放送局: ショウタイム

プレミア放送日: 8/13/07 (Mon) 22:30-23:00

製作: アグレッシヴ・ミディオクラティ、トータリー・コマーシャル・フィルムズ

製作総指揮: トム・カピノス、デイヴィッド・ドゥカヴニー、スティーヴン・ホプキンス

共同製作総指揮: メラニー・グリーン

製作: アン・カインドバーグ

監督: スティーヴン・ホプキンス

脚本: トム・カピノス

撮影: ピーター・レヴィ

美術: ゲイブリエル・ウィルソン

編集: デイヴィッド・ブリクストン

音楽: タイラー・ベイツ

出演: デイヴィッド・ドゥカヴニー (ハンク・ムーディ)、ナターシャ・マッケルホーン (カレン)、マデリーン・マーティン (ベッカ)、マデリーン・ジーマ (ミア)、ダミアン・ヤング (ビル)、エヴァン・ハンドラー (チャーリー)


物語: 作家のハンクはデビュー作で金星を得て名声を勝ち得たものの、その後大したものを書いていなかった。別れた元ガール・フレンドのカレンにいまだに未練を持っているものの、カレンは現在つき合っているボーイ・フレンドと結婚するという。ハンクはほとんど自棄でひっかかってくる女性と手当たり次第にセックスするも、ベッドの上で殴られたり、裸の女性がベッドで待っているところに年頃になった娘のベッカが現れたりして、さらにカレンに愛想を尽かされる。おかげでベッカは学校で問題児になりつつあり、その上カレンが結婚する相手の娘が、ハンクが以前本屋で出会ってセックスして殴られた相手ということに気づくのだった‥‥


_______________________________________________________________


たぶんそういう話は聞いてないからこの後しばらくは目ぼしい番組はないと思うんだが、この1、2年のショウタイムの矢継ぎ早の新番組攻勢は結構すごかった。ペイTVとしてはここ20年くらい、いつもHBOの後塵を拝して万年2位、近年はスターズの登場によって3位に転落せんとしていたショウタイムが、現在では印象としてはHBOを抜き、ペイTVでは最も質の高いオリジナル番組を製作するようになっている。


今年に入ってからだけでも、「マッチ・ポイント」のジョナサン・リス・マイヤーズ主演の英国歴史絵巻「ザ・チューダーズ (The Tudors)」、素性を偽って暮らす一家を描いた「メドウランズ (Meadowlands)」(別ヴァージョンの「ザ・リッチズ」みたいだ) 等のドラマ番組に加え、「デビー・ダズ・ダラス・アゲイン」「ディス・アメリカン・ライフ」の硬軟とり混ぜたリアリティ/ドキュメンタリーを製作している。


これに従来の「ブラザーフッド」「デクスター」、「ウィーズ」を併せると、かなりポイント高い。「ザ・ソプラノズ」が終わってしまった今、明らかにHBOよりショウタイム番組の方が、質、量共に勝っていると言える。数年前に、ショウタイムがあと数年でHBOに匹敵するオリジナル番組を編成して首を並べるようになるよと言っても、鼻で笑われるのがオチだったろう。変われば変わるもんだ。


今回そのショウタイムがまたまた新しく投入した新番組が、この「カリフォルニケイション」だ。洋楽好きならタイトルを聞いたとたんに頭の中でレッド・ホット・チリ・ペッパーズの同名曲が鳴り響くと思うが、実は両者にはまったく関係はない。ないはずだったんだが、調べてみたら、TV「カリフォルニケイション」の後の方の話に登場する女の子に、アルバムの歌詞から名を借用しているらしい。要するにあれだけ売れたレッチリの「カリフォルニケイション」は既に一般名詞と化しているから、そこからタイトルを頂いたというのが本当のところのようだ。このことについて誰も文句も議論もしていないし、レッチリだって気にしてないんだろう。


以前FOXが「アレステッド・デヴェロップメント」を放送した時に、同名バンドがFOXを相手取って訴訟を起こしたことも記憶に新しいが (どんな結果になったんだろう)、ここまで売れた曲のタイトルがどこかで使用されても、確かにいちいち気にはしまい。自分の曲のタイトルを無断借用しているとしていちいち訴えたりなんかしていたら、ビートルズなんて世界中で訴訟だらけになってしまう。それに実際、「カリフォルニケイション」はカリフォルニア、というかLAを舞台にしている。そこでほとんど刹那的に生活している物書きの主人公とその家族、彼らを取り巻く人々を描く話であり、つまり「カリフォルニケイション」というタイトルは結構内容に合っている。別に目くじら立てることのほどでもあるまい。


