00

製作: ユニヴァーサル・メディア・ステュディオス

製作総指揮: デイヴィッド・エイク、ジェイソン・スマイロヴィク、レイタ・カログリディス、マイケル・ディナー 出演: ミシェル・ライアン (ジェイミー・ソマーズ)、ミゲル・フェラー (ジョナス・ブレッドソー)、モーリー・プライス (ルース・トゥルーウェル)、クリス・バワーズ (ウィル・アンスロス)、ウィル・ユン・リー (ジェイ・キム)、ケイト・ヘイル (ベッカ)


物語: ジェイミーは交通事故に遭って瀕死の重傷を負う。彼女を生き長らえさせるには身体のほとんどすべてをサイボーグ化するしか手段が残っていなかった。目覚めたジェイミーは、自分の身体に起こった異変を知って驚愕する‥‥


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昨2006-07年シーズン、NBCが投入した新ドラマ番組で成功したのは、「ヒーローズ」一本のみだった。実は「ステュディオ60」、「フライデイ・ナイト・ライツ」、「キッドナップト」と、「ヒーローズ」より前評判が高かったドラマはほとんど壊滅、「フライデイ」のみなんとか今シーズンまで継続しているが、それでも成績の方はぱっとしない。これでは批評家受けのいい質の高い番組よりも、万人受けするSF番組を、とNBCが思ったのも無理はない。おかげで今シーズンのNBCは、「ライフ」というごく一般的な刑事ドラマもあるが、残りの新ドラマ番組はすべてSF番組、あるいはSFテイストが横溢している番組が占めることになった。それが「チャック」、「ジャーニーマン」、「バイオニック・ウーマン」の3本だ。


しかもこの3本、特に事前の批評家受けも悪いわけではなかった。コメディの要素も強い「チャック」、タイム・トラヴェルもの「ジャーニーマン」、クラシックSFのリメイク「バイオニック・ウーマン」と、3本とも確かにそれぞれ食指をそそる。「チャック」は、女の子にもてないコンピュータ・オタクの電気店販売員チャックが、ひょんなことから政府の機密文書を頭の中にダウンロードしてしまうという人を食った設定で始まる。


そういうことが可能かとか、あるいはそういうやつが政府スパイと接点があることの不可思議はさておき、これがなかなか楽しませる。一言で言えば「007」のパロディという感じなのだ。たとえ一夜にして冴えないオタク青年から身の回りを有象無象の政府スパイが暗躍する最重要人物となったといえども、チャック本人自体は何も変わらず、あいも変わらず電気店の販売員だ。それなのにいきなりそのチャックの周りを美人エージェントが何人も徘徊し、コワモテももちろんいる。本人の意向にかかわらず、時には身体を張ったアクションにも巻き込まれる。それでもチャックは友人知人親兄弟の命を守るためにも、自分に起こったことは口外できない。


特にプレミア・エピソードでは、チャックを政府の違う部署のエージェント同士がライヴァル意識丸出しで追うのだが、パブで女性エージェントのサラとダンスしているチャックに別のエージェントの手先が襲いかかる。それをサラが踊りながらナイフを投げたりして捌く手並みは、「Mr. & Mrs. スミス」のアンジェリーナ・ジョリーさながらで楽しませる。その後のカー・チェイスも、チャックの使う社用車が小型車ということもあって、「ボーン・アイデンティティ」「ミニミニ大作戦」を思い出させるできで、こちらも悪くない。TVにしては金もかなりかかっており、結構感心させる。


主人公チャックに扮するザカリー・レヴィは、「ダイ・ハード4.0」でジャスティン・ロングが演じたような役にかなり近く、ロングにもうちょっと肉がついた感じでこちらもいい味出している。ロングといいレヴィといい、普通なら内にこもってとっつきにくくなるはずのオタクというタイプにうまく親近感を持たせることに成功しており、この辺のキャスティングはうまい。因みに番組製作総指揮およびプレミアの演出はマックGで、最近では映画監督というよりTVのプロデューサーという印象の方が強い。


「ジャーニーマン」は、自分でも知らないうちに過去に遡ってしまうという特殊能力を持つ記者が主人公の番組だ。私が思うに、番組の面白さも欠点も、この、知らず知らずのうちに時間を遡ってしまうという設定に因っているという印象を受ける。ある時ふと気づくと、自分が知っている場所の過去に遡っていたという設定は、確かにそれなりに想像力を刺激するし、面白い。しかし、ではなぜ未来ということはないのだろうか。既に起こった時間や場所にしか飛べないというのは、なんとなくわからないではないが、それでも完全には納得しがたい。