主人公のハンクは小説家であるが、その実態はワン・タイム・ワンダー、いわゆる一発屋で、第一作がそれなりに話題になった後は、ほとんどその遺産で食っているようなものだった。ガール・フレンドのカレンはほとんどハンクに愛想を尽かしているのだが、それでも一応近くに住んでいるのは、二人の間にできた娘のベッカがいるからだ。ハンクのエージェントのチャーリーも、実は結構ハンクをもて余している。ハンクはハンクで、自分のリビドーを抑えること適わず、いつもとっかえひっかえ女の子をうちに連れ込んだり自分が出張ったりしては享楽的なセックスに耽っている。それが子育てにはよくない影響を与えるものだとは知っていても、自分でもどうにもならないのだ。


というハンクに扮するのが、久しぶりにTVで主演しているデイヴィッド・ドゥカヴニーだ。正直言ってドゥカヴニーは、「X-ファイルズ」以外では成功していないと思われる。実際私が「X-ファイルズ」以外でドゥカヴニーを目にした記憶があるのは、スティーヴン・ソダーバーグの「フル・フロンタル」くらいしかない。しかもそこでのドゥカヴニーの役は、やはりセックスのことしか考えていないハリウッドのプロデューサーかなんかで、マッサージをしに来た女の子に対して、金払うから下の方もマッサージしてくれと頼むいけ好かない野郎だった。なんか、本当にドゥカヴニーってこういうやつなのかしらん。


「カリフォルニケイション」はペイTVのショウタイムで放送されている番組であるからして、裸の描写は可だ。したがってハンクと女の子のセックス・シーンにおいてはちゃんと女の子のおっぱいも見せる。プレミア・エピソードだけでも30分の間にハンクは少なくとも3回違う女の子とセックスするし、そもそもの番組第1回のオープニングが夢オチで、教会に懺悔しに来たハンクに対し、尼僧が悩み事があるのですか、ではパンツを下ろしてくださいとフェラチオにかかるというもので、驚きと快感でハンクが目を覚ますと、昨夜連れ込んだ女性が寝起きに毛布の下でハンクにブロウ・ジョブを施していたという、教会関係者なら激昂ものの展開だ。


別にそういうセックス・シーンが随所に登場することに関しては特に異議はない。ゴージャスな女性の裸をめいっぱい見れるのは、LAでもあるしもしかしたらそのうちの何パーセントかのおっぱいは作り物である可能性を捨てきれないとはいえ、単純に喜ばしい。2番目にハンクとHする女の子なんて結構私の好みのタイプで、そういう子の裸を見れることに対してはなんら不満はない。それはいいのだが、実は近年、HBOを中心にしたペイTVにおける裸の描写は年々その刺激度が上がっている。「ソプラノズ」やその他のHBOのアダルト系リアリティ・ショウ、およびショウタイム自身の「デビー・ダズ・ダラス・アゲイン」等を見た後だと、そういうセックス・シーンだけでは、それは女の子の裸を見れるのは嬉しいが、だからといってそれ以上特になんの感興も抱かないというのが本当のところだ。


実際、これはまあ元々はTVではなく劇場公開用の映画のHシーンを集めた番組だから露出/刺激度が高いのは当然とはいえ、特にこないだのIFCの「インディ・セックス」を見た後では、単純に裸がいっぱい見れるからという理由で「カリフォルニケイション」をまた見ようという気にはほとんどならないのだった。その上、さらに先日、HBOの「テル・ミー・ユー・ラヴ・ミー (Tell Me You Love Me)」を見てしまった。これは近年露出度が上がっているペイTV界においてすらもさらにもう一段階上に進んだ番組で、基本的にある3組のカップルの性生活を描くというものだが、はっきり言ってもろに描写する。ちゃんと勃起したペニスが画面に現れるのだ。こんなのたとえペイTVとはいえ、まだ宵の口の9時台に放送してしまっていいのだろうか。近年、一方のネットワークではFCCによる裸の描写の締め付けは以前より厳しくなっているくらいなのだが。


なんて思いながら見ていたら、いきなり登場人物の一人の女性が、男のパンツからイチモツをとり出してしごきだした。すげえな、さすがにTVではこれまで勃起したちんちんをもろ出しにして手こきするなんてシーンは見た記憶はない。これはHBO、さすがにやるなと思っていたところ、男の方が段々高まってきて、びゅびゅっと射精してイってしまった。これにはエロいとかなんとかいうよりも本気で驚いた。女性が男性に手こきして射精する瞬間まではっきりと見せるのだ。これは‥‥これではドラマというよりポルノといわないか? こんなの、いくらペイTVのHBOといえども、ほんとに放送してしまってもいいのか? いや、驚いた。次はフェラチオ・シーンの直接描写か顔射かそれとも挿入シーンのアップか、もうこうなったらなんでもいい、どこまでできるか見せてくれという感じだ。


要するにほとんど同時期にこういう番組が放送されているため、「カリフォルニケイション」の裸くらいでは、こちらは、うん、いいプロポーションしているな、くらいは思っても、エロいかと訊かれれば、その点ではほとんど感じないと答えるしかない。いくら裸とはいってもいきなりセックス・シーンというだけで興奮できるのは、ヴァージンのティーンエイジャーくらいのものだろう。それだっておっぱいはかなりよく見せるが下の方もはっきり見せるというわけではなく、ドゥカヴニーのおちんちんだって見せるわけではない。「テル・ミー・ユー・ラヴ・ミー」や、ちんちん丸出しでナイフを持った男相手に格闘してみせた「イースタン・プロミスィズ (Eastern Promises)」のヴィゴ・モーテンセンと比較すると、「カリフォルニケイション」は既に露出度という点では何年も遅れているという印象しか持てない。ただ女の子のおっぱいを見せるだけという点でも、同じショウタイムの「デビー・ダズ・ダラス・アゲイン」の方がいっそ大らかによく見せてくれるので楽しい。


つまり「カリフォルニケイション」は、今の時代では女性の裸がいっぱい出るからというだけではほとんど視聴者の関心は買えないと思う。もちろん番組のポイントはそこだけにあるわけではないが、しかし、ドラマとして見ると、今度もそれもまた大したことはないと言うしかない。要するに単に下半身が自堕落なだけの男ハンクの享楽的な生活を描いているわけだが、だったらそれに徹していればいいものを、ハンクは口だけは立つから他人に対しては皮肉や文句を言うのを抑え切れず、そういう態度は改めないのに元ガール・フレンドが他の男と結婚するのは耐えられない。なんだ、それ。ただのわがまま男でしかないではないか。まったく共感できないし、だからといって逆に強く反感を買うほどの負のキャラクターでもないし、あまりにもだらしがないので同情や哀れを誘ったりするというタイプでもない。こんな男に感情移入する視聴者が本当にいるとでも思っているのだろうか。ヘンにそういう役がドゥカヴニーに合っているだけになおさらだ。共演のナターシャ・マッケルホーンは貧乏くじを引いたと言うしかない。


ここんところ質の高い番組を連発して視聴者を楽しませてきたショウタイムであるが、ここへ来てやっと躓いたという感じだ。一応話題性だけはあったから番組は次のシーズンまでは製作されることは確定しているが、それ以上続くことはないだろう。因みに「カリフォルニケイション」とほとんど同時期に新シーズンが始まった「ウイーズ (Weeds)」では、オルソン姉妹の一人であるメアリ-ケイト・オルセンがしばらくぶりにブラウン管に戻ってきて話題を提供しており、その点ではいまだに話題性の高い番組作りをしていると言える。ではあるが、少なくとも「カリフォルニケイション」に関しては、私は面白いとも思えないし応援する気にもなれない。やはりこれまた新シーズンの始まった「デクスター」の方に圧倒的に惹かれる。まあ、どんなバッターだって打率10割ってのはあり得ないわけだし、また次のショウタイムの新番組に期待することにしよう。



追記 (2007年11月)

これだけ有名になるとほとんど普通名詞みたいなもんだから、レッチリも自分たちの歌を勝手に利用したと番組を訴えるような真似はしないんだなと思っていたら、なぜだか今頃になって訴訟を起こした。もしかしたら番組がマイナーだからこれまで気がつかなかっただけだとか。いずれにしてもこれで番組プロデューサーがこのタイトルを無断で借用していたことだけは明らかになった。大丈夫だと思ったんだろうなあ。 






< previous                                    HOME

 

Californication


カリフォルニケイション   ★★

 
inserted by FC2 system