さらに、過去に飛ぶとはいっても、特に大きな過去に飛ぶわけではない。それこそ今シーズン、江戸時代の日本に飛んだ「ヒーローズ」のヒロとは規模が違う。せいぜい数年から数十年のスパンでしか時間を遡れない。その理由もいつかは明らかにされるのかもしれないが、少なくとも今の時点では、何度か見ているうちに、なぜ、と思うようになる。一方そのため、いったん過去に遡った主人公が現代に戻ってきた時に、過去にあった事柄が現在どういう風に影響しているかということを自分の目で確かめられる。要するにやりたかったのはこれだろう。


それでも、時空間を自分でもコントロールできないまま移動するという設定で思い出すかつてのSFドラマ「タイムマシーンにお願い (Quantum Leap)」と比較すると、「ジャーニーマン」は、やはりやや弱いという印象を受ける。「タイムマシーン」では、時空間を飛ぶどころか別の人間になってしまうというさらに一ひねり加えた味付けがしてあり、その上、時空間案内人のような存在によってちょっとしたコメディ・タッチまで付加されていた。さらに毎回、話の最後には次の時代に飛んでしまい、次回はどうなるかという引きもなかなかうまかった。それに較べると、「ジャーニーマン」はちと弱いような気がするのだが、決して面白くないわけではない。


クラシックSFのリメイク「バイオニック・ウーマン」(「バイオニック・ジェミー」) の場合、その魅力のほとんどを主人公のジェイミー・ソマーズに扮するミシェル・ライアンに負っていると言っても過言ではあるまい。凛々しい目元、ぷっくらとした唇など、オリジナルのバイオニック・ウーマンを演じたリンジー・ワグナーとはまた違った魅力を発散している。カーラ・グギノを連想させる点も多いが、それよりも身体がもう半回りほど大きくアクティヴな印象があり、なるほど現代的バイオニック・ウーマンとしてはうってつけだと思わせる。こういう女性が普通の男性なら束になってかかっても適わないサイボーグとして生まれ変わるのだ。かなりそそるものがある。


ところで「バイオニック・ウーマン」は、オリジナルのタイトルは「ザ・バイオニック・ウーマン (The Bionic Woman)」だが、今回は定冠詞のtheのつかない「バイオニック・ウーマン」だ。実は番組に登場するバイオニック・ウーマンはジェイミー一人だけではなく、それ以前にも不完全なバイオニック・ウーマンがいて、ジェイミーとライヴァル関係のようなものになる。そのためかと思ったが、でも、だったら「ザ・バイオニック・ウーメン」となりそうな気もするが、ま、その辺の正確な意図は作った者たちでないとわからない。


ジェイミーはバーテンダーとして働いて家計を切り盛りしている上、歳の離れた多感なティーンエイジャーの妹ベッカもおり、その面倒も見なければならない。さらには自分の色恋沙汰ももちろんある。それなのに事故を起こしてサイボーグになってしまい、そのことを隠してボーイ・フレンドと接しながら、世の中の悪や敵を退治するのだ。むちゃ忙しい。因みに第3話以降からは、今春、問題を起こして「グレイズ・アナトミー」をクビになったアイゼア・ワシントンが、新しいレギュラーとしてエージェント役で出演している。番組クリエイターは、Sci-Fiチャンネルで、現在、アメリカで放送されているSF番組としては、コアのSFファンにとってはたぶん「ヒーローズ」より人気があるだろう「バトルスター・ギャラクティカ」を製作しているデイヴィッド・エイク。


以上、NBCは今秋、4本の新ドラマ番組のうち3本をSF系番組で占めるという冒険で挑戦してきたわけだが、現段階ではこの冒険は成功しているとは言い難い。特に事前の話題性では抜群と言えた「バイオニック・ウーマン」が、視聴率の上では最も苦戦している。ネットワーク番組としてはかなり暗い雰囲気をまとっていることが、多くの視聴者を獲得する上ではマイナスになっているのではと言われている。同様のペシミスティック思索型SFである「バトルスター」が、それ故にケーブルでは根強い人気があるのとは逆に作用しているというのだ。本当に番組編成は難しい。


実は私個人の意見では、上記3番組で最も面白く感じるのは「チャック」だが、しかし、NBC番組で本当に面白いと思って今シーズン結構見ているのは、この3番組ではなく、たった一つ編成されたSF番組ではない刑事ものの、「ライフ (Life)」だったりする。実際に今シーズン、NBC新番組でフル・シーズンの製作決定が発表されたのは、この「ライフ」と「チャック」だけで、めずらしくも私の嗜好と合致した。


とはいえ現在、アメリカTV/映画界は脚本家組合のストで新エピソードの製作は棚上げになっており、フル・シーズンの製作が決まろうがなんだろうが、10本程度製作されていたエピソードのうちの未放送分の新エピソードが放送されてしまうと、その時点でたぶん今シーズンは終わりだろう。そしていまだに番組継続の発表がない「ジャーニーマン」と「バイオニック・ウーマン」は、その時点で事実上番組はキャンセルになると思われる。惜しいとは思うが。






